パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『NHKスペシャル』「憎しみは越えられるか〜コソボ・ある小学校の6か月」

2001/2/25放送、撮影:河潟敏、コーディネーター:マムディ・ハキク、構成:柴田周平/松永真一、制作統括:角秀夫
ミトロビツァで2000年9月から2001年2月まで取材している。番組の出来自体は文句なし。気になった点を挙げると、校長の意図する民族の和解は理解出来るし、今から始めないと「30年は経たないと暮らせない」から30年後に和解の動きを始めても意味がないことを校長はよく分かっていると思う。「忘れたことに仕方なく近付く」のではなく「忘れずに乗り越え」なければ、いつでも歴史が掘り起こされ、捏造され、利用されたことは現実が証明している。しかし校長は少なくとも心理学の専門家ではないし、善かれと思って行っている彼のアドバイスが子供のためになっているようにも思えなかった。もちろん専門家の精神ケアチームなんて望めない環境だし、出来る人が出来ることをやるしかないのだが、紛争で親を失った子供のケアなんて仕事をこなさなければならない平の教師も本当に大変だと思う。もう一つ、セルビアの学校での先生と生徒のカウンセリングは明らかにヤラセだと思う。NHKが仕組んだのではなく、取材のお願いにいったら校長が「それでは」と、利発な子供を集めて「自分に起こったことを文章に書いて読みなさい」という感じだ。被害にあった子供の体験もおそらくは事実だろうが、先生の顔を見て淀みなく「家を放火されて、父はテロリストに連れ去られたままです」なんて言わないと思いたい。セルビア人が西側メディアに不信感を強く持っていて、取材となると、身構えるのも無理はないと思うが。それとも字幕・吹き替えの効果でそういった印象を受けただけだろうか。取材のコーディネーターは名前からはアルバニア人のようだし、その人だけでセルビア人側も取材するのには無理があったではないだろうか。(採点7.5)