パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

短編映画集『9・11』(前半)

サミラ・マフマルバフは録画に失敗したので、残り10本のうち前半5本を見る。
(2)クロード・ルルーシュ…「恋の終わりは世界の終わり」という心象と本当の世界の終わりみたいな出来事を比喩的に使った小品。ワン・アイディアを短編にうまくまとめた。「もし世界が終わったら…」という比喩表現は「私を月に連れてって」と同様、現実にあり得るので、使い辛くなった「ありえない」喩え。
(3)ユーセフ・シャヒーン…『炎のアンダルシア』を監督したエジプト人。『炎の〜』は一部で話題になった歴史大作で、非常に見てみたい気もあったのだが、変に芸術睡眠映画だったらどうしようと思い、まだ見ていない。しかしこの映画を観る限り、インド映画並みに面白い映画を作りそうな人だったので良かった。フィルムの中で「1983年にベイルートの海兵隊員が〜」と『男塾』的な解説者が出てくる劇画感が楽しい。『『炎の〜』も見ることにしよう。しかし短編としてはエピソードを盛り込みすぎて失敗か。亡霊海兵隊員に向かって説教する場面あたりは笑えるような気もするが。
(4)ダニス・タノヴィッチ…『ノー・マンズ・ランド』(未見)の人。シャヒーンとは違って幻想系。説明的な部分もないので、勝手に補足すると、1995年7月11日にスレブレニツァの成年男子が連れ去られて(多分殺された)事件を悼んで、毎月11日に女性達がデモをしているのが背景にあるらしい。
(5)イドリッサ・ウェドラオゴ…ブルキナファソの映画監督。世に知られたアフリカの監督だから退屈な睡眠映画な人かと思ったら、ハリウッドに通ずる物語に出自が隠せない作風というなかなかの面白さだった。ビンラディンを捕まれて賞金を獲得したい理由が母親が病気で学校行けないとか、ノーテンキなコメディだけど、逆に真実を突いているというか、深みがあるようにみえる。それからブルキナファソキリスト教国で、意外にムスリム見たことがないのだろうか。
(6)ケン・ローチ共産主義者イギリス人の本領発揮。中年チリ人の手紙書く場面を新録した他は記録映像だけ。テロを知った瞬間、ローチの脳内を駆けめぐった連想をそのまま映画にしただけ。物語を創造する気全くなし。「希望(hope)は現状への怒り(anger)と変化を恐れない勇気(courage)」という言葉は良い。