パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『BS世界のドキュメンタリー』「ラムズフェルドの戦争〜米国防総省の内幕(Rumsfeld's War)」

2005/1/24放送、50分、日本語版導入:岡部徹解説委員、プロデューサー:マイケル・カーク/ジム・ギルモア、制作:WGBH(2004年アメリカ)
インタビューVTRに登場した主な人物:ボブ・ウッドワードワシントン・ポスト紙編集局次長)、トーマス・リックス(同紙)、デーナ・プリースト(同紙)、ロビン・ライト(同紙)、ジェームズ・マン(ジャーナリスト)、ロバート・エルズワース(国防副長官[1975-77])、フランク・カルーチ(国防長官[1987-89])、ウィリアム・クリストル(副大統領補佐官[1989-92])、ジョン・ハムレ(国防副長官[1997-99])、トーマス・ホワイト(陸軍長官[2001-03])、ジョセフ・ホアー(米中央軍司令官[1991-94])、ポール・ヒューズ(陸軍大佐)、ダグラス・マグレガー(陸軍大佐[退役])
詳しい事は、本国の公式サイト(http://www.pbs.org/wgbh/pages/frontline/shows/pentagon/)にある。これによると本国での放送日は2004年10月26日、午後9時から90分間。ということは日本語版は約半分をカットしているわけだから、番組の出来を評するに値せず。完全版は公式サイトで見ることが出来る。インタビューVTRの収録時期は2004年7〜8月。番組にはラムズフェルドが議会で証言する9月の映像まで収録。
番組のスタンスは「イラク侵攻はやむを得なかったが、国防長官ラムズフェルドが現場(陸軍参謀総長エリック・シンセキ)の『イラク軍を破るよりもその後の統治の方が大変』という警告を無視して派遣人数をけちったこと、及びラムズフェルドが占領・統治計画から国務省(パウエル)を排除したことが、2003年4月の占領以降の失敗に繋がった」といったところ。インタビューVTRにワシントン・ポスト紙の記者が沢山出てきたので、その取材をテレビ用に焼き直しただけかもしれない。
『ウルカヌスの群像』の著者で、これから有名になりそうなジェームズ・マンも出演。マーク・グリーンみたいな優男系前髪禿げだった。
ラムズフェルドと対立して解任されたというトーマス・ホワイトが偉そうなことを言っていたが、検索したら元エンロン副社長。軍産複合体のお仲間じゃん。
ジョン・ハムレが2001年に起きたシンセキとラムズフェルドの対立を見てきたかのように語っているが、お前クリントン政権下のことしか知らないはずじゃん。というか、ハムレ氏は当時のイラク政策に批判的な戦略国際問題研究所CSIS)所長の立場からインタビューを受けているのだろう。日本語版の肩書テロップが悪い。
その他、ヒューズはシンセキに代わって陸軍の心情を語る役割。ホアーは反ラムズフェルド。マグレガーは軍内では一匹狼でラムズフェルドに自身のイラク侵攻計画が採用された人。
検索したところ、ハムレ氏は2003年6月から7月にかけて政府に頼まれてイラクを視察し、政策提言を書いていることが分かる。以下は、CSIS日本部の人が提言について書いた文章:

このレポートは、政府と議会に建設的な政策提言を行うことに主眼を置いているため、政治的対立をあおるような言葉遣いは避けている。 しかし、結論の部分で今回の国防総省の独断と失敗について、チクリと批判している。
「米国政府は今回のイラクの復興において、過去のケースとは異なる形態での支援となった。それは米国の主導で、ということに加え、国防総省というこれまで未経験の機構により主導されることになったということだ。これまでのところ、進歩もあるが、この新しい形態は困難さを増しており、イラクの新しい統治の形態を再定義していく必要に迫られている。」
http://mitsui.mgssi.com/compass/0310/04.pdf

制作者の立ち位置と近いというか、この辺りが「戦争に反対ではないけれどラムズフェルドには反対」と考えるアメリカ人にとっての公正中立か。