パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『NHKスペシャル』「紛争ビジネス〜知られざる民間軍事会社」

2002/12/21放送、構成:依田一、制作統括:山内聡彦/吉開真一郎
http://www.nhk.or.jp/special/libraly/02/l0012/l1221.html
見ている途中では、放送順と取材ネタ発生源の順序は逆だと思った。つまり、国連報告書でアンゴラ民間軍事会社批判される→民間軍事会社といえばアメリカ→実例としてユーゴ、の順で取材かと。しかし番組の後半「国連の報告書でMPRI社が名指しで批判される」とあったことから推測するに、まず一般報道で『国連民間軍事会社を制限の方向』を扱う→NHKのプロデューサーが「民間軍事会社って何だ? 調べよう」→国連報告書には米MPRI社が載っているから取材→MPRI社が取材者に「悪どい事やっている奴に会いたいなら、うちじゃなくてアフリカに行きな」と助言→アンゴラ内戦の話題に辿りつく、の順だと思った。で、今「依田一」をググってみると『アフリカレポート』という雑誌に「日本のメディアが伝えたルワンダ」という記事を書いている(1997年)。ということは、やはりアフリカを中心に紛争ジャーナリズムみたいな仕事をしている人が、アメリカによるアフリカ資源奪取みたいな題材からネタを広げていったと考えるのが適当か。
番組タイトルやNHKサイトの番宣を読む限り「民間軍事会社(・A・)イクナイ!!」みたいなのを想像するわけだが、実際にはこちらが拍子抜けするくらい民間軍事会社に対して偏見がないというかフラットな取り上げ方で、逆に終盤のアメリカの世界(エネルギー)戦略の話に違和感を感じたくらいだった。それから見る前はアメリカ発の民間軍事会社というのは、軍人を途上国の軍事顧問に派遣するとアムネスティなんかから叩かれるので、民間人を隠れ蓑に派遣しているのかと思っていたが、実際には米軍が人員削減で顧問業務まで手が回らないだけの話で、意外だった。それから面白かったのは、国連の報告書では「傭兵」を反政府組織に雇われた民間軍事会社に限定している事。正規軍も糞な事をするのは重々承知だが、政府側が違法行為をする事もあると認めたら、国連加盟政府の正統性・代表権みたいなものまで否定してしまいかねないから難しい。番組のオチをMPRI社副社長の「我々の仕事が無くなる事は永遠にありませんよ(ニヤリ)」で締めたのは、ちょっと感じ悪い。
番組からは少し離れるが、自衛隊派遣とか奉仕活動義務化とかの話の度、右翼のおっさんは「男は国を守るもの」と言い、「軍靴の音が聞こえる」おばさんは「母性を持った女性は平和主義」と言うような発言をするが、これからの戦争はゲリラ・市街地戦にでもならない限り、体力自慢の白兵戦要員の危険性よりも、派遣会社に勤めるCADオペレーター女性やらシステムエンジニア兄さんが、知らないうちに、或いは知っているけど実感がない、或いは知っているし、したいとも思わないけど会社の意向に逆らって仕事失いたくないし、などと「何となく」戦争の協力者になっている方が怖いと思う。「規制緩和」「構造改革」なんて簡単にいうけど、「北朝鮮にばらまくビラ100万枚を民間発注して経費節減」なんて事になって、自分がイラレで『早く降伏しないと、爆弾降るよ』というチラシを「ハングルのフォントが無えよ」なんて言いながら製作する羽目になったとして、「人殺しの手伝いは出来ません!」と言うには中途半端な手伝いだなあ、という感じは否めない。