パロップのブログ

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4月26日水曜日:プラハ9日目

試合開始は20時半ということで、街の散策から19時過ぎにユースホステルへ一旦戻り、コンタクトを入れて再び出ればよかろう、トラムで10分位だし、と高を括っていると、やはり自分というかトラムの行き先を間違え、しかもこの時間だと本数が1時間2本くらいしか走っておらず、かなり時間をロスした。着いたのは20時過ぎ、急いで入場してみると、まだなんとかウォームアップに間に合った。19番ラダと20番ネメッツがベテランの仲良しらしく、「今日は出番ないよな」とかリラックスした表情でパス交換していた。場内アナウンスでスタメンが発表される。ゼッケンだけはチェコ語に続いて英語で流れる。大体は聞き取れたが、11番だけは? 「バブー」という攻撃の選手がいただろうか。とグラウンドを見渡すと11番は金髪、ベイブル(Bejbl)だった。正しい発音は難しそうだ。ベイブルは11番に何のこだわりがあるのか知らないが、今季アトレチコも本人も今一つなのに、スタメン出場で、しかも声援がすごい。彼はチェコではアンタッチャブルな尊敬を集めている選手なのだろうか。ちなみにネドヴェドはネヴェド、コラーはコレル。
さて、自分の席に座ろうとスタンドを登っていくと、警備員のおっさんが数人、私の13列目に席とびとびで座っている。その前後は「民間人お断り」みたいな感じだ。近付いていくと、「上へ行け。ここはだめだ」と追われる。2、3段上がった後、首を傾げながらまた彼らに近付くと、今度は「チケットを見せろ」と言う。番号を確認すると、「確かにここだが、とにかくここはだめだ」ということで、仕方なく5、6列の空き席へ座ることにする。客の入りが悪いので、番号通り座らなくてもよかったのだけど。次の日の新聞には観客数4972人で、この5年間で2番目に入りの悪い、プラハでは最低の入りだとして表が載っていた。親善試合のしすぎなのか、フットボールの人気が落ちているのか、チケットが高すぎるのか(100コルナ=350円くらいだが)、対戦相手に興味がないのか(96年のワールドカップ予選、レトナでのユーゴ戦をダフ屋から買った友人がうらやましい)。次第に掴めてきた状況を総合すると、どうやら私の買った席はイスラエルからのサポーター席と決定され(なら窓口で売るな!)、警備員は13列目より前のイスラエル人と、それより後ろのチェコ人を離すために緩衝地帯を作っていたのだった。しかし試合が始まってみると、私の周りの人々はマーク・グリーンやスピルバーグな顔をしてイスラエルのチャンスに歓声をあげている。もっとも彼らはチェコの素晴らしいゴールにも拍手を送っているし、大体こんな気の抜けた雰囲気のなか、国同士で衝突するわけがない。危険なのはむしろバックスタンドに乗り込んで奇声をあげているスラヴィア・サポーターとホームのゴール裏に陣取るスパルタ・サポーターの意地の張り合いの方だ(アウェイ側ゴール裏にイスラエル人はいない)。プラハっ子たちは自分のひいき選手にだけ声援を送って御満悦の様子。
チェコのスタメンだが、ゴールキーパーイングランドで活躍するベテラン、スルニチェク。今はまだウィーンのマイヤー、スパルタのブラゼクと正キーパーを争う最中。ディフェンスは4人、スイーパーにノヴォトニー、右サイドにフカル、左サイドにガブリエルとスパルタで揃え、ストッパーにはフィオレンティーナのジェプカ。どの雑誌を見てもチェコを深く守る3バックだとしているが、今日は4人がラインをしっかりと上げ、相手のフォワードの1人はジェプカがハードマーク、左右に動くタイプにはフカルとガブリエルがマークを受け渡し、もう一方が中盤まで上がっておくのが約束事か。ノヴォトニーも控えのラダもタフなストッパーではなく読みで勝負するタイプなので、良い守り方だと思う。フカルの右サイドにはラタル、ガブリエルの左にはネメッツ、とユーロ96のレギュラーがいるので、彼らには今日は正念場。ただラタル、ネメッツともクラブではウィングやハーフの選手なので、この4バックにはフカル、ガブリエルが合っているかもしれない。もちろんオランダの3トップにはマンマーク3人にスイーパーとなるかもしれない。中盤は4人、フラットに3人並べて、左からネドヴェド、ホルヴァート、ウーリヒ、常に3人から5メートルほど下がって底にベイブル、ネドヴェドは96年はセンターにいることが多かったが、現在ラツィオで好調な左サイドを代表でもさせるのが良いと見たのか。ホルヴァートはスラヴィアの司令塔で本大会出場停止のベルガーに替わっての重責。ウーリヒもスラヴィアで好調のドリブラー、ポボルスキも今日のベンチにいるが、代役のテストらしい。ネドヴェドもウーリヒもサイドに張るよりも中に入ってしっかり持ちたい方なので、フカル、ガブリエルの攻撃参加も頻繁にあり、良いリズムが出ている。ただ中盤の4人がポジションを入れ替わることがほとんどなく、スパルタのハシェク・サッカーよりも古臭い印象が拭えない。2トップは2メートルのコラーとベテランのクカ。翌日の新聞ではクカとウーリヒの評価が低かったが、個人的にはウーリヒは右サイドで良い仕掛けをしていたし、クカもコラーにボールが集まるよう左右におとりとなってよく動いていた。スミチェルが怪我という話なので、ユーロ本番でもクカとコラーでいくのではないだろうか。
試合の方は、14分にネドヴェドの右サイドから切り込んでそのままミドルシュートがゴール。37分にはポストでボールを足下で受けたコラーが反転してディフェンダー2人を振り切り、ゴール。前半でイスラエルの骨のなさが露呈したので、後半は選手を入れ替えてテスト(こういう展開の時をテストっていうんだよ、トルシエ!)。後半早々ガブリエルに代えてラタルを右サイドに入れ、フカルを左へ。ネドヴェドは2点目を挙げたところで御苦労さん、スパルタの右ウィングっぽいバラネクに交代。そしていよいよホルヴァートに代えて19才にしてスパルタの司令塔ロシツキを投入、20分少々だったが、ドリブルにスルーパスと持ち味を充分アピールしていた。その後もコラーからポボルスキ、これは人気選手の顔見せ興行のような感じ。クカからロクベンツ、ウーリヒからヴァグネルと当落線上の攻撃の選手を次々と試した。一方の守備陣はベイブル含めて代えずに90分。試合は4対1で終了した。イスラエルは巷で噂のベルコヴィッチは確かにボールのキープやフリーキックに非凡なものを見せていたが、セルタのレヴィボなんぞへたれで、チェコの本番の実力を計る相手ではなかった。
22時半に試合終了後、スポーツ・バーの貼り紙にあった「本日レアル対バルセロナ」というのがどうしても気になり、全力で地下鉄を乗り継いで行ってみたら、後半43分にエスパニョールがレアルの攻撃を必死でかわしており、数分後、国王杯に勝利するエスパニョールの感激を目にすることとなった。嘘でも大袈裟でもないが、紛らわしいぞ!

Zapas: pratelske Datum: 27.04.2000
Stadion: Letna Mesto: Praha,Ceska Republika
Rozhodci: Marczyk Zbigniew, Polsko
Divaku: 4972

CR Nedved Pavel Gol padl ze hry, 14
CR Koller Jan Gol padl ze hry, 37
CR Nedved Pavel Gol padl ze hry, 57
Souper Bercoviz Eyal Gol padl ze hry, 81
CR Wagner Rene Gol padl ze hry, 90

CZECH: Srnicek Pavel, Repka Tomas, Gabriel Petr (Latal Radoslav 53m), Nedved Pavel (Baranek Miroslav 80m), Fukal Milan, Horvath Pavel (Rosicky Tomas 72m), Ulich Ivo (Wagner Rene 63m), Novotny Jiri, Kuka Pavel (Lokvenc Vratislav 70m), Koller Jan (Poborsky Karel 63m), Bejbl Radek, Trener: Chovanec Jozef
IZRAEL: Korenfein Itzhak David, Talkar Ofer (Bachar Ilan 59m), Ghrayib Najwan, Shelah Amir Dov (Keisi Hadoram 11m), Gershon Shimon, Banado Ariel, Banin Tal (Nimny Avi 53m), Revivo Michael Haim (Tikva Avraham 75m), Badeer Valeed, Bercoviz Eyal, Tal Idan

追記:ユーロの結果は御存じの通り、対フランス戦にガブリエルではなく、フカルを右でも左でも使っていたらと今さら悔やんでも結果論でしかない。それから本文では嘘をついているが、試合中、ホルヴァートをスパルタのホルニャクと混同していた。まあ似たようなものだ。ちなみにホルヴァートは今季からポルトガルリスボンで活躍している。ロクベンツは「チェコの高木」、つまり国内や地域レベルでは通用しても国際舞台では通用しない、と言い続けてきたことがユーロで証明されたと思っている。しかしロクベンツは今季よりドイツのカイザースラウテルンへ移籍し、結構活躍しているらしい。ちなみにガブリエルもカイザースラウテルン、フカルはハンブルガーへ移籍、そして国内最後の才能ロシツキはバイエルン行きを熱望している。