パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

2002-03シーズン前半総括

※最初に考えていた総括とは全然違う方向のオチになってしまったが、書き始めがチャンピオンズリーグ前半戦が終了した12月15日あたりで、書き終えたのが大晦日なので、お許しを。
(1)ビッグクラブの安定
予備予選で負けるビッグクラブがなくなった。「イタリアの復権」とも絡むことだが、イタリアのクラブはシーズン前には戦術練習よりも、体に負荷をかけて一年を乗り切る体力作りを行うらしい。当然リーグ戦が始まる前に開始される予備戦は、数シーズン同じ顔触れで戦ってきている小国の優勝クラブが有利に決まっている。漸くそれに気が付いたビッグクラブの経営陣が、チーム作りを体力重視から戦術重視(というよりは、個人能力を最大限活かす方向なのか?)に切り替えたこと、たまたま今年のオフは不況のためか選手の移動が少なかったことが良い方向に出たと思われる。ミランなどは、かなりの選手入れ替えを行ったのに、スタートダッシュに成功した。個人の能力頼みだといえば、そうかもしれないが、数年前までは、馬鹿インテルなど能力高い選手を並べただけでは勝てない事を実証し続けてくれていたのに、インテルにしてもミランにしても、最初から戦術というかコンセプトをしっかりと持った人間を監督にするだけで、予備戦をクリア出来るようになった。その結果、シーズン後半の体力はどうなんや? という疑問も発生するが、それは後述。
元々チャンピオンズリーグがチャンピオン以外にも拡大されたのは、ビッグクラブのスーパーリーグ構想を止めるためにUEFA側が折れたためで、にもかかわらずビッグクラブが上まで残れないのであれば、何の意味もない。もちろん、各国のリーグ・チャンピオン以外が参加していること自体、笑止千万なのだが、ここに来て漸くビッグクラブがこの方式にも慣れ、こぼれ落ちる事もなく残り、低視聴率の原因になっていた地味クラブが駆逐されたお陰で、少しは視聴率も上向くかもしれないのに、また来年からレギュレーションが変わるとは、全く間抜けな話である。また新しいレギュレーションに慣れなくてはならないのだろうか。
ヨハンソンは2次リーグ廃止について「試合数が多すぎて選手のコンディションが整わないから」ともっともらしい理由をあげているが、実際トップレベルの選手に週2試合は多過ぎるとは思わない。個々の監督を一般論でまとめることは出来ないが、向こうの練習は、約90分から長くても120分、戦術的な確認をするだけ、その間週末の試合並みに全力を尽くせ、自主トレ禁止が多かったりする。もし本当にそうならば、週半ばに90分の試合が入っても、日頃以上に消耗する事はないはず。消耗するとしたら、絶え間ない勝負へのプレッシャーなど精神面だろう。だからビッグクラブは週1回のターンオーバーにするよりも、遜色ないレベルの選手を30人前後抱え、レギュラー陣にはシーズン中4週間〜6週間くらいの短期休暇をローテーションで与える方が意味があると思う。以前ファーガソンベッカムに怪我ないのに、リフレッシュ休暇を与えたように。休暇の3週目くらいから、練習場には来て、じっくりコンディションを上げるトレーニングを行う。もちろん、アウェイの遠征に行く必要もない。
(2)イタリアの復権
90年代後半からイタリアのクラブが凋落したのは、2つのルール改正のせいだと思っている。1つはオフサイド判定の改訂、もう1つは一発レッドの判定基準。90年代後半のチャンピオンズリーグ、1次リーグのような序盤戦で、ユヴェントスのような強豪が90分過ぎのロスタイムに入って失点するケースが頻発した。以前ならば、守りに入ったようでライン上げまくり、オフサイドを狙うことも出来たが、ルール改正で残っているフォワード死んだ振り、2列目から飛び出してきた選手を後ろから引っ張ったら一発レッドになるので掴まえ切れない、では、ロングボール放り込みすら立派な作戦になる。「イタリアは守備的」と言うけれど、以前の論理的なルールならば、論理的な守備戦術が有利で偶然頼みの放り込みガ不利、という理に適った常識が成り立っていた。「戦術に凝り固まったイタリアより個人技を活かしたスペイン」という潮流も娯楽として理解出来るが、レフェリーの解釈次第の部分さえある不合理な戦術が有利になるようなルールは、個人的に即刻無くしてもらいたいと思っている。
このルールに馴染むのに時間がかかったとはいえ、漸くコツを掴んだのだろう。その対応策が、ディフェンスを以前より深く、中盤の壊し屋を増やして最終ラインの負担を減らすなど、どう考えてもより守備的な方向へ進んだのは皮肉か。また、ラツィオネスタパルマカンナヴァロテュラムなど代表など国際経験のある選手が今回、チャンピオンズリーグに出場するクラブへ移籍したのも、好調の要因にあげてもよいだろう。
(蛇足)投資に向かないスポーツ
プロスポーツに投資するためには「金を遣う→強くなる→勝つ→儲かる」の3段階がはっきり出るものが良いはず。つまり、大金を出して良い選手をかき集めれば必ず強くなる。強いチームは必ず勝つ。勝つチームは儲かる。ところがサッカーは、どれにも当てはまらない。良い選手を集めると、強いチームが出来るわけではない(バルサとかインテルとかバルサとか)。強いチームが勝つかといえば、そうでもない(点数の入りにくい競技の宿命だ)。勝てば儲かるかといえば、そうでもない(リーグ優勝に賞金が出るのって、日本くらいなのか。あっても主な収入が入場料やグッズ、放映権料など「人気」に絡む、興行であるのは否定出来ない)。
本来サッカーは投資に向かないスポーツである。だから、サッカークラブのオーナーは道楽者の金持ちだったりした。しかし、巨額の金が絡む昨今では、嫌でもビジネスを専門とする人々が集まる。それによってチャンピオンズリーグの形も、より投資が確実に回収できるよう曲げられてきた。そしてどうやら、今のチャンピオンズリーグは投資の分だけ試合が出来るような体制が固まりつつある。今年コケたのはバイエルンくらいだろうか。選手の獲得の仕方も賢くなったし、世界カレンダーも出揃い、代表チームがクラブに無理をいうケースも減少しているようだ。
今後、投機的なクラブ経営が手を引き、やや昔風に戻るのか、より確実に投資を回収出来るシステムが進化するのか(良い選手を安価で獲得出来るように契約解除も簡単に、より点数が入り点差が付きやすい=実力が反映されやすく、勝利給の上昇など)、ビジネス・サッカーとは縁を切るほとんど全てのクラブと、確実な投資対象となる数十のビッグクラブが共生するのか、もう数年は様子を見守らなければならないだろう。