パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『NHKスペシャル』「激動・地中海世界(1)〜コーカサス回廊をこえて」

2001/1/27放送取材:山内聡彦/鴨志田郷、コーディネーター:ヤロスラフ・クラショフ/ボリス・マリシェフ、構成:秦正純、制作統括:桜井均/草川康之
以下、NHKのホームページより転載

ユダヤ教、ローマカトリックロシア正教イスラムの聖地エルサレム。近年この地で目立つのはおよそ100万人のロシア系ユダヤ人たちである。連邦崩壊後の政治不安、経済破錠をきっかけにロシアから脱出したのである。その混乱の震源地モスクワでは、この4月、ロシア正教大聖堂で盛大な復活祭が行われた。出席したのはアレクセイ2世、新大統領プーチン、そしてスターリン時代の教会破壊者たち。これを機会に、ロシア正教と強いロシアのナショナリズムが手を結び、チェチェンとの緊張を深めている。黒海に面するグルジア共和国は、ソ連邦から離脱した後、自らの内部にあるアブハジアの分離独立にてこずっている。シュワルナゼ大統領は、チェチェンの難民を受け入れ、ロシアとの対決姿勢を強め、黒海沿岸にNATO哨戒艇を配置させている。モスクワに発する冷戦崩壊の衝撃波は、コーカサス回廊、黒海沿岸を抜けて、中東紛争のホットスポットエルサレムにまで深い影を投げかけている。番組は、モスクワ、エルサレムの二点間を結ぶコーカサス回廊、黒海沿岸を舞台に繰り広げられる民族、宗教の複雑な葛藤をルポするプロローグとする。

「プロローグ」とある通り、散漫な印象。4回シリーズの1回分をプロローグに使っていいのか、という疑問が残る。始まりは総選挙が近いイスラエル。ロシア移民党のシャランスキー党首が登場。彼はソ連時代サハロフらとともに人権のために闘った人物。グルジアのガムサフルジアと同様、人間としての人権ではなく、少数派の人権のために闘った人物が多数派になった途端、抑圧者になるのはよくあること。今のイスラエルではこの10年に流入した100万人のロシア系ユダヤ人が大きな影響力を持つと云う。次はモスクワ、シナゴーグの建設に資金を出したメディアモスト総裁グシンスキーの登場。彼はプーチンに目の敵にされている。何故か?政権批判のメディアだから?ユダヤ人だから?マフィア資本主義で大金持ちになったのに税金を払わないから?全部正解。続いて、反ユダヤ組織『記憶』のワシーリエフ党首、アレクシー2世、プーチンと登場。アレクシーもプーチンも「チェチェンの国際テロ組織」と言い切っているのはさすが。次は息子がチェチェンで「テロリスト」に捕まり、改宗を迫られたが拒否したため殺されたロシア兵の母リューバ・ロジオノワに話を聞く。教会は息子を「聖人」にしようとしているが、政治的に利用されるのはまっぴらと正常な回答。ここでチェチェン「テロリスト」を匿っているとロシアに批判されているグルジアのパンキー渓谷、出てくるのは「誰がテロリストなものかい」としゃべるおばちゃんたち。グルジア難民相ワルキゼ、大統領シェワルナゼ、グルジア正教総主教イリヤ2世、それにグルジアから分離しようとするアブハジア大統領アルジンバが登場。グルジアの後ろにはアメリカ、アブハジアの後ろにはロシアが付いているということらしい。再びモスクワからキリスト救世主教会の落成式とユダヤ文化センターの落成式、後者にもプーチン参上したのは金持ちを敵に回さないためもある。最後はもう一度イスラエルから、グルジアからの移民を訪問したシェワルナゼとイリヤ2世の姿、そして選挙キャンペーンのため右派シャロンと組む移民党のシャランスキー。内政と外交が複雑に絡み合い、宗教と国家のズレが更なる紛争を生む様を激しいアングルの転換と大量の情報でまとめたタランティーノ方式、これじゃ、元々予備知識があってホームページをチェックする人間以外は何が言いたいのかさっぱり分からないだろう。(採点5.5)