パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

BS1『BSドキュメンタリー』「戦場の目撃者〜イラク戦争・カメラマンの記録」

2004/4/24放送、50分、映像提供、ジェームス・ナクトウェイ/クリストファー・モリス/ゲイリー・ナイト/クリストファー・アンダーソン/フィルムス・トランジット、取材:小林亜希子、構成:酒井裕、制作統括:三雲節/仁平雅夫、共同制作:NHKエデュケーショナル、制作・著作:NHK/エス・ヴィジョン
NHKは以前にもナクトウェイ氏関連のドキュメンタリーを何本か制作しており、お互いに信頼感があるのか関係が続いているらしい。折角の機会だから、当時の感想を(表現を訂正しつつ)再掲する。ところで、以前は「ジェームズ」表記だったはずだが、今回は何故か「ジェームス」表記。

2001/12/22 Sat
BS1『ウィークエンドスペシャル』「9・11テロを撮ったカメラマン〜衝撃の体験と迫真の写真」
ニューヨークには戦場カメラマンが沢山居を構えており、テロの日は皆がカメラを持って現場に駆けつけたから、水準の高い報道写真が出回ったという話(本旨は違うけど)。「今まではどんなに戦場で危険な目に遭っても、帰れば安らげる場所があったけど、もう今はどこにも安心出来る場所なんてないんだ」などと、アメリカ以外の人間ならば誰もが以前から感じていた今さらな事を、世界を見て回った優秀な報道カメラマンが真顔で言う。そのギャップが一番怖い。
http://fayefaye-web.hp.infoseek.co.jp/nikki.0112.3html
2002/4/27 Sat
BS1『ウィークエンドスペシャル』「テロを撮ったカメラマン〜NYからアフガニスタン
構成:酒井裕、制作統括:仁平雅夫/古川潤
NY在住のカメラマンジェームズ・ナクトウェイがテロ当日に撮影し、その後新聞や雑誌に掲載されたらしい(メジャーな)カットを、時系列に沿って本人が解説してくれる。後半の「怒りのアフガン」編は説教っぽくてあまり面白くない。本人が何気ないフィルムに「彼の怯えが表現されている」とか「戸惑いが写し出されている」とか説明しているのを聞くと、一瞬を切り取る写真というのは、芸術として美しいけど、情報としては明らかに詐欺で、報道写真というのは究極の詐欺だという気はする。
http://fayefaye-web.hp.infoseek.co.jp/nikki.0204.3html

今回の感想もそう違わない。番組内で彼らカメラマンが言った言葉を抜き出すと、例えば「〜を象徴する」「〜を暗示する」「精神的な〜を感じる」など。コーヒーカップの底に残った滓で占いをするのと何ら変わらない。もちろん彼らが最高の技術と勇気と運を兼ね備えた詐欺師の頂点に立つ存在である事は認めるが、まあ詐欺師というか山師。それにしても「これは詐欺だから、これは洗脳だから」と自分に言い聞かせながら見ても、やはり美しい写真には惹き付けられる魅力がある。芸術とは恐ろしい力を持つ。報道写真1枚で、世論も戦局も一変させる事だって出来るだろう。にもかかわらず、取材で命を張る厳しさは見えても、自分の写真の持つ他者への影響力に関する部分では本人の意識も制作者の姿勢も緩く感じた。制作者には「9・11の時、あなた方が撮りまくった写真が、結果的に単純なアメリカ人の復讐心に火を付けたかもしれないのに、今後はイラクの一般市民を被写体にアメリカ人に何を訴えかけるつもりですか。それは究極のマッチポンプでは? それとも『自分たちは事実を報道するだけで、後は見た人の解釈に委ねる』というのですか?」くらいは質問して欲しかった。