パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『地球特派員2007』「拡大EUのフロンティアで〜新加盟ルーマニアの光と影」

2007/4/15初回放送、50分、特派員:江川紹子(ジャーナリスト)、スタジオ進行:森永卓郎(経済アナリスト)、撮影:吉田耕司、コーディネーター:オリビア・ベルギアヌ、取材:柴崎太久郎、ディレクター:後藤和子、制作統括:堅達京子/白石章治、共同制作:NHK情報ネットワーク、制作協力:パオネットワーク/藤枝融、制作・著作:NHK
数年前までBS2に『世界わが心の旅』という番組があった。有名人を旅人にして世界のあちこちを巡る番組だが、旅人が若い頃に訪れてその後の人生に影響を与えた土地への再訪だと胸に訴える感動作になるのだが、旅人が本で読んで/映画で見て憧れた土地への初訪問だと、訪問先に所縁の人物がいるわけでもなく、物見遊山な旅行記でしかない場合が多かった。当時の番組プロデューサーもブログに「すべてが気に入った作品とはならない。中には、単なる骨休めで海外旅行してきたといわんばかりの「駄作」もあった」と書いている。
昨年から始まった地球特派員シリーズ、自分は6〜7本を見ていると思うが、どうも上に書いた『世界わが心の旅』の駄作編によく似ている。特派員がその人物である必然性がない。スタジオ進行者が「私も調べたんですが〜」とか言ってフリップを出してくるのも嘘くさい。結局、特派員は飾りなのか、スタジオ進行者も飾りなのか、ディレクターが書いた台本に従って進んでいるのか、主導権がどこにあるのか分からない。
その中では江川氏が特派員を務めた作品は過去のアメリカ編、イギリス編ともども割と面白かった。今回だって「ルーマニアへ行って下さい」「ルーマニアではどこそこで○×を見て下さい」と指示されているだけかもしれないが、流石はジャーナリストだからか自分の眼で見ようとしているように感じる。
労働者の移動を描いた前半はあまり興味がわかなかった。この間、WOWOWでやってた『セックストラフィック』のように、人の感情面を丁寧に描こうと思ったらドラマの方が有利かもしれない。
EUが定めた基準に達しないと手作りチーズもワインも売れなくなる農業を描いた後半は面白かった。少し前、オランダの伝統工芸である木靴がEUの品質基準に達しないため売れないという笑い話があった記憶があるが、それと同じようなことが新加盟の辺境では沢山起こるのだろう。数年前に読んだジョゼ・ボヴェの本によると、「害虫や日照りに強い」とか言われて穀物メジャーから買った種もみから収穫した麦は、翌年蒔いても作物は出来ないので、毎年借金をして種もみを買うことになって、そのまま無限ループに取り込まれるらしい。恐らく、ルーマニアのワイン農家もEU御墨付きのワイン苗を借金してアグリビジネス多国籍企業から買わされ、ルーマニアの土地柄と合わなくて収穫が悪いとまた新しい苗を買わされ、そのうち借金が払えなくなると土地を売らされ、企業形態の農業商社の小作人として死ぬまで働くことになるのだろう。資本主義万歳。
最後に2ちゃんで見掛けたお気に入りのログを貼って終わる。

メキシコの田舎町。海岸に小さなボートが停泊していた。
メキシコ人の漁師が小さな網に魚をとってきた。その魚はなんとも生きがいい。
それを見たアメリカ人旅行者は、
「すばらしい魚だね。どれくらいの時間、漁をしていたの」
と尋ねた。 すると漁師は
「そんなに長い時間じゃないよ」
と答えた。旅行者が
「もっと漁をしていたら、もっと魚が獲れたんだろうね。おしいなあ」
と言うと、漁師は、自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だと言った。
「それじゃあ、あまった時間でいったい何をするの」
と旅行者が聞くと、漁師は、
「日が高くなるまでゆっくり寝て、それから漁に出る。戻ってきたら子どもと遊んで、女房とシエスタして。夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって…ああ、これでもう一日終わりだね」
すると旅行者はまじめな顔で漁師に向かってこう言った。
「ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人間として、きみにアドバイスしよう。いいかい、きみは毎日、もっと長い時間、漁をするべきだ。それであまった魚は売る。お金が貯まったら大きな漁船を買う。そうすると漁獲高は上がり、儲けも増える。その儲けで漁船を2隻、3隻と増やしていくんだ。やがて大漁船団ができるまでね。そうしたら仲介人に魚を売るのはやめだ。自前の水産品加工工場を建てて、そこに魚を入れる。その頃にはきみはこのちっぽけな村を出てメキソコシティに引っ越し、ロサンゼルス、ニューヨークへと進出していくだろう。きみはマンハッタンのオフィスビルから企業の指揮をとるんだ」
漁師は尋ねた。
「そうなるまでにどれくらいかかるのかね」
「20年、いやおそらく25年でそこまでいくね」
「それからどうなるの」
「それから? そのときは本当にすごいことになるよ」
と旅行者はにんまりと笑い、
「今度は株を売却して、きみは億万長者になるのさ」
「それで?」
「そうしたら引退して、海岸近くの小さな村に住んで、日が高くなるまでゆっくり寝て日中は釣りをしたり、子どもと遊んだり、奥さんとシエスタして過ごして、夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって過ごすんだ。どうだい。すばらしいだろう」