パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『戦後60年・歴史を変えた戦場 』「フォークランド紛争〜兵器の実験場」

2005/5/21放送、50分、取材:樋爪かおり、構成:後藤和子、制作統括:山崎秋一郎/林新、共同制作:NHK情報ネットワーク、制作協力:パオネットワーク/藤枝融、制作・著作:NHK

後藤/樋爪/藤枝各氏がパオネットワーク
http://www.paonetwork.co.jp/index.html
林氏がNHKJN
http://www.nhk-jn.co.jp/index.htm
山崎氏がNHK
http://www.nhk.or.jp/bs/bsdoc/bsdoc.html
余談だが、いつの間にか上記のような『BSドキュメンタリー』公式サイトが出来ている。「これからの放送予定」があるのは良いが、過去ログがないのは良くない。アンド、

世界中で起きているあらゆる出来事に目を配り、多彩なテーマ、素材にタブーなく、真っ向から取り組みます。

という意気込みが後日、失笑のタネにならないよう期待している。

フォークランド紛争初心者の自分には、この番組が充分勉強になったことを表明しつつ、少しツッコミを入れてみる。
番組サイトには、

わずか2ヶ月で終了したこの戦争は、その後の戦争における兵器のあり方を大きく変えた。

とあるが、その内容は『統合戦争辞典』というサイトの「フォークランド紛争」の項(http://www007.upp.so-net.ne.jp/togo/dic/data/falklandwar.html)の一番下に書いてある「戦訓」そのままである(もちろんパクリ批判ではない)。番組内で行われた当事者への取材は軍事業界の「定説」をなぞりつつ絵的に見せるためであり、新事実を発掘するわけではない。制作者の主張も作家性もない以上、これはドキュメンタリーというよりは歴史・情報番組と考えて異論はないと思う(もちろん情報番組をドキュメンタリーより下にしているわけではない)。
何の思想もない情報番組だが、例えばアルゼンチン大使館から「タイトルが『フォークランド』だけとは何事だ。『フォークランドマルビナス』と政治的に正しく表記しろ」と抗議が来るかもしれない。或いは平和市民団体から「『紛争』とは何事ですか。悲惨な戦いの実情を隠微する意図は明らかです。『戦争』と表記しなさい」と抗議が来るかもしれない。その時に対応するのは誰かといれば、当然「制作・著作:NHK」様であろう。そう考えると、NHKに外部制作会社やらNHK内下請け子会社の作品を切り刻む権利があって当然のような気がするが、その辺については後日、森達也氏の著作と絡めながらまとめて書きたいが、書かないかもしれない。

上の文章と被るが、主権国家の正規軍同士による明らかな戦争であるはずなのに、何故「紛争」と呼ばれるようになったのか、当時を知らない若輩者としては、メディア論的に興味がある。
いつの時代も、どの戦争でもフランス政府は最低・最悪だという印象が残るわけだが、それに絡んでこの「軍事編」と対になる「政治・外交編」でもう1本作って欲しい。米ソ冷戦時代に西側同士が戦争したら、当然見捨てられた側にはソ連が近づくのでは?(いわゆるキューバ方式)という疑問なんかが浮かんでくる。1980年代の米国政府ネタ本を読んでもフォークランド紛争の話はあまり出てこないような気がする。
フォークランドに上陸・占領したアルゼンチン軍の多くが、ろくに訓練も受けていない20歳前後の新兵だったという話。「占領という既成事実を作ってしまえば、イギリスともあろう近代国家がたかが島一つのために戦争することもあるまい」とアルゼンチン政府は高をくくっていたのだろうが、「羊と住民に囲まれて形式的に見張りでもしてればじきに終わるから」くらいの甘言で連れて来られた若者が、イギリスの最精鋭部隊と実戦をすると知った時の気持ちを考えると悲しくさせられる。