パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

日テレ系「日本五輪代表対ガーナ五輪代表」

8/18放送
まずは、広島サポとして駒野の怪我が軽傷である事を祈る。生放送を見ていた人は心臓が止まる思いだった事だろう(追記:鎖骨骨折だった)。
NHK-BS1を録画予約したものの不安だったので起きて開始をチェックしたら、やはりというか放送が始まらなかったので、日テレ系に切り替え。見逃した前振りは今夕に録画したBS日テレアンパンマンくらぶ』の時間帯に丁度再放送をやっていたので捕獲に成功。
スタメンをみてWC98のジャマイカ戦を思い出した。「もう終戦しているのだから、黒河でも出せば良いのに」と思うのだが、逆に未勝利だからこそ、プロフェッショナルな人は「このままでは帰れない」とベストメンバーで勝負したくなるものなのだろうか。ただ立場という意味でいえば、ジャマイカ戦というより、ユーロ04で本気のギリシア相手にノビノビと戦った終戦決定組ロシアという感じか。
そうした意味も含めて相手が必死の本気試合だろうが、こちらがノビノビ出来る設定である以上、「今日のメンバーを初戦で使えば良かったのに」なんて議論は成り立たない。敗戦の原因は、出場したメンバーの是非よりもゲームへの入り方に失敗したのが全て。今日の開始5分経たない時に、石川が相手の選手を後ろから引き倒す場面があった。仮に初戦で石川が先発し、あれをやってFKから失点していれば、やはり戦犯としてやり玉に上がっていただろう。才能豊かだが、たまにポカをやる菊地も然り。石川に関しては徳永(駒野)と縦の関係の4バック(或いは3トップの右―ハラヒロミ風に言えば4-2-3-1の右)でやれば生きるだろうけど、3バックのアウトサイドをやるには守備の危険が大きすぎる。恐らく初戦、2戦目のゲームプランはきっちり守備から入って前半は0対0でOK。相手が「黄色い猿のくせが生意気な抵抗しやがって」と焦って前がかってきたところに、石川と田中達也を投入して「こんな秘密兵器があったのか!」と更にビックリ、という感じだったのだろう。まあ「中途半端に器用貧乏な選手ばかり厚遇せず、特徴的な才能のある選手を活かせる布陣を組めよ」とか「ゲームへの入り方なんかを心理マネージメントするのも監督の仕事だろ」という批判はもっともだと思う。
ただ今回のチームのやり方は山本方式というよりは協会の共通見解でもあったと推測される。WC02の傾向から導き出された強化の方向とは「最終ラインを高く上げ過ぎず、縦にコンパクトもほどほどに、だが最終ラインと中盤の間(バイタルエリア)はしっかりと埋め、ボールを奪ったら才能あるフォワードへ縦に急ぐ。しかし日本からアンリやロナウドが表れる可能性は低いので、その分、3〜4人のユニットで相手ゴール前までワンタッチで運べるよう日本人らしく連携を訓練しよう」という感じだと、私は理解している。今日の試合の阿部のロングフィードや菊地のナイスアシストをみると、DFの真ん中に青木を置いたりしてやりたかった事の片鱗が窺えた。オランダ代表2003のように対人担当=スタム、ロングフィード担当=フランク・デブールとしてしまうと、チェコ代表のブルックナーが仕掛けた「デブールにコラーをマークさせ、スタムがボールを持つように仕向けたのだよ」作戦に遇う危険もある。あるので、当初はDF全員にユーティリティくさいキックの正確な人材を揃えたかったのだろうが、段々とうやむやになった。
オーバーエージ枠を含め、最終予選通過後の上積みに失敗したと言われる今回だが、むしろ今年1月に新しくチームを作り直した事の影響もあると思う。山本監督の信念(?)が揺らいだのは、恐らく03年の秋口。内容で韓国に圧倒された試合から教え子達の能力に疑問を抱き、チームにも閉塞感が漂っていた記憶がある。その結果ワールドユース後、平山&トゥーリオという即効性のあるヤクに頼る事になった。この2人プラス今野さんが最終予選通過の立役者となったのは紛れもない事実だが、昨秋のチームから敢えて2人を足さず(当然ながら今野さんは必要だ)、我慢して既存メンバーの連携を高める方向で最終予選を勝ち抜いていたら「2年の積み重ね」もウソっぽく聞こえなかったのだが。結局最後は、高松/伸二/今野さん/トゥーリオ/ソガハタと、1年前の1次予選にいなかった選手がセンターラインをやっているのだから、これはもう別のチーム。ただ「監督が選手を信頼しなかった」のか「選手が監督の期待する伸びを示さなかった」のかは主観の問題。
「スピードやスキルで突破する右サイドに比べて…」と言われ続けた左サイドだが、広島サポとして一言いうならば、今年春先に達也を2トップの左気味に固定し、浩司の前のスペースは敢えてがら空きにし、浩司にボールが収まると達也が左のスペースに流れて結構チャンスを作り出していた。那須があがって浩司が埋めたり、浩司が絞って今野さんが埋めたり、或いは松井が寄って絡んだりと、左サイドには個人能力では計れぬコンビネーションも存在していたと思う。「右は体力バカの槍一本、左はコンビネーションで」というのは、相馬/柳本の頃からの伝統。もちろん浩司/駒野に森崎兄さんも含め、もっと積極的なプレーを心掛けて欲しいという思いはある。
阿部は中盤にいる時は埋没してしまうが、最終ラインにいる方が輝く気がする。たまに目測を誤ってかぶったりするが、背丈もあるし、FKという一芸がある。性格的にも他人を引っ張ったり自己主張が必要なポジションよりも、ミスをしない事が優先されるポジションの方が向いているのではないか。ミハイロビッチも中盤や左SBとしてはそこそこだったが、とりあえずハイボールをはね返す高さと必殺FKだけで、ディフェンスにおける多少のミスは目をつむってもらえる存在にまでなった。阿部もCBで「右のミハイロビッチ」を目指そう。
イタリア戦を見逃したのだが、試合後、高松は号泣したらしい。それが「折角抜擢してもらったのに結果を出せなくて申し訳ない」なのか「アホ監督のいう事を聞いたお陰で自分の持ち味が発揮出来なくて不完全燃焼だ」なのか。大会前の強化試合の中で、集音マイクが拾う山本監督の声は「たかまつー」が多かった。前線からのチェックに不満があるのか、左右に流れる動きに不満があるのか、よく怒られていた。高松にしてみれば「そんなプレーを要求するなら、もっと得意な奴がいるだろ。オレを起用するなよ、バカ」だったのか「監督の要求を理解して、絶対アテネへ行くぞ」だったのか。とにかく第3戦は「ベンチが何を言おうが、自分の得意なエリアで勝負してやる!」(得意ではないポストでも頑張って体張っていたけど)という吹っ切れた様子にみえた。本音が聞けるとは思わないけど、一番帰国後のロングインタビューが読みたい選手だ。
今回の五輪代表は「フル代表に上がる事が出来る人材なんかいない」或いは「海外へ移籍出来る人材なんかいない」といわれることも多いが、それが本当かどうかは別として(大久保なんかは普通に上がるだろ)、個人的にはそう悪い事だとは思っていない。U17の時Jリーグに出場した事がある奴はまずいない。U20だと出場数に幅はあれど、まず全員がプロとしてプレーした事がある。U23というのは、レギュラーを確保してから主力になる過程でやや伸び悩んでいる時期と重なる(広島や市原なら完全な主力だし、磐田や名古屋だとそれは難しい)。これがもう2〜3年もすれば、全員がクラブで主力として仕切っているはず。というかそうでないと困る。山本監督は60数人を招集したという話だが、J2組を差し引いても各クラブに3〜4人は「五輪代表」の肩書きを背負った事がある計算になる。対戦する各クラブで、名前やプレースタイルに馴染みがあり、主力としての実力もある選手が揃っているJリーグがあるというのは、「フル代表」や「海外組」になる事と同じくらい幸せな光景だと思う。なので「苦しいクラブ事情のなか無理して貸し出したのに、テストバカ、競争バカのクソ監督の元で浪費した」とかそんな事は言わないでおきたい。