パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『Nスペ』「イラク シーア派台頭の衝撃」

2006/2/12初回放送、52分、取材:島崎浩/別府正一郎、ディレクター:依田一/新田義貴、制作統括:朝比奈正彦/薮並整司
今までに見たイスラム関係のドキュメンタリーから想像するに、イスラム世界というのはインドネシアからモロッコ(更に西には米国)まで、政治体制は違えども独特の経済流通ネットワークを持っており、それこそマレーシアの大富豪首長がニューヨークのモスク建設にお金を出すようなのが日常。なので、物理的に行き来が可能になったイラク・イラン間の交流が盛んになったからといって、それが直接国際政治的な懸念になるとの見方はやや一面的ではなかろうか。それにしても統一イラクの話やら米国の話やらはあまり出てこなかったし、どうせあまり触れないのなら、米国の侵攻前ビジョンが外れたというケネス・ポラックの談話等は完全に切り、南部の都市ナジャフの現状をルポ風にお送りした方が良かったのではないかと思った。
というのが、番組を見た感想で、その後検索してみると、元々はイラクの現状を伝えるリポートを意図していたようで、北部クルド人と南部シーア派の分量も同じくらいにするつもりだったのではなかろうか。それが南部シーア派とイランの関係に絞った番組になったのは、取材後に旬な話題になってきた核開発問題に絡めて「イランは怪しげ!」といったイメージ操作でもしようと思ったのだろうかと電波を飛ばしてみるが、基本的にNHK中東取材班はイスラム世界に理解があり過ぎるほどの理解者なので、「米軍が出ていってイラクとイランの経済交流が深まれば万々歳」という番組は作っても、その逆はない気もする。

当初の企画意図と思われる文章が「インターネットテレビガイド」に掲載されていた。他サイトのコピペはしない方針だが、これはどうも期間が過ぎると削除されそうだし、なかなか面白いので転載させて頂く。

シーア派の中東への影響をリポート
2月12日放送、NHKスペシャル 「誕生“シーア派政権”・新生イラクはどこへ向かうのか」
 去年12月に行われたイラク議会選挙の最終開票結果が発表され、シーア派が過半数近くの議席を獲得。いよいよイラクでは正式な政府が発足する。
 2月12日のNHKスペシャル「誕生“シーア派政権”・新生イラクはどこへ向かうのか」(仮題、後9・0)では、シーア派の台頭がイラク情勢と中東の今後にどう影響するかをリポートする。
 シーア派の狙いは、豊富な石油を埋蔵するシーア派の拠点であるイラク南部を、独立性の高い自治区にすること。
 これに対して、反スンニ派で連携してきたクルド人勢力も、油田の開発を一方的に始めるなど独自の動きを強めている。
 一方、同じシーア派の隣国・イランの急接近により、各国のスンニ派政権の間では警戒が高まっている。
 番組では、イラク南部のシーア派の聖地・ナジャフや、外国資本の参入によって繁栄する北部のクルド地区の経済の実態にも迫る。
 担当の薮並整司チーフプロデューサーは「取材してシーア派の中にはイランと同じように宗教色の強い国家を作りたいと考えている人がいる一方で、外国資本によって豊かになったクルド人はアメリカと仲良くしたいと思っていると感じた。今は自分たちの正式な国家を作ろうとまとまっているが、根本的な考えがズレているので今後どうなっていくのかと考えさせられた」と語っている。
http://www.tvguide.or.jp/news/news060201_02.html