パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『ハイビジョン特集』「戦場の目撃者〜9・11からイラク戦争へ〜カメラマンの記録」

2004/9/6放送、90分、映像提供:ジェームス・ナクトウェイ/アントニン・クラトクビル/クリストファー・モリス/ゲーリー・ナイト/ロン・ハビブ/アレクサンドラ・ブーラ/クリストファー・アンダーソン/クリスチャン・フライ/ロイターズ、取材:小林亜希子、構成:酒井裕、制作統括:三雲節/山本修平、共同制作:NHKエデュケーショナル、制作・著作:NHK/エス・ヴィジョン
戦場を主とした報道写真を仕事にするグループ「7」(セブン)の話。
NHKサイトの説明文には

2004年4月に放送した「戦場の目撃者〜イラク戦争カメラマンの記録〜」に最新のイラク情勢を加えて再構成。

とあるが、実際の放送で追加された「最新のイラク情勢」部分は6月に行われた権限移譲の資料映像が1分くらいのみ。
では何が追加されたのか。前回(d.hatena.ne.jp/palop/20040511#p1参照)放送したナクトウェイ/モリス/ナイト/アンダーソンへのインタビュー部分は流用。これにハビブ/ブーラ/クラトクビルへのインタビュー部分が今回初出。ボスニア紛争を記録した元旅行写真家ブーラのパートは今年7月(クロアチアにて)だから追加取材決定として、残り2人のパートは前回(50分バージョン)時までに取材出来ていたものの時間の制約上カットされたのか、4月以降に接触出来たのかは不明。ともあれこれで7人全員からインタビューをとれたようにみえる。
しかしセブン関係のサイトをみる限り、実はJohn Stanmeyerという人が正式メンバーで、アンダーソンはセブンのメンバーではないようだ。というか「9・11を機にセブンが結成された」というNHKの説明自体が微妙。その前に写真家集団セブンは結成されたようだ。Stanmeyerは香港を拠点にインドネシアなどアジア全般を守備範囲にしており、今回イラクには行っていないようだ。この辺り全部〈…ようだ〉なのは英語に自信がないからで申し訳ない。これらの材料から妄想するに、セブンの中心人物ナクトウェイがStanmeyerに「お前もセブンの一員としてイラクへ行こうぜ」と声を掛けたが、Stanmeyerは「俺はインドネシアでテロとか暴動とか撮っている方が良い」と断り、ナクトウェイが駆け出しの写真家アンダーソンに「才能ある若造よ、俺たちの仲間になって戦争取材を経験してみないか?」と声を掛け、ナクトウェイとNHKが「説明するの面倒だから、アンダーソンをセブンの一員にしちゃおうよ」という感じ。重箱の隅を突く事になるが、Stanmeyerに「何故あなたはイラクへ取材へ行かないのか?」を尋ねるともう一段深みが出たのでは。
もう一つ重箱。亡命チェコ人クラトクビル(Antonin Kratochvil)の写真集『BROKEN DREAM』に関する説明スクリプト「冷戦の終結後、90年代の東欧を記録したアントニンの写真集」という説明はウソ。実際には1976年からの20年間を記録した写真集(photoarts.com/journal/SABA/kratochvil/index.htmlでダイジェストを観る事が出来る)。何しろサブタイトルが「20 Years of War in Eastern Europe」で、発行年が1997年だ。ただテレビ画面に登場した写真は上記サイトで照合出来る限り90年代の写真なので許される範囲の演出だろう。