パロップのブログ

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BS1『BS特集』「“イラク戦争”とメディア」

2005/4/29再放送(3/21初回放送)、50分×2、取材:森谷渉/酒井裕、構成:宮本康宏/小林亜希子、制作統括:古川潤/三雲節/千本信昭/塩田純、共同制作:NHKエデュケーショナル、制作協力:エス・ヴィジョン、制作・著作:NHK、ナビ:藤沢秀敏(=藤澤秀敏・アメリカ総局長)、第1部:テロの脅威がアメリカを変えた/第2部:アメリカ・問われる報道姿勢
自分の事は棚に上げて他国の報道姿勢を検証するNHKって素敵だな。加えて提携しているABC(とピーター・ジェニングス)を持ち上げる。ABCもあのFOXと比較して「冷静だった」と誉められても素直に喜べないだろう。
使用されているインタビュー映像の時期が、この番組用に最近されたものなのか、当時リアルタイムでされたものの流用なのか、区別がつかない。インタビューされた、或いは本国の放送で使われた日付をテロップで出してくれると有り難いのだが。
イラク戦争前から昨年秋まで、大量破壊兵器問題→捕虜虐待問題→大統領選挙報道という流れがあり、報道する側はその途上で事実を入手しても表を出すタイミングを計ったりしていたわけで、表に出す基準も問題の大きさに比例するというよりは、捕虜虐待問題なんかはそれまでに溜まっていた政府の嘘や態度に対する不満に火を付けたというか「堪忍袋が切れたので、これまで知ってたけど黙っててやってた事も残らず報道してやるぞ」という感じがした。これまで政府の決定に疑義を挟まなかった後ろめたさから、メディアは捕虜虐待問題を道徳性・正統性への疑問のシンボルとして利用しただけで、保守的な人々からの「わざわざそんな不祥事を大きく扱うな」という抗議も結構筋が通っている。相対的にみれば「軍隊が戦時に無実の市民を捕まえて虐待・拷問していました」というのは、そんなに重要な事ではない(あくまで相対的だが)。証拠があって叩きやすいネタは実際以上に扱われる傾向があるのではないか。とはいえ、自分が実際に米国に住んで報道の洪水を浴びたわけではないので、どの問題にどのくらいの時間配分をしたのかは、実数字どころか印象としてもよく分からない。分からない以上、憶測もここまで。

どうも言葉が足りていないので、もう少し書くと、イラクアルカイダの関係だとか大量破壊兵器の有無だとか開戦前にメディアが検証して、もし言いたいのならば「この戦争には疑問がある」と言うべきことを、政府が怖かったからか、視聴者が怖かったからか、とにかく検証してその結果を提示することをサボり、そのツケを捕虜虐待写真という分かり易い絵ズラを視聴者に提示することで「この戦争には疑問がある」ことを情緒に訴えて説明することで払おうとしたのでは、ということ。