パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

BS1『BSプライムタイム』「追跡・ロシア劇場テロ事件〜狙われた市民の平穏」

4/12放送分、50分、取材:高尾潤/石川慎介/小林誠/茶園昌宏、構成:山本滋、制作統括:石川一洋/栗生田修彦/三雲節
『BSプライムタイム』(土曜22時〜)は4月からの新番組だが、イラク関係のせいで時間ずれまくり、結局土曜日の昼間に本放送という悲しい扱い。外国テレビ・ドキュメンタリーの購入・翻訳番組を流す時間帯かと思いきや、NHKによる製作、しかも傑作だった。50分番組なのだから、地上波(『NHKスペシャル』)で放送してやれよ。
2002年10月23日に発生した「モスクワ劇場テロ」の顛末。まず人質にとられた中産階級の若い女性(国際関係学部出)にスポット。続いてテロリスト側の若い女性(元はチェチェン大学で演劇を学ぶ非宗教的な生い立ち)の事情。半分(25分)を過ぎたところで、突然NTV(政府に批判的なメディア)と政府の対立を取り上げ、何かと思ったら、NTVが新しいニュースキャスターにチェチェン出身の若い女性を抜擢した話に結びつく。最後に、そのキャスター(アセット・バツーエフ)が「中産階級的自分とチェチェン出身的自分のせめぎ合い」について「テロに走った女性の気持ちも理解出来る」と、恵まれた生活の窺えるモスクワのアパートを映しながら言って終わり。完璧。途中に出てきた子どもにミュージカルを指導していたおっさんや(恐らく)突入時のガスのせいで耳が聞こえなくなってモスクワ市に損害賠償請求している若い兄ちゃんの話も、もちろん興味深いが展開的には蛇足。テロの加害者と被害者がコインの裏表という設定が出来過ぎているので、逆に嘘臭いくらい。ロシアの新聞に載っていた被害者・加害者エピソードから使えそうなネタを拾って追加取材したのか、警察の被害者・加害者リストから気になった経歴の持ち主を丹念に拾ったのかは分からないが、相変わらずロシア支局は良い仕事をする。取材も素晴らしいのだろうが、それを元に物語を構成する能力が高いのだろうか。ロシア支局を希望する奴らはトルストイの読み過ぎか。