パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

海外ドキュメンタリー

BS1『ワールドドキュメンタリー』「米巨大企業エンロン破綻(Bigger than Enron)」(9/1放送分、米2002年、WGBH制作、ヘドリック・スミス取材)。アーサー・アンダーセンというのは現役の会計士ではなく創業者。アメリカの会計士・弁護士企業というと、みな最近独立して自分の名前を付けているものとばかり思っていたが(←『アリー・マクビール』の見過ぎ)、よく考えたら創業者が死んでも会社名は変わらなくて当然。ただアメリカの特に最先端商売の企業は、吸収合併を繰り返して元の名前なんてそうそう残ってなさそうだし、何より20世紀初頭から会計士稼業があるなんて想像出来ない。ストックオプションは大会社の社長がボロ儲けするためという側面だけではなく、急成長企業が給与を支払えない代わりにボーナスで人材を引っ張ってくる手段という話に納得。「エンロン以外にも同じようなことをやっているよ」という一般論はよく聞くが、サンビーム?の具体例は面白かった。ドキュメンタリーとしてよく出来ている部分。アンダーセン現会長の面が下品で、モレノエクアドルにそっくりだ。
BS1『ワールドドキュメンタリー』「ニューヨーク〜テロからの再建」(9/7放送分、2002年、米・グレイトプロジェクツフィルム制作)。跡地の片づけと再開発計画を並行して記録。うまい作りだと思うが、考えてみると、解体作業と再開発計画に関する業者と遺族たちとの論争は全く別物で、同じ一つのドキュメンタリーにする必然性はなかった。皮肉をいうつもりはないが、遺族の言う「追悼施設と商業施設が混ざったテーマパークのような酷いもの」は、全てがビジネスに直結するアメリカのモニュメントに相応しいような気がするのは私だけだろうか。
BS1『BS特集』「テロから1年・世界はどこへ向かうのか」。『BS23』のキャスター藤澤秀敏が、あの日を前にニューヨークへ飛んで現地取材。先週『BS23』で5日連続放送したのをまとめてくれた番組らしい。見逃しているので、有り難い。
BS1『特集:ジム・レーラー・ニュースアワー』「テロはアメリカをどう変えたか」(東京大学教授猪口孝防衛大学教授立山良司、ノンフィクション作家吉永みち子、司会傍田賢治)。米公共放送(PBS)で行われた識者討論の映像を見て、それを日本の識者が語る二重構造。面白くないわけではないが途中で寝た。
BS1『ウイークエンドスペシャル』「テロとの戦い(Avenging Terror)〜前編:9.11からアフガン空爆へ(構成:マーク・アンダーソン)、後編:空爆そしてカンダハル陥落(構成:チャールズ・ブルース)」(制作:ブルック=ラッピング・プロダクション、国際共同制作:米/PBS、英/ch4、独/ZDF、フランス2・フランス5/日・NHK)。土曜日の『Nスペ』の元ネタというか、タイトルにわざわざ「完全版」と銘打ってあった。50分×2本。根拠はないが、敢えて云うならば「北部同盟の悪事は全部ラバニ氏に押しつけ、カルザイ氏を英雄に仕立てる」プロパガンダに近いものがある。どこぞで読んだカルザイ氏がアメリカ・エネルギー産業と密接な関係を持っている、という話も鵜呑みには出来ないが、少なくともこの番組ではカルザイ氏の「アメリカとは縁のなかった独自の戦士」という部分が強調されすぎている。本物の要人たちへの取材に混じって登場するから、たちが悪い。もう一つ付け加えるなら、もしカルザイ氏が番組通りの経歴で本当だとするならば、逆に何故彼に巨大な権限が与えられるのか、彼はまさに傀儡ではないか、ラバニ氏の言っていることの方が筋が通っているぞ、等疑問が沸いてくる。例えばカルザイ氏がどの派閥とも等距離を保って活動してきた、人間的にどの派閥からも敬意が払われている、小物だが交渉・調整能力に優れている、等の特徴を備えているならば、納得も出来るが、結局、新政権の首班には「多数派のパシュトゥーン人で、タリバンパキスタンとは縁のない、出来れば反テロの闘志」という条件が必要なんだけど、そんな理想に合う人物がそうそういるはずもなく、無理矢理カルザイ氏を担いだ印象だけが残った。その他、NHKバージョンでは、イギリス軍の大失態やアメリカ軍特殊部隊の働きなど軍事関係の場面がほとんど削られていたことが判明。イランとの交渉を担当したストロー外相や派兵を決意して大変だったシュレーダー首相などの登場場面もカット。駐米パキスタン大使M・ローディなんかかなり重要な人物だと思うのだが、パキスタンとの交渉部分もかなり端折られていた。イギリス政府が派遣したタジク語の名手P・バーン博士、サウジ相手の国防次官D・ファイス、イラン相手の国務次官M・グロスマン、なども地上波ではカット。冗談ながら番組最大の見どころは初めバラバラと登場する3役くらいを吹き替えてた銀河万丈が、最後の方では、イワノフ→アーミテージと連続して登場し、1人で対話している格好になってしまっていたところだろうか。個人的には勇猛でかつ知恵もありそうなアーミテージはあの声でぴったりだが、イワノフはもっと神経質そうなマ=クベっぽい声にして欲しかった。