パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

BS1『ウイークエンドスペシャル』「テロとの戦い(Avenging Terror)」

2002/9/8放送、50分×2、前編:9.11からアフガン空爆へ(構成:マーク・アンダーソン)、後編:空爆そしてカンダハル陥落(構成:チャールズ・ブルース)、制作:ブルック=ラッピング・プロダクション、国際共同制作:米/PBS、英/ch4、独/ZDF、フランス2・フランス5/日・NHK
土曜日の『Nスペ』の元ネタというか、タイトルにわざわざ「完全版」と銘打ってあった。
根拠はないが、敢えて云うならば「北部同盟の悪事は全部ラバニ氏に押しつけ、カルザイ氏を英雄に仕立てる」プロパガンダに近いものがある。どこぞで読んだカルザイ氏がアメリカ・エネルギー産業と密接な関係を持っている、という話も鵜呑みには出来ないが、少なくともこの番組ではカルザイ氏の「アメリカとは縁のなかった独自の戦士」という部分が強調されすぎている。本物の要人たちへの取材に混じって登場するから、たちが悪い。もう一つ付け加えるなら、もしカルザイ氏が番組通りの経歴で本当だとするならば、逆に何故彼に巨大な権限が与えられるのか、彼はまさに傀儡ではないか、ラバニ氏の言っていることの方が筋が通っているぞ、等疑問が沸いてくる。例えばカルザイ氏がどの派閥とも等距離を保って活動してきた、人間的にどの派閥からも敬意が払われている、小物だが交渉・調整能力に優れている、等の特徴を備えているならば、納得も出来るが、結局、新政権の首班には「多数派のパシュトゥーン人で、タリバンパキスタンとは縁のない、出来れば反テロの闘志」という条件が必要なんだけど、そんな理想に合う人物がそうそういるはずもなく、無理矢理カルザイ氏を担いだ印象だけが残った。
その他、NHKバージョンでは、イギリス軍の大失態やアメリカ軍特殊部隊の働きなど軍事関係の場面がほとんど削られていたことが判明。イランとの交渉を担当したストロー外相や派兵を決意して大変だったシュレーダー首相などの登場場面もカット。駐米パキスタン大使M・ローディなんかかなり重要な人物だと思うのだが、パキスタンとの交渉部分もかなり端折られていた。イギリス政府が派遣したタジク語の名手P・バーン博士、サウジ相手の国防次官D・ファイス、イラン相手の国務次官M・グロスマン、なども地上波ではカット。
参考:『NHKスペシャル』「テロからアフガンへ〜アメリカは世界をこう動かした」2002/9/7放送(国際共同制作、ブルック・ラッピング・プロダクション制作)。「テロからアフガンへ」のタイトルが示す通り、アメリカ政府側から見た「アルカイダにやられてからやり返すまで」の裏話・通史。暇つぶしに、取材に答えた政府要人を逐一チェックしたところ、マフムードパキスタン将軍(情報局長)、チェンバリン駐パ大使、ムシャラフ大統領、パウエル国務長官、ウォルフォウィッツ国防副長官、ルシャイロ安全保障書記、プーチン大統領、ラフモノフ大統領、ライス大統領補佐官、アーミテージ国務副長官、ブレア首相、ラムズフェルド国防長官、チェイニー副大統領(これは他のニュース映像の使い回しっぽい)、北部同盟ラバニ氏、ブラヒミ国連特別代表、ハース国務省国連担当、ドビンス特使、アブドラ北部同盟外相、ハミド・カルザイとかなりの総力取材。「国際共同制作、ブルック・ラッピング・プロダクション制作」となっているが、8日にBS1で放送される「テロとの戦い」(制作:ブルック・ラッピング・プロダクション、国際共同制作:米/PBS、英/ch4、独/ZDF、フランス2・フランス5/NHK)が120分Ver.なので、その短縮形か。というわけで、明日まで評価は保留。とりあえず一番キャラが立っていたのは、ムシャラフ北部同盟のパシリ。

上記の番組は、2006年9月5・6日深夜にNHK-BS1BS世界のドキュメンタリー』「BSが伝えた9.11後の世界」で再放送された。上記の感想は自サイトに書いたものだが、自サイトは検索ロボットから干されているので、史料としてこちらへ再掲載しておく。今回の放送は見ていない。