パロップのブログ

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4月20日木曜日:プラハ3日目

私がプラハを訪れた最大の目的はミロスラフ・カトレツを見る事だった。カトレツはチェコ代表のリベロとしてユーロ96でも活躍した名選手で、数年前、現役生活の最後を故郷で終えようと、ドイツの強豪カイザースラウテルンからチェコの無名クラブへと移籍したというニュースを読んだきり私にはすっかり消息不明の存在となっていた。当然のことながら日本のサッカー雑誌にチェコ・リーグの情報は見当たらないし、当時私はパソコンも持っていなかった。プラハフットボールの情報を手に入れるには? 本当は酒場のおっさんに聞くのが一番手っ取り早い方法だろうが、そんな勇気のない人は? リーグ戦のカードは予期せずあっけなく判った。プラハの地下鉄駅にはたいがい『FURTUNA』というブックメーカーの出先店鋪があり、360度ガラス張りの窓口以外のすべてに、今後1週間の賭け対象カードがチョークボードに書かれており、そこにはオッズとともに試合開始日時も書いてある。賭けの締め切り時間との関係だろう。ちなみに賭けの対象はフットボールならチェコ・リーグはおろかイタリアは2部まで、スウェーデンハンガリーのリーグ戦もあるし、フットボール以外ならテニス(ランクの落ちる田舎ツアーのダブルスまで!)にバスケット(NBAヨーロッパリーグ)、アイスホッケー(NHLと国内リーグ)にF1に野球(わかるのか?)まで何でも賭けている。しかもオッズがだいたい妥当なのもさすがプロ。しかし、見た事もないチームや競技に金賭けて楽しいんだろうかとも思うが、きっと楽しさよりも真面目に儲けたい人たちばかりなのだろう。私は日本が勝てば4倍になるソウルでの日韓戦に「日本の評価はまだこんなものか」と思いながら、100コルナ賭けたが、見事紙屑となった。トルシエ許すまじ。
さて、情報を集めるのなら、地元の新聞か雑誌。大した値段ではないが、ほとんどのページは必要ない上に、買うと記念に持って帰りたくなって荷物になる。そこでプラハ市立図書館へ行く。中心街の観光地にあり、入館に身分証を見せなくてもいい。雑誌は本館に、新聞は別館に閲覧室がある。『FOTBAL』という雑誌が国内では人気のようで、図書館にはバックナンバーも一年分揃っていた(街のスタンドだとドイツの雑誌とか英語圏で出版されたワールドワイドな内容のチェコ語版も見かけた)。
『FOTBAL』の構成は、毎号旬の選手(例えばネドヴェド)のインタビューに注目若手の短いストーリー、代表への注文と有名外国人(例えばクライファート)の転載記事と万国共通の品揃えで、8月号が開幕直前リーグ展望と選手プロフィールというのもまた共通だった。ここで、カトレツの所属が判明。彼は今、ドゥルノヴィツェという田舎町にいるらしく、チームで代表歴があるのも彼だけ。かなり弱そうだ。また、これまでの情報を総合するとプラハにホームを置く1部のクラブはスパルタ、スラヴィア、ボヘミアンズ、そしてジシュコフ。このうち22日の土曜日にプラハのホームで試合をするのは、スパルタとジシュコフ。偶然にもジシュコフの対戦相手はドゥルノヴィチェ。しかもジシュコフは午前で、スパルタは午後から。信じられないくらいうまくいく日程。ちなみにスラヴィアは何故か金曜の夜にアウェイで試合。
別館の新聞閲覧室、地方紙を含めてチェコで発行されている新聞が数カ月分まとめて読むことが出来る。失業してそうなおっさんや暇そうな年金生活おじいさんで溢れかえっている。チェコには『Sport』というタイトルそのまんまのスポーツ新聞があり、1面のロゴから察するに、雑誌『FOTBAL』と発行元は同じらしい。多くの曜日、フットボールとアイスホッケーがトップを分け合い、国内のリーグ戦があった翌月曜日は特別定価となり、2〜4面は試合結果一色となる。
プラハ市内には、今回愛用したスポーツ・バーの他にもう1軒、『ヤーガーのバー』と名乗る店があった(実際は街中至る所で、スポーツ見ながら酒は飲めるのだろうが、あくまで巨大画面と観光客目当てということで)。その名の通りヤーガーが経営に参加している店のようで、入口すぐには彼がピッツバーグで勝ち取ったスタンリーカップ(のイミテーション?)が飾られ、男性用トイレの個室のドアには「68」(ヤーガーの背番号)と「99」(おそらくグレツキの背番号)がペイントしてある。この日、自分が店に入った時は、モータースポーツといつのか不明の相撲を流していた。ヨーロッパに行ったら、『ユーロスポーツ』ががんがんに面白い番組を延々と放送していると思っていたが、案外つまらない穴埋めをやっている時間帯も多い。今や国内で注目の高いイベントは、その国の国営他のテレビ局が制作・中継し、他国のキー局がその映像を買う。あるいはケーブルで直接各国に配信される。薄く広いスポーツ専門局は段々立ち行かなくなっているのだろうか。