パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

サンフレッチェ対ヴィッセル神戸

2002/11/9
前回「広島のデッレアルピ」ビッグアーチに来たのは2000年11月(註:山の中にあり、底冷えがし、観客が固まっている部分とガラガラの箇所があり、イマイチ盛り上がり・一体感のないところが似ている)。今回も凍え死ぬかと思った。入場口の並び前後にいる親子のチケットをこっそり見ると「招待券」と印字してあるので、多分客水増しのためガキンチョを大量に招集したと思われ。メインスタンドの空きは悲しいばかりだが、バックスタンド及びゴール裏はそこそこ密集していた。
毎週、ホームに駆けつけて熱心に応援している人にはサポーターとして頭が下がる思いであるし、能動的に盛り上がる事が得意でない1万人がじっと黙って寒空のした試合を見ているのが、どんな淀んだ空気を作り出すかも、何となくは理解出来る。「数年に一度来る奴に何が分かる」と言われればその通りだが、一応書いておく。ゴール裏でずっと歌い続けている集団の方々は「自分たちの声出しがスタジアム中に伝染する事」を目指しているのだと思われるが、恐らくは逆効果でしかない。スタンドで見ている一般人は、彼らを「寒い集団」としか見ないと思う。冷めた腰掛け連中がスタジアムを包むなか、温度を上げようと思ったら、幾ばくかの先導者が必要な事は分かる。しかし、ボールを中盤でチンタラ廻している時も、ゴールに向かって攻めのスピードが上がっている時も、同じようなペースで歌われても、正直困る。むしろ「ここは中東のサッカー場かよ。単調なメロディ繰り返しやがって、眠くなったわ!」とちょっと不快だった。普通、味方のチャンスだったら、腰が浮いて歌っているどころではないと思う(彼はずっと立ちっぱなしだから分からないのかも)。本気で応援している立派な彼らがやるべき事は、単調な歌をのべつまくなし歌って一般人との乖離を広げる事ではなく、良いプレーの時は拍手を送り、緊張の場面では息を飲み、まずいプレーには(ブーイングよりも)ため息をつく、そんな当たり前の反応をするタイミングをスタジアム全体に広げられるよう、先導する事ではないかと思う。長く見ている人だけが、先週出来なかったキックが出来るようになったと気付く事が出来るわけだから、どこを見て良いか分からない初心者に、どれが良いプレーでどれが悪いプレーかを気付かせてあげる事がスタジアムの雰囲気を盛り上げるのに一番だと思うのだが。「ビロング、真面目にやれよ!」とか「フリーキックは駒野に蹴らせよ!」とか、そういう野次を飛ばそうかとマジで思った。1人が言っても聞こえないだろうが、スタンドで口々に言えば、ニュアンスというか意図はスタジアムを包むような気がする。どうも、これまでのビッグアーチの応援の伝統・文脈を無視するのはまずいだろうから、実際にはしなかったが(自分の中では正しくても空気が読めない事そのものがマナー違反になるから)。
試合の中身は、開始1分で駒野のラッキーパンチが入った。前半終了間際にビロングがしょーもないファールをしてPK(スタンドはジャッジにブーイングをしていたが、あれは庇いきれないだろう)。後はどっちもどっち。
素人目に試合内容を分析すれば、広島は服部/駒野というサイドの飛び道具を持っているのに、しかも4バックの左右ではなく3バックの前でウィングバックのようにプレーしているのに、二人がクロスを上げる事はほとんどなかった。藤本や大木がサイドに流れてクロスを上げてどうするんだ? 戦術のコンセプトからして問題があったと思われ。
ビロングがどうにもならないのは5月頃には分かっていた事(エジムンドとの対決は夢の中の出来事だったのか「ビロング本気!ビロング本気」だったのに)。ビロングを諦めて起用したいと思わせる若いセンターバックが出てこなかった方が多分問題だろう。勇気のある監督ならば、さっさとビロングを切って、ユースからでも17歳くらいの選手に伸びるチャンスを与えたと思う。急場しのぎに獲得した井手口が使えなかったのも痛かったのだろうが。
象徴的な場面を2つ。PKで同点になった時、藤本だけが両手で皆を煽りながら、何か叫んでいた。おそらくは「お前ら、下を向くな。これからだろ」的な事だと思う。しかし他の選手はうなだれてセンターサークルまで向かう。反応しない味方を見て藤本も諦めたように声を出すのを止める。藤本は試合を見ていても、本当に最後まで懸命にボールを追って100%ファイトする良い選手に思える。にもかかわらず、前半途中で交代させられたり、問題児のように扱われている。彼には監督からも同僚からも信頼されない何かが外部の人間には分からない部分であるのだろうか。こういう時こそ空気を変える役割を上村や森崎兄さんがするべきだが、それもない。
その2。同点で後半40分頃、相手ゴール前の良い位置でフリーキックを獲得。何が何でも点を獲りにいく場面のはずだが、センターサークル付近にビロング/上村というヘディング要員が残っている。通常のフリーキック時は、相手のフォワード(オゼアス/播戸)をマークする役割はビロング/八田でカバーリングに森崎兄さんも残るという感じだったが、この時兄さんがフリーキックに上がり、最終ラインはオゼアス/播戸にビロング/八田、カバーリングに上村、ベンチから木村監督が飛び出して何やら指示をしているが、うまく伝わらない。上村は両手を広げ「お手上げ」のポーズをし、漸く(おそらく勝手に)ゴール前に上がって行く。ビロングはオゼアス、八田は播戸とマークする相手を決めたのも、お互いで話し合ってだった。残り5分で点を獲るしか無い場面のセットプレーだってのに、何のオプションも練習していないのか。降格の危機が迫っているのに、約束事くらい決めとけよ! パワープレイしろよ!
「ユーティリティ」が「何でも出来る」と受け取られているような気がしないでもないが、森崎ツインズには「どちらもディフェンス出来、基点となり、ラストパサーで、ミドル打てる選手が二人並ぶ状態」にはならないようにした方が良いと思う。少なくとも一試合の中では。コク、エンリケ、メンディ、ロチェンバックなんかが並んでいるバルサの中盤を見て思った事だが、何でも出来る人間を4人いるからといって、自由度を高めてはならない。むしろ「今日は○○のポジションを全うしろ」とそれぞれに指示するべき。試合毎に異なったポジションをしてくれると便利だし、試合の途中で役割を変化させるのもありだが、ポジションそのものを自由にしてはならない。少なくとも今の広島なら、「兄さん、最終ラインの前に張りついて、パスを散らせ」「弟、下がってくるな、前でゴールを狙え」と、きっちり役割を分担させるべき。兄さんが出場停止の時は、その試合に限って弟をそのポジションに移す。それが「ユーティリティ」というものだろう。たった4、5試合のアンダー21代表が出来たのに、何故クラブチームで出来ない。
プレー内容からチームの雰囲気、スタジアムの雰囲気まで、残留は厳しいと言わねばならない。が、幸いにも柏も負け、まだチャンスが残っている。来週鹿島に勝って柏が負ければ、再来週のホーム最後、柏戦が世紀の一戦となるとも限らないので、また見に行く予定。
第66回toto:1口100円で5当8外。
(11/14追記)神戸について書くのを忘れていた。キーパー掛川センターバック土屋と北本、左SB平野、右SB菅原、DHシジクレイと佐伯、右ハーフ望月、左ハーフ藪田、大きいトップにオゼアス、衛星に播戸、と典型的な4-2-2-2。松田監督はバクスターのやり方をそのまんまパクっているような。カズ、岡野、城とフロントが大金出した選手を堂々と干しているのは評価されるかも。土屋、菅原、藪田とヴェルディ出身(調べてみるとジュビロから来た佐伯もヴェルディユース出身)で、足下上手いけどセンタリングやロングボール下手。望月は中に中に入っているのが好きでクロス下手。土屋は思ったよりすごくない(噂先行)。北本は唯一初耳だがU21の資格ありなので注目。シジクレイは神並みのプレー、大きなマウロ・シルバ。交代で城、岡野、三浦泰年と豪華メンバー。
(11/15追記)左のサイドバックをやっている平野はもの悲しかった。左の前に張って、守備にもかえらず、憎まれる程生き生きしていた名古屋の頃が懐かしい。あの頃は、サイドを突破してゴールライン付近で転けると、「ざまーみろ平野」などと呼んでいた。前半の半ば、流れの中でセンターサークル付近からドリブルを始め、そのままゴール前まで迫ったのが唯一張り切った場面。正直、平野と藪田の位置は逆だと思う。
(11/17追記)ディフェンスラインについて。神戸のセンター2人は、右に土屋、左に北本と分担され、マークの受け渡しも完璧。土屋がサイドについていけばシジクレイが中央のカバーに戻ってくる。広島の3人は自由度が高いというより、約束事がないから、地の果てまでマンマーク。播戸が左に流れて藪田とパス交換すると、もう大混乱。本当に練習しているのだろうか。