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パロップのブログ

主にTVドキュメンタリーを記録します

柳澤寿男とバルカン室内管弦楽団関連

ドキュメンタリー

以下の3作品を見た後で柳澤氏の公式サイト及びブログを読んだところ、テレビでは省かれていたり分かりにくかったりするところも理解できたので、先に読んでから見た方が良かった。2010年の日本放送文化大賞グランプリを受賞したBSジャパン版の方は、年末に再放送(テレビガイドでは12/29、公式サイトでは12/31となっている)があるようなので興味のある方は是非(出来れば先に公式サイトで予習して)。

BSジャパン『戦場に音楽の架け橋を〜指揮者 柳澤寿男 コソボの挑戦』
2009/6/20初回放送、約110分、ディレクター:井手康行、アシスタントディレクター:小島隆補、構成:田中伊知郎、通訳:大塚真彦、プロデューサー:岩田牧子(テレビ東京)/大岡サダム(MARS COMPANY)、製作:BSJAPAN/MARS COMPANY
いわゆる海外で活躍する誇らしい日本人を紹介。番組中から分かる限り制作者は、2008年5月が初コソボ取材。6月、子供のためのコンサート。2009年1月、所沢で指揮の様子。3・4・5月は毎月訪問し、5月17日のコンサートで幕。番組途中で出てくるミトロヴィッツアのカフェで映したレシートの日付は2009年5月18日。ドキュメンタリーが取材の順番通りに並べられていると思ってはいけない。
公式サイトをみると、バルカン室内管弦楽団は2007年から存在する。番組のポイントが、対立する民族が初めて共演したというところではなく、今も対立の深いミトロヴィッツアの地で初めて行われたという点にあるのならば、演出の範囲。もちろん結成当時の楽団にはアルバニア系とマケドニア系しかいなかった可能性もあるし、その辺りは曖昧。
公式サイトをみると、セルビア側で行った公演の地名はズベチャンでミトロヴィッツアではない。外務省のリリース(ttp://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/h20/10/1184462_918.html)だと「コソボ共和国ミトロビツァ南・北及びズベチャン」という表記だから、やはり別の町みたい。ミトロヴィッツア北部のセルビア人地区の更に北で隣接する町といったところか。
番組中のテロップが〈プリシュティナスコピエ/ミトロヴィッツア/所沢〉と都市名で統一せず、〈コソボマケドニア/ミトロヴィッツア/所沢〉都市名と国名が混ざっていたので、空間移動の場面ではモヤモヤした気持ちになった。「つまらんいちゃもんつけやがって」と思われるだろうが、〈ミトロヴィッツア〉とテロップが出て、バス/列車/タクシーに乗るシーンがあって、着いた先が〈コソボ〉だったりすると不自然じゃないですかという話。一般に視聴者は無意識のうちに足りない情報を想像して補っている(コソボフィルが練習しているシーンを見ながら「ここはプリシュティナだな」など)わけだが、このテロップは勝手に補う習性を利用した「嘘はついてないけど本当のことは明かさない」テクニックのように見える。もしかすると「正確にはプリシュティナ市じゃなくて市近郊の別の市なんだけど、細かく割ったら却って分かりにくいじゃん。そのくらい大目に見ろよ」ということなのかもしれないが、政治的に難しい地域の話だけにもう少し繊細に扱ってもよかったのでは、と感じた。

『BS特集』「“和解”へのハーモニー〜「バルカン室内管弦楽団」の挑戦」
2010/1/16初回放送、50分、語り:石田ひかり、写真提供:MARS COMPANY、コーディネーター:大塚真彦、撮影:平川惣一、ディレクター:渡辺摩央、制作統括:野村直樹、制作・著作:NHK
2009年11月に行われたバルカン室内管弦楽団の来日公演を中心に。
後発企画でどういう切り口にするのかと思ったら、柳澤氏ではなく楽団メンバーの1人アルタさんをクローズアップ。上手い視点。
BSJ版にも出ていたヴラディミルさんはベオグラード在住で、コソボ・ミトロヴィッツアの音楽学校には通いで教えている人だと明らかになった。
BSJ版では「楽団員が演奏会の前に『今セルビアが攻め込んできたら、楽器じゃなくて銃を持っていく…』、演奏会後に『さっきはそういう風に言ったけど、音楽に国境があってはいけない』」という発言をした人をぼかしていたけど、BS1版でそれがバキさんだったことが判明。

『BS特集』「響け内戦の記憶をこえて〜旧ユーゴ・民族和解の楽団」
2010/7/3初回放送、50分、撮影:平川惣一、ディレクター:渡辺摩央、制作統括:木内啓、制作・著作:NHK
2010年5月に行われたバルカン室内管弦楽団サラエボ公演を中心に。
今回も主役はアルタさん。アルタさんがユーチューブで見ていたエミナさんの演奏映像、検索したら見ることが出来た。アクセス数は3ケタだったので、全世界への売り込みプロモというよりは、親しい人に見てもらうための無料サーバー的使い方だと思われる。
前回のナレーション石田さんの声は、穏やかな赤ちゃん成長期ドキュメントには合いそうだが、アルタさんの内面を緊張感たっぷりに描くドキュメンタリーには向いていないと思ったので、今回代わったのは申し訳ないが正解だと思った。

3本続けて見ると、ちょうど2008年5月からの2年を時期も被らずにカバーしてくれたことになり、群像物語としてすごく面白かった。特にオープンマインドで状況を好転させていくフェスティムとバルボン、ヴラディミルは両方に出てくる名脇役。