パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

満州関係

BS1満蒙開拓団」は地上波用画面、BS1「取り残された民衆」はワイド画面で放送された。前者に対して「せっかくハイビジョンで収録しているのに何故」と思ったが、おそらく『Nスペ』用にサイドをカットしたバージョンをそのまま流用したと思われる。いわせてもらえば、「満蒙開拓団」と「取り残された民衆」はBSでの放送順序が逆だと思う。何らかのメモリアルデイに放送日を合わせたのかもしれないが。

BS1『BSドキュメンタリー』「満蒙開拓団〜ある家族の軌跡」
2006/8/19初回放送、50分、語り:濱中博久、撮影:南幸男、取材:樋爪かおり、ディレクター:後藤和子、制作統括:林新/山本篤、共同制作:NHK情報ネットワーク、制作協力:パオネットワーク/藤枝融、制作・著作:NHK
父親が開拓団の一員で、自身は残留孤児となった男性の人生に焦点を合わせている。入植が始まった昭和7年頃から一気に昭和20年に跳ぶなど歴史に関しては説明不足だが、人間物語としては50分の中で必要十分。

BS-hiハイビジョン特集』「満蒙開拓団〜国策が生んだ悲劇の記録」
2006/9/13初回放送、110分、語り:濱中博久、撮影:南幸男/高橋僚、取材:市川光、ディレクター:後藤和子/諏訪奏、制作統括:林新/山本篤、共同制作:NHK情報ネットワーク、制作協力:パオネットワーク/藤枝融、制作・著作:NHK
2台のテレビを並べて上記『BSドキュメンタリー』と同時視聴しようとしたが、かなり構成を変えていたので断念。こちらは東宮鐵男の日記を中心に、張作霖爆殺からソ連参戦まで長期的な視点で歴史が語られている。東宮日記は、発見されたというより遺族が公開を許可したといった方が正しいようだ。詳細は以下のブログを参照。
http://www.hurusato-miyagi.jp/blog/2006/03/post_348.html
http://www.hurusato-miyagi.jp/blog/2006/08/post_497.html
余談だが、番組内でさらりと「在郷軍人」という用語を使っているけど、戦後生まれでピンとくる人はいるのか。少なくとも自分は何の事だか分からない。

『Nスペ』「満蒙開拓団はこうして送られた〜眠っていた関東軍将校の資料」
2006/8/11放送、50分
録画に失敗したが、先に書いた通りの理由からBS1版と大差ないと思われる。BSで放送されるドキュメンタリーは外部の制作会社に投げることも多いが、『Nスペ』はNHK本体で大体作っている。しかし「満蒙開拓団」はディレクターから制作統括までパオ(外部)とNHKJN(子会社)。最初はBS用に企画が持ち上がったけど、東宮日記の発見がスクープなので地上波でも放送されることになったと推測される。

BS1『BSドキュメンタリー』「取り残された民衆〜元関東軍兵士と開拓団家族の証言」
2006/8/15初回放送、50分、語り:高橋美鈴、撮影:小口修一/米田要、リサーチャー:岩本善政、ディレクター:中村豊、制作統括:山本篤/北川恵、共同制作:NHKエンタープライズ、制作協力:テムジン/河本哲也、制作・著作:NHK

BS-hiハイビジョン特集』「取り残された民衆〜元関東軍兵士と開拓団家族の証言」
2006/12/8再放送(8/9初回放送)、110分、語り:高橋美鈴、ディレクター:中村豊、制作統括:山本篤/北川恵、共同制作:NHKエンタープライズ、制作協力:テムジン/河本哲也、制作・著作:NHK
基本的なストーリーラインはBS1版と同じだが、こちらの方が証言が豊富。根こそぎ動員とか東安駅爆破事件など、BS1版では全く触れられなかったエピソードも多い。「せっかく取材したのだから」といって基本ストーリーから外れたエピソードを詰めまくると、却って冗長になるドキュメンタリーもあるが、本番組は元々が同時多発的に起きた混乱の様子を集めたものだから、エピソードが多いほど深みも厚みも出るのは当然。本来ならばBS-hi版こそBS1や地上波で放送すべき。

番組に出てくる証言者の名を検索すると、ほとんどの方が他の媒体で証言を残している。制作者も先行報道を集めて、カメラの前で語ってくれる人を探したのだろう。BS1版とBS-hi版を比較すると分かるが、BS1版では証言をパラグラフの途中でばっさりカットしている。たとえば「取り残された民衆」のラストで、戦後の残留邦人帰国に力を尽くしていた御婦人が関東軍作戦参謀・草地貞吾に呼び出されて民間人を見捨てた言い訳を聞かされるエピソードがあるが、BS-hi版だとその後に御婦人の草地参謀及び国への批判がある。草地の言い訳とそれに対する婦人の感想は二つでワンセットではなかろうか。もちろん放送時間に限りはある。或いは、既に紙媒体で語った話をもう一度カメラの前で語ってもらう理由は、話の内容に意味があるのではなく、映像に残した方が広く訴える力を持つからだ、という考え方もあるだろう。それならば、番組で利用出来なかった箇所も含めて、インタビューのノーカットバージョンをNHKの公式サイトで公開するくらいの努力はすべきだろう。ボストン公共放送局WGBHに出来て、NHKに出来ないわけがない。
証言者として出演する80〜90歳のおばあちゃんが皆しっかりしている(自分とこも祖父は両方すでに亡くなったが、90歳前後の祖母はともに元気だ)。あの時代を生き抜いた人は強い。