パロップのブログ

主にTVドキュメンタリーを記録します

史的『SEXY 8 BEAT』論

例によってダラダラしているうちに新しいシングルも発売され(新星堂まで買いに行ったが見当たらず、アマゾンで注文したので未入手)、吉澤さんの卒業も迫るなか、あわててアルバムの感想を書く前に、二言三言。
去る1月、大手新聞へ全面広告が掲載されたという話を聞き、自分は複雑な気持ちになった。この6〜7年、多くのファンは「モーニング娘。を大切に扱って欲しい」と願いつつ、アップフロントは「モー娘はハロプロ内の1ユニットに過ぎません。みっちゃんやゆきどんはトイレタイムではありません。キッズを好きになって下さい」という政策をとってきた。呆れた人は既に去り、耐性がついちゃった人だけが今も残っているのだろう。そんなこんなで今年冬のハロコンは、若い子を集めていわゆる「萌え」重視なイベントと、古い人を集めた歌重視のイベントとに路線がくっきり分かれた。途中の数年、持ち歌無視のカラオケコンなどと揶揄されつつも、試行錯誤の末に同じ根っこから始まった人達がカラーの違う2つの興行を行えるまでになったのだから、その辺りの才覚は認めざるを得ないと思っていた矢先に、あの広告だから「結局頼りはモー娘ブランドかよ。なら最初から大切にしとけ」と言いたくもなる。もちろん「モー娘10周年」という一般人相手にも使えるブランドネームが手元にあるのだから、使わないよりは使った方が良いのは分かっているだけに、冒頭の「複雑な気持ちになった」という表現になった。
(1)「学芸会ばっかやってんじゃねえ」という批判に応えて半年近い練習期間をとったミュージカルをやった、(2)地下活動ばっかするなという批判に応えて(カツーンが勝手に転けたとはいえ)『歩いてる』でオリコン1位を取ってみた、(3)幻の7期を除けば、久しぶりに1次選考から合宿までちゃんと過程を明かして8期メンバーを採用した(2001年夏の5期以来では?)、(4)前述のように新聞に全面広告を出して一般層にアピールした、(5)「クソ曲ばっか出すな」という批判に応えて『笑顔YESヌード』という久しぶりに楽曲派からも評価される曲を出した、ということで、少なくともこの1年のモー娘に関しては、原点回帰というか、ヲタ向きから再び一般人の視界に入る活動へとスタンスを修正した印象を受ける。まあ5年前からちゃんとやっておけという話だが、今後もモー娘を続けるつもりなら、たとえ手遅れだとしてもしないよりはずっと良い。中国人加入に関しては、この「一般人向け」方策の一環なのか、それとも1年間まともなことを続けても成果が上がらなかったので、やけになって「ピコーン」が来たのかは分からない。
実際のところ、自分はあまりアルバムの質についてとやかく言う気はなかったりする。1年に1枚、無事を知らせるように定期的にリリースされることが何より。約9年でオリジナル8枚にベスト2枚なんて立派なものだ。自分が好きなカントリー音楽のアーティストも大抵は1年に1枚、同じ時期にアルバムが出る。ナッシュビルという街にレコード会社とレコーディングスタジオとスタジオミュージシャンとソングライターがうじゃうじゃいて、良い意味で音楽という商品をぽんぽこ生み出すシステムが整っているからのようだ。年中ライブをしてアルバムが4年に1枚とかざらにあるハードロック系とは対称的。ハロプロも歌い手と作り手が完全に分離しており、歌い手が年柄年中コンサをしている同時進行でソングライターとアレンジャーが頑張れば良いのだから、音楽事務所にして興業主体事務所というアップフロントらしい優れ物のシステムを築いたものだし、折角のシステムを活かしてこれからも定期的にアルバムがリリースされることを期待している。もっといえば、ドラマやCMとのタイアップがつく可能性もない今となっては、ツアーとリリースを連動させる、要するに両ハロコン前と秋のモーコン前の年3枚シングルを出し、春コン前に年度前決算と重ねてアルバムを出すというような、より機械的にリリースしても良いくらいだと思っている。
………
さて本題だが、評価の難しいアルバムだと思う。つんくソングが好きな人なら「寺田メロディの集大成」という好意的な見方をするかもしれないし、モー娘が好きな人からは、つんくの手癖たっぷりというか、「様々なユニットでボツになった曲の再利用集」という辛辣な評価をされるかもしれない。
たとえば『春ビューティフルエブリデイ』は、『好きな先輩』や『純LOVER』(他ユニットだと『恋がステキな季節』辺りか)を彷佛とさせる多分ブリティッシュ(?)に元ネタがあるのだろう諭一氏らしいアレンジの曲だし、吉澤のソロは藤本ソロ×AKIRAと同じテイスト(『銀色の永遠』よりは『大切』か)。曲そのものに文句はないけど、モー娘らしいかといえばそうでもない。
とにかくスタイルが見えない。ここ数年の高橋/藤本/田中体制の続きというわけでもなく、新しいスタイルへの過渡期にもなっていない。自分の史観では、『シャボン玉』から『第6感』まで、もっと具体的には安倍さんの卒業発表から辻加護の卒業までの時間がスタイルの変化に使われず、無為に過ぎたことを残念に思っているが、今もその状態に近いものを感じる。
そういえば『第6感』『レインボー7』は、メンバーからイメージを膨らませることもなく、アルバムタイトルからインスピレーションを受けてアルバムオリジナル曲を書いた結果、妙にコンセプトアルバム的な仕上がりという副産物を生み出したが、今回の『SEXY 8 BEAT』というタイトルからは何にも浮かんでこなかった様子。それがこのアルバムの雑多な感じをより表面化させている感はある。
マイフェイバリットは『春ビューティフルエブリデイ』だが、これは「いままでいちば〜ん」以来の亀井声ファンである自分の偏愛故で、出来れば全員参加の曲で「これぞ!」という印象に残る曲があって欲しいところ。『未来の太陽』や『Beポジティブ!』も結構好きだけど、個々の輝きであってモー娘の魅力とは少し違うような気もする。そもそもにして分割ユニット毎の曲が多い。これまでも安倍さんのソロ扱いや二つのグループに分かれた曲はあったけれど、今回は少し多過ぎる。7.5thの場合はクリスマスの贈り物扱いだしそんなもんかと思ったが、今や本体の箱好きよりも個々のメンバーのファンが多いため、それぞれに見せ場を作らないといけないようだ。
分割ユニットと聞いて思い出すのは、おとめ組さくら組である。今にして思えば、アリーナよりも小さいクラスのホールで興行するための分割だったのだろうと想像もつくが、当時はモー娘の幅を表すのになかなか面白い手段だと感心した。その幅はメンバーの個性/キャラが生み出すものだったのか、それとも先に曲調の幅があってそれに合ったメンバーをはめ込むのか。或いはメンバー個々に曲調に対する向き不向きはなく、どんな曲もメンバーに預けてしまえばそれなりのものになるのか。その辺りを試す意味でも、おとめ組さくら組が合同でオリジナルアルバムを出して欲しかった。シングル曲は敢えて逆にする、たとえば『さくら満開』をおとめ組が歌い、『友情』をさくら組が歌う。そうすれば、モー娘の幅とメンバー各々の幅が見えて面白かったかなあと思う。
それから、ここ数年は既に各ユニットの描き分けなんか出来ていなかったといえばそれまでだが、今後ますますベリキューとの差別化が難しくなるのも確か。仮に以下の2人がリードボーカルの曲が出たとして、清水佐紀(1991年11月22日生)&嗣永桃子(1992年3月6日生)、梅田えりか(1991年5月24日生)&矢島舞美(1992年2月7日生)、久住小春(1992年7月15日生)&光井 愛佳(1993年1月12日生)で、やはりモー娘はOLっぽい設定の歌詞を歌うのか、ベリキューは中学生の初恋みたいな歌詞を歌うのか。今年出たハロプロソングの中では『ベリービューティ』がとても好きだけど、あれも「ベリエだからこそ」というわけではないだろう。どうせテレビで披露する機会もないし、自分達の単独コンサートで歌うだけなんだから、粗製濫造された曲を乱発するくらいなら若手ユニット3組には丹精込めて作った良曲を違うアレンジで歌わせるとかでもありかと。いろんな人が『矢切の渡し』とか『釜山港へ帰れ』を歌っていたのを思い出してしまった。
今後のスタイルの個人的な希望としては、カメガキ光井辺りを軸にした〈ダサい/柔らかい/面白い〉方向に進んで欲しいけど、『シャニムニ〜』や『Beポジティブ!』(或いは7.5thの『シャイニーG』)なんかを聞くと、田中久住ラインの〈元気/軽い/かっこいい〉方向になるのだろう。多分そっちに甘い蜜は落ちていないし、『セクボ』方向にしか新しいスタイルは存在しないと思うのだが、この『セクボ』がまた楽曲ヲタにはけちょんけちょんに叩かれているし。また『ラブ&ピース』なんかは自分も好きな曲ではあれど、今のモー娘が全盛期のモー娘を自己模倣しても仕方ないし、アーティストならば誰もやっていない方向へ踏み出して、派手に転んだっていいんじゃないか。
正直ジャケット(DVD付初回限定の方だが)は過去10枚の中でも最高に素晴らしいと思う。最初に見た時「あのアップフロントがまともな商品を出しているなんて!」と驚愕した。また、付属のDVDも良かった。ハロコンのDVDを買わない自分のようなライトヲタにはちょうどいい試供品。その辺りも含めて、今までになく一般層を意識したアルバムになっていると思う。3thのレバニラ炒めとか4thの『ミスムン』の小芝居とか7thのレインボーピンクとか7.5thのMCGAKIとか一般人を引かせる要素もなく、5thのポッキーCMソングとか映画の挿入歌とか、6thの環境ミュージカルの主題歌とか、7thのボーナストラック的リミックスとか、統一感を破壊したりスキップしたくなる要素もない。せっかく車の中でエンドレスリピート出来るようなアルバムになっているんだけど、残念ながら今はもうアルバムを丸々聴く時代ではなく、好きな曲だけをダウンロードしたり、携帯プレーヤーでシャッフルして聴く時代になってしまった。この後に及んで良く出来たパッケージ商品を発売してもあまり意味がない。どうせなら5年前にちゃんとしておけ。一般向けなのに、一般人は買わないというのは最大の問題であるけれど、5年で失った信用は5年かかって取り返せるかもしれないし、取り返せないかもしれないが、解散セールで最後の一儲けをするのではなく、継続することで儲けるつもりならば、それはもう地道に続けるしかない。

惜しいことその1、辞めたメンバーのパートは取り直して欲しい。4thの恋レボでやったわけだし、ライブ用に変更したパート割りも既にあるわけだし、出来ないことはないだろう。シングルとアルバムが別バージョンの方がお得感も出ると思う。これがたとえば付属DVDの方でアンビの他にセクボも新しいフォーメーションでのコンサート映像を収録して、CD収録は元のままだがDVD映像は最新版、ならば納得出来る。
惜しいことその2、スタッフクレジットがない。最後に山崎だの瀬戸だの名前がずらずら並んでいると、ハロプロにお布施を払っている気が実感出来るのに。今回のアルバムはジャケット以外にも内側の構成もなかなかで、ひどいアートディレクションを山のように築いてきたあの会社の製品とは思えないのだが、その有能なディレクターさんが「スタッフクレジットなんかいらないでしょ」と提案したのならば、それは違うと言いたい。それからジャケットはべた褒めだけど、9人の女の子が突っ立っている裏ジャケはカッコ良く無い。
余談その1、『Beポジティブ!』がデビー・ギブソンの“Love in disguise”という曲に雰囲気が似ている。パクりという意味ではなく「ああ、ガールポップだなあ」という感じが似ている。実は更に元ネタがあるのかもしれないが、自分は知らない。
余談その2、『春ビューティフルエブリデイ』に関するヲタ意見だと「カメが上手くなった」という声とセットで「『かしまし2』の頃はひどかった」という声を聞くのだが、これには断固抗議したい。「♪パパだけなんにもし〜らないの〜」は、あれこそが味で、ああいうスタイルなんだ、あれが正解なんだ、と声を大にして言いたい。