パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

BS1『海外ドキュメンタリー』「アフガン潜入ルポ〜タリバン圧制下の女性たち」

2001/10/7放送、英チャンネル4/ハードキャッシュ・プロダクション、2001年
2001年2〜3月にアフガニスタン系のイギリス人女性ジャーナリストによる隠しカメラ潜入取材。知られざるタリバンの非道ぶりを公に知らしめた功績と潜入取材した勇気には拍手を送るが、ドキュメンタリーとしての出来はだめ。自分の育った民主的なイギリス内イスラム社会とタリバン支配下、或いは父親が暮らした70年代アフガンと今のアフガンという自分の知っている範囲の価値観と腹立たしいタリバン野郎とを比較しては悪口を言っているだけで、タリバンが現れる前の内戦状態なんかの知識がないのではと疑いたくなるし「自分と同じ年齢・同じ民族なこの人たちと、私の運命はどんな些細なきっかけで違ってきてしまったのだろうか」みたいな想像力が全然感じられない。素晴らしい取材にケチをつける気は全くないが、内戦直前にアフガンを脱出してイギリスに渡った後、必死で働いて家族を養った素晴らしいお父さんに何不自由なく育てられた勉強が出来て野心もある女性が、勇気と無謀を取り違えて『いざとなったらイギリスのパスポートがあるわよ!』的な取材に飛び込んだように勘違いされても仕方ない。正直タリバンの穏健派幹部には、こういうルールを破っていい気になっているジャーナリストのせいでより厳しい取り締まりをしなければならなくなることを嘆いている人もいるだろう。自由な取材を許さないルールを批判することは大事だから、そのルールを破っておいて警察に捕まったら「抑圧国家だ!」なんて批判することはジャーナリストとして失格だろう。一番面白かったのはタリバン外相が「国際社会の援助で建てられたサッカー場で処刑するのは止めろ」と非難されて、「国際社会が処刑場をつくる援助をしてくれたら、ちゃんとそこで処刑します」と答えた処だ。正論だ。処刑することの是非を正すのではなく「サッカー場で公開処刑」というイメージ映像を基にした情緒的な批判にはあまりにも的確な回答だ。書いたのを読み直してみると「所詮感情的な女じゃ冷静なルポなんて出来ねえよ」と言っているようにしかとれない感じだが、今更文章力の無さを嘆いても仕方ない。(採点5)