パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

BS1『BSプライムタイム』「攻防・国連軍縮外交〜舞台裏の30日」

2004/1/10放送分、50分、取材:藤崎みさき、構成:大久保瑞穂、プロデューサー:花房周一郎/松井秀裕、制作統括:山崎秋一郎/岡田俊郎、共同制作:パオネットワーク(パオ側から藤崎、大久保、松井、残りがNHK側)
パオネットワークの番組サイト
http://www.paonetwork.co.jp/sakuhin-data/sakuhin04/kokuren.htm
関連内容に関する外務省の発表
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/un_cd/gun_un/un_saitaku03.html
国連第一委員会での「核廃絶決議」を巡る攻防。個人的には今回のような交渉の舞台裏を描いたネタこそがTVドキュメンタリーの王道、保守本流だと思っているので、とても面白かった。逆にいうと叙情的な映像で不幸な子供に1年間密着されてもあまり感動しないし、巷で評判だった『映像の世紀』みたいなのも「おっ、資料映像!」くらいにしか思わない(勉強には良いけれど)。
縦糸(時間軸)に関しては、日本が1994年以来(確か)毎年決議の内容に変更を加えながら、賛同国を増やそうと尽力している事に言及していたので良しとしよう。
問題は横糸(面軸)で、適当に検索してみると、日本案に棄権票を投じている10数カ国のうち、7カ国(ブラジル、南アフリカ共和国スウェーデンアイルランド、メキシコ、エジプト、ニュージーランド)が新アジェンダ連合というグループに属している。どうやら新アジェンダ連合は日本よりも急進的な廃絶案を提出しており、お互いに相手の案には棄権票を投じているようだ。反対国は米印の核保有国、その他の棄権国は核問題的に微妙な国ばかり(外務省サイト参照)なので、正直、外交交渉しても賛成国はこれ以上増えも減りもしない気がする。
左側系のサイトを読むと「アメリカ中心のグローバリゼーションに対抗し、世界平和を推進する新アジェンダ連合の核廃絶決議案に棄権票を投じる日本政府は、唯一の核被爆国という責任を忘れたアメリカの犬!」などと書いてあるのだけど、大抵日本政府が独自に案を提出している事には触れていない。ただ日本が新アジェンダ連合案に合流せず、「より現実的」という独自案を提出し続けているのも、核廃絶に努力しているというアリバイ工作っぽい気はする。映像に映っていた紙切れに書いてあった当初の共同提案国は日本、オーストラリア、イタリア、コートジボワール、スイス。地域リーダーとして新アジェンダ連合と張り合っているだけではなかろうか、と言いたくなる顔触れかも。
日本政府または外務省がNHKに「最近、アメリカ追従外交とか非難される事が多いので、タフネゴシエイターっぽくみえる番組つくってくれませんか。まあ、お互い色々ありますからね」と持ちかけた疑いが無きにしもあらずだが、物語として素晴らしい出来だった事に変わりはない。
おまけ:映像に映っている国連日本事務所の窓ガラス全部にモザイクがかかっていたのはセキュリティの問題か。