パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『ETV特集』「被爆者 心の傷は癒えず〜原爆のトラウマ 1300人の調査から」

2006/8/5初回放送、90分、取材:池座雅之、撮影:湯木慎治、ディレクター:浜田裕造/田中意澄、制作統括:湯澤克彦、制作・著作:NHK広島
検索すれば、原爆とPTSDの関係について以前から調査が行われていることが分かる。それら先行の研究に拠らず、東京都精神医学総合研究所に協力を仰ぎながら、自前で「被爆体験・心の調査・NHKアンケート」を行ったのならば、番組のサイトで公開するべき。3000人に用紙を配り、約半数から回答を得て、その約3割がPTSDではないかという結果だが、仕事で忙しくしていた時は忘れていた当時の記憶が年を取るに連れて鮮明に思い出すとか、体験を共有していた同志的存在を亡くすうちに過去の辛さが強まるとか、そんな番組で取り上げられた人をみても、アンケートに答えたくない人ほど心の傷を隠しているのではないかとか考えてしまう。番組制作的には細かいデータよりも映像的に力がある個々人の体験に焦点を合わせるのは自然だし、人間物語を扱うのがTVドキュメンタリーだろう。とはいえ、制作の下地になるデータを軽く扱っていると疑われたくなければ、NHKには「印象に残る個々のエピソードはテレビで、学術的な詳細はネットで」というメディア毎の適性を考えた連動の仕方を模索しても良いのでは。