読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

パロップのブログ

主にTVドキュメンタリーを記録します

NHKの公共性に関するちょっとしたメモ

2011年4月2日深夜27時からNHK-BS1で以下の番組が放送された。

「連帯 融和そして平和〜アフリカ・マリの歩み」
2011/4/2初回放送、50分、制作:マリ共和国文化省/マリ国営放送ORTM/NHKインターナショナル、制作・著作クレジット無し

当時は震災から日も浅く、また年初よりチュニジアやエジプトで起こったデモの様子などが日本時間の深夜に伝えられていたこともあり、NHKを点けたまま朝まで過ごしていた方も多かったようなので、恐らくご覧になった方もいるのではなかろうか(全国で100人くらい?)。
内容は、2010年9月22日に独立50周年を迎えたマリ共和国を題材に、独立記念日前後に行われた記念式典映像を挟みつつ、マリ帝国から始まって植民地時代、独立運動などの歴史、多民族が共存するために生みだされたサナンクヤと呼ばれる車座会議(アフガンのロヤジルガみたい)、マリ帝国の時代に作られた世界最古の憲法の一つともいわれるマンデン憲章、祖先から連綿と受け継がれてきた伝統を琵琶法師的な歌と語りで伝えるグリオなどなど、マリを「アフリカの平和構築モデルと呼ばれる多民族による共存社会」として称賛するよく出来た歴史紀行ドキュメンタリーだった。
「なんでまたマイナーなマリを取り上げたの?」と思わなくもなかったし、それなりに取材に力が入っているにもかかわらず深夜放送1回きりで再放送もないのは解せないところもあったが、内容自体は実際に興味深くて面白かったし、そもそも2010年は「アフリカの年」50周年だった割にあまり特集とか組まれなかったよね、その方がもっと解せないよね、くらいの気分で頭の片隅に消えていた。
で、しばらくして上記タイトルで検索したところ、財団法人NHKインターナショナルが発行した平成22年度の業務報告書が引っ掛かった。その中に以下のような記載がある。

平成 22 年度業務運営の概要
○公的機関等からの委託による多様な事業展開
・アフリカのマリ共和国独立50 周年の記念DVD の制作を受託。NHK BS1 での放送を実現した。(P.2)

(4)マリ共和国独立50 周年記念「連帯、融和そして平和〜アフリカ・マリの歩み〜」制作 1 本(DVD 1,000 セット)
マリ共和国独立50 周年を記念して、民主主義が根づき着実に発展しているアフリカの国づくりのモデルとしてのマリを紹介するDVD(53 分、英仏語版)を受注、マリ国営放送と共同制作した。マリ共和国で放送されたほか、NHKBS でも23 年4 月3 日に放送される。DVD1,000 枚はアフリカ諸国、マリ共和国関係機関に配布された。(P.21)
www.nhkint.or.jp/ja/foundation/22_gyomu.pdf

マリ共和国(orマリ国営放送)から委託を受けて制作された官製番組だったのか。映像素材も共和国提供でNHKは編集だけかも。もちろん、NHK営利企業として利益を上げるためにその制作技術を生かして、公的機関から委託を受けて番組を作ってDVDに収めて納品するのは何ら問題が無いだろう。けれども、その商品をNHK-BS1という公共の電波を使って放送するのはありなのか。
そりゃあ、震災の直後で娯楽番組を流すのが躊躇われる時期だったし、深夜27時に枠が余ってたから軽い気持ちで放送したのかもしれない。そりゃあ、今のNHKは朝の情報番組でも健康食品の宣伝かと思うようなことをやっているし、今さら公共性なんてうるさく言う必要はないのかもしれない。けれど、釈然としないものは残る。
たとえば、この番組を見たビジネスマンが「おお、マリはアフリカの中でも政情が安定してて、民主主義が根付いているのか」とか感心して営業活動に進出してみたら、ほらついこないだにクーデタ発生だよ。NHKの“報道”番組だと思って情報を信じてみたら、マリ政府がお金を出してるプロパガンダだったよ、騙されたよ、なんて訴えられたらどうするのか。仮に放送するのならば、報道・ドキュメンタリーの形ではなく、画面の右隅にでも「これは広告です」と入れるのが筋ではないのか。
業務報告書にある“NHKBS1での放送を実現した”という書き方もちょっと気になる。本来放送出来ないものを親会社とのコネを使って放送してやる便宜も料金のうちですよ的な。
多少マリの民主主義を持ち上げ過ぎではあるけれど、お金を積まれて作ったとは思えないくらい良質な歴史ドキュメンタリーだっただけに、こういうのを放送する際のルールとか可視化されててもいいんじゃないかと思い、書いてみた。

【参考】
・「マリのクーデター情報」+「マリ北部のトゥアレグ族http://togetter.com/li/277485
マリ共和国クーデター速報(201203)http://togetter.com/li/277716