パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『BS世界のドキュメンタリー』「世界貿易センタービル跡地〜復興計画の舞台裏(SACRED GROUND)」

2005/1/26放送、50分、プロデューサー:ニック・ローセン、構成:ケビン・シム、制作:WGBH(2004年アメリカ)
テロで崩壊した世界貿易センターの跡地(グラウンド・ゼロ)を巡り、土地を所有しているニューヨーク州の公社がコンペで選んだ芸術系建築家ダニエル・リベスキンドと、テロの数カ月前に大金払って地上権を買った民間開発業者ラリー・シルバースタインに雇用された大手建築事務所所属建築家デビッド・チャイルズの綱引きを描く。
公式サイト(http://www.pbs.org/wgbh/pages/frontline/shows/sacred/)には、約12分間のダイジェストと全編の書き起こし(スクリプト)、番組の狂言回しである建築評論家ポール・ゴールドバーガーへのインタビュー(2004年8月3日付)の書き起こしなどがある。
2003年初頭のコンペでリベスキンド氏が優勝した場面等はどこかのニュース資料映像で、「揉めているらしい」という噂も上がり始めていたであろう同年夏頃から12月の妥協による一件落着までがスタッフによる密着取材だと思われる。2004年7月に工事が着工し、本国での放送日が同年9月7日だから、テロ3周年直前特番みたいな扱いだろう。
番組内では、リベスキンド氏とチャイルズ氏の両方に等しく言い分を聞き、どちらかに焦点を当てた描き方はしていない(まあこの辺は推測になる)のだが、NHKサイトの番組紹介では、

リベスキント氏と不動産会社が選んだ建築家との激しい対立の中で進められた計画立案の舞台裏を描く。

リベスキンド氏中心の書き方で、相手のチャイルズ氏は雑魚扱いである。NHK-BS1の中の人は「犠牲者に捧ぐ」みたいなメッセージ性の強い建築家が好きなんだろうけど、ちゃんと対等に扱ってやれ。ついでにいうと、番組内のテロップは「リベスキンド」で、NHKサイトでは「リベスキント」なのもどうにかしろ。

余談だが、今NHKで一番左っぽいのは『ETV特集』よりもこの枠だと思う。というか社会派ドキュメンタリー自体が必然的に社会や権力に対して批判的な視点を含んでいるものだ。しかも海外で買ってきた例えば90分近い作品を「50分枠という時間制限があるから」ということで、バッサバッサと切り刻んで加工している。どんな切り取り方をしているか分からないし、どんな字幕を付けているかも分かったものではないが、この枠が全然叩かれないのは、まあ見ている人が少ないのだろう。海外の話題を扱っても所詮他人事というのもあるし。
そもそもドキュメンタリーというのは報道・ニュースや情報番組と違って制作者の視点・切り口が試される作家性の強いもののはず。つまりはドキュメンタリーそのものが放送法にあるらしい「中立性がなんたら」に違反する存在だと思うのだが、誰もそんなことは言わない。