パロップのブログ

主にTVドキュメンタリーを記録します

『BSドキュメンタリー』〈シリーズアフリカ2008〉

日本でアフリカ開発会議とやらが開かれることも知らず、「何でNHKはこの時期にアフリカ絡みのドキュメンタリーをたくさん放送するの?」なんて疑問に思っていた。日頃ニュースを見ていない人間が報道系ドキュメンタリーの感想を偉そうに書いてはいけない。

BS1『BSドキュメンタリー』〈シリーズアフリカ2008〉「ルワンダ 女性たちの国づくり」
2008/5/24初回放送、50分、コーディネーター:カンベンガ マリー ルイズ、撮影:井戸裕一、取材:吉田誠、ディレクター:後藤健二、制作統括:佐橘晴男/東野真/丸山雄也、制作:NHKエデュケーショナル、制作・著作:NHK/インデペンデント・プレス
公式サイトにある予告のうち、

紛争中のレイプで生まれた私生児の母親の多くは自分の子を愛せず、母子ともども親族からも疎まれ、今も孤立無援の貧困の中に暮らす。(中略)進展の遅いフツ族ツチ族の和解と、目に見えて広がり始めた貧富の差が、庶民に不満を生み出しつつあり、女性議員の力が試されようとしている。

この辺りは取材したけど省略されたのか、全然出てこなかった。典型的な「取材対象が女性、制作者も女性、想定視聴者も女性」という番組かと思いきや、クレジットを見る限り、制作陣は意外にもみな男性。

BS1『BSドキュメンタリー』〈シリーズアフリカ2008〉「ケニア 暴動に揺れる“優等国”」
2008/5/25初回放送、50分、取材協力:日本紛争予防センター、コーディネーター:宮崎章、撮影:矢吹啓司、取材:濱修一、ディレクター:荒井俊之、制作統括:下田大樹/東野真/丸山雄也、制作:NHKエデュケーショナル、制作・著作:NHK/駿
公式サイトにある予告のうち、

2月28日、キバキ大統領と対立する最大野党オレンジ民主党オディンガ党首が、連立政権樹立に向けた和解に合意し、混乱は収束に向かい始めた。その動きに一早く反応したのが、民間NGOのリーダーたち。表面化した部族間の対立感情を一刻も早く一掃し、スーダンソマリアのような泥沼の内戦に陥らないよう緊急ワークショップを開催する。ワークショップは、4月中旬、首都ナイロビにある「PKOトレーニングセンター」(東アフリカの平和維持活動に関わる軍人、文民の訓練施設)で行われる。民族対立の現場である村々の長老、教育者など30名が集い、「平和」とは何か、「暴力」に訴えずに解決するにはどうすれば良いのか、徹底的に意見を交わす。ワークショップ後には、参加メンバーが地元住民との小さな集会を開き、平穏さを取り戻す対話を目指す計画だ。

辺りが全く出てこなかった。というか予告と本編がまるっきり違っていた。恐らくキバキとオディンガが和解に合意したというニュースを聞いて、民族対立を話し合いで解決した優良例(対立する2つの民族のリーダーが話し合いで大統領と首相を分け合うことに合意したなんて、いかにも第三者が持ち上げたくなる事例だ)としてドキュメントしようとケニアへ行ったら、実際には富裕層=政治指導者層への不満が貧困層の間で渦巻いててびっくりしたのだろうか、などと推測。取材へ行く前にプロデューサーへ提出したプラン通りの絵を撮ってきて「仕事」を済ます人もいるだろうに、「聞くと見るとでは大違い」とばかりに実情へ迫ってきた取材者の勇気に敬意を表す。

BS1『BSドキュメンタリー』〈シリーズアフリカ2008〉「南アフリカ エネルギー・クライシス」
2008/5/31再放送(5/28初回放送)、50分、コーディネーター:山脇愛理、撮影:川本学、取材:濱修一、ディレクター:野澤敏樹、制作統括:佐橘晴男/河邑厚徳/丸山雄也、制作:NHKエデュケーショナル、制作・著作:NHK/駿
公式サイトにある予告のうち、

国営電力会社エスコム社では、同社で開発した小型原発の大幅増設や、豊富に埋蔵される石炭からの人工石油製造による電力の確保を目指しているが、開発に伴う汚染の拡大に警鐘を唱えるNGOや科学者との対立が激化している。番組では、バイオエネルギー論争と原発計画、さらに石炭鉱山採掘に揺れる南アフリカ・ムプマランガの州都エルメロ近郊を訪れ、エネルギー不足にあえぐ南アの姿をドキュメントする。

辺りは特に出てこなかったというか強調されず。結局、問題なのはバイオエネルギーや原発、石炭鉱山採掘による鉱毒の問題など環境と経済発展(エネルギー)の調和ではなく、貧しい人々に電気や水道などの公共サービスが提供されないなど貧富の差が拡大しているにも関わらず。政府が無能であることであるというのが番組の趣旨だろうか。ただマンデラ政権が誕生した時、白人の私有財産を接収して見せ掛けの平等を実現しようとするのではなく、大企業優遇税制なんかを採用して海外からの投資を呼び込み、経済成長する事で全体の底上げを計ろうとしたというのは、経済の原則的には間違っていなかったのだろうと思う。

ということで、3本のうち事前の予告に「貧富の差」が書いてあったのはルワンダだけだったのに、いざオンエアされてみれば、民族和解がテーマだったケニアとエネルギー問題がテーマだった南アの方で、むしろ格差問題を正面から取り上げることになった。これぞ成り行きが読めないドキュメンタリーの醍醐味だ、といったら誉め過ぎか。