パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

BS1『BS特集』「愛する人はテロで殺された〜遺族がたどるルクソール事件」

2002/12/23放送、撮影:サイモンフレンチ/北西英二、構成:フィル・デイ/上田真理子、プロデューサー:アリソン・ルーパー、制作統括:古川潤、共同制作:BBC/インフォーカスプロダクションズ
ルクソールにおける乱射テロで亡くなったスイスの元大学教授(現彫刻家)、イギリスのばあさん、それから日本の弁護士一家が、記念碑を建てるようエジプト行政に働きかけるため、ルクソールを訪問するついでに、顔を合わせる話。記念碑話が日本人主導だから収録も日本主導、イギリス一家の撮影のみBBC協力だろうか。もちろん「共同制作」だから取材の協力だけでなく、イギリスではBBCが編集したイギリス人家族中心の番組も放送されているのだろう。「肉親が拉致された家族」という共通項があるだけの拉致被害家族の会をみても想像がつくように、育ちも環境も(家族観も補償観も)違う人たちがまとまるというのは難しいことだと思う。今回は更に国が違うため宗教観なんかもかなり違うわけで、(哲学者然としたスイス人おっさんと比較して)イギリスの気の好いドキュンっぽいおばちゃんが、引っかき回しそうな雰囲気(エジプト人医者の所に行って無理矢理話を聞きだしては通訳の言葉も聞かず、分かったような顔で共感や同情する振る舞いがかなり腹立たしかった)を持ちながらも、番組内では共通の悲しみの感情が家族を結びつけていた。とはいうものの、日本版の主役はハイソな感じの弁護士一家。確か事件の後、「テロに遭ったのは、情報を教えなかった旅行会社のせい」的な訴えを起こしたというニュースを聞いた記憶が残っているが、この人だったのか。その時は「なんでも訴えるドキュンだ」と思っていたが、「民事裁判をすることで、知りたい情報を得る」という姿勢だったのか、とある程度納得。背景を知らずになんでもドキュン扱いはよくないと反省。娘を亡くした父、姉を亡くした妹、どうやって整理をつけたら良いかを模索するうち、NYのテロ被害者の活動がパワフルに、まぶしく映り、真似してみようと思う感情など、継続的な細かい取材をしているけれど、途中イギリス側の話が大きく挟まれたり、感情整理の旅なのかと思えば、イスラム・テロの背景を説明し出したり、散漫な印象を受けた。もちろん多角的と好評価することも可能だろうが。ちなみにテロの背景を説明したいなら、番組取材陣が説明映像を挿入するのではなく、弁護士一家が「彼らは何故テロを起こしたのか」を考える場面を入れるべき。そういえば、イスラム集団の弁護士に話を聞きに行く場面もあったが、何かピンとこないやり取りに映った。ルクソールがテーベのことだとは初耳。