パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

ドキュメント72時間2014(年末リクエストベスト9)

「033地方プロレス3日間の旅巡業」

2014/1/10初回放送、25分、撮影:齋藤秀/沙魚川大介、取材:丸山拓也、ディレクター:中村洋三、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「034 260人の巨大シェアハウス」〈第8位〉

2014/1/17初回放送、25分、撮影:小西悠希/原伊知郎、取材:西島昌子、ディレクター:大隅亮、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「035激闘!起業家コンテスト」

2014/1/24初回放送、25分、撮影:寺沼範雄/古川信司、取材:佐藤理幸、ディレクター:丸山拓也、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「036最北のバス停で」〈第2位〉

2014/2/28初回放送、25分、撮影:三津濱直樹/田村通明、取材:清水聡、ディレクター:鈴木亘、制作統括:確田潔/相沢孝義、制作・著作NHK・旭川

「037沖縄眠らない床屋」

2013/3/7初回放送、25分、撮影:佐々木剛/上原覚史、取材:岡本直史、ディレクター:岡田歩、制作統括:佐藤稔彦/相沢孝義、制作・著作NHK・沖縄

「038福島早春のスーパーから」

2014/3/14初回放送、25分、撮影:齊藤秀/渡瀬竜介、取材:森あかり、ディレクター:佐藤理幸、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「039密着街角の写真プリント機」

2014/4/4初回放送、25分、撮影:佐藤努/森信行、取材:森あかり、ディレクター:清水聡、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「040巨大フェリーの人生航路」

2014/4/11初回放送、25分、撮影:鈴木裕高/阪野仁、取材:大隅亮、ディレクター:中村洋三、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「041消費増税!24時間ディスカウントストア」

2014/4/18初回放送、25分、撮影:小西悠希/世宮大輔、取材:佐藤理幸、ディレクター:大隅亮、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「042スカイツリーのふもとで」

2014/4/25初回放送、25分、撮影:北原学/伊東慎治、取材:佐藤理幸、ディレクター:大楠哲平、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「043若者ハローワークの青春」

2014/5/2初回放送、25分、撮影:川田紀一郎、ディレクター:森あかり、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「044上野公園満開の桜の下には」

2014/5/9初回放送、25分、撮影:塚越淳/田名央之、取材:伊藤雄介、ディレクター:清水聡、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「045大都会真夜中の大衆食堂」〈第3位〉

2014/5/23初回放送、25分、撮影:松井美喜夫/梶山俊夫、取材:岡元啓、ディレクター:佐藤理幸、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「046トランクルーム・もうひとつの秘密の部屋」

2014/5/30初回放送、25分、撮影:遠藤美彦/長谷川諭、取材:丸山拓也、ディレクター:中村洋三、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「047恐山死者たちの場所」〈第4位〉

2014/6/6初回放送、25分、撮影:大網康晴/齊藤文彦、取材:森あかり、ディレクター:中島聡、プロデューサー:西島昌子、制作統括:田中廣喜/相沢孝義、制作・著作NHK・青森

「048オン・ザ・ロード国道16号の“幸福論”」〈第9位〉

2014/6/13初回放送、25分、撮影:佐々木寛之/脇屋弘太郎、取材:清水聡、ディレクター:大隅亮、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「049南国の不夜城~24時間超巨大スーパー」

2014/7/4初回放送、25分、撮影:松浦勝一/福留雅人、取材:阿久根栄介、ディレクター:津田温子、プロデューサー:西島昌子、制作統括:石崎博亮/相沢孝義、制作・著作NHK・鹿児島

「050湘南海を見つめる理由」

2014/7/18初回放送、25分、撮影:宮本豊/小林孝子、取材:佐藤理幸、ディレクター:森あかり、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「051どしゃ降りのガソリンスタンドで」〈第6位〉

2014/7/25初回放送、25分、撮影:亀山年弘/田名央之、取材:中村洋三、ディレクター:清水聡、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「052 深夜の釣堀で見る夢は」

2014/8/1初回放送、25分、撮影:梶山俊夫/牧克人、取材:岡元啓、ディレクター:佐藤理幸、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「053 眠らぬ都会の動物病院」〈第7位〉

2014/8/22初回放送、25分、撮影:羽二生賢一/森繁新治郎、取材:石谷岳寛、ディレクター:中村洋三、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「054歌舞伎町ネイルサロン女の楽屋裏」

2014/8/29初回放送、25分、撮影:長谷川充/入江領、取材:森あかり、ディレクター:大隅亮、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「055夏・原発に一番近い駅」

2014/9/5初回放送、25分、撮影:百崎満晴/小嶋一行、取材:中澤陽子、ディレクター:大久保圭祐、プロデューサー:西島昌子、制作統括:山岸秀樹/相沢孝義、制作・著作NHK・仙台

「056原爆ドームの見える岸辺で」

2014/9/12初回放送、25分、撮影:鳴海哲/糸数康宏、取材:中村洋三、ディレクター:森田哲平、プロデューサー:西島昌子、制作統括:柄氏和也/相沢孝義、制作・著作NHK・広島

「057大病院の小さなコンビニ」〈第1位〉

2014/9/19初回放送、25分、撮影:阪野仁/金子博志、取材:中島聡、ディレクター:佐藤理幸、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、

「058羽田空港夏から秋へ」〈第5位〉

2014/10/3初回放送、25分、撮影:三澤寿光/上田裕照、取材:横田大樹、ディレクター:清水聡、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「059ディープ浅草真夜中の喫茶店」

2014/10/10初回放送、25分、撮影:藤田岳夫/小林充輝、取材:森あかり、ディレクター:中村洋三、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「060上野アメ横多国籍地下マーケット」

2014/10/17初回放送、25分、撮影:田名央之/塚越淳、取材:勝目卓、ディレクター:中島聡、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「061何を打つのか?雑居ビルのボクシングジム」

2014/10/24初回放送、25分、撮影:三津濱直樹/中西紀雄、取材:岡元啓、ディレクター:横田大樹、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「062高円寺・何を求めて銭湯へ」

2014/10/31初回放送、25分、撮影:梶山俊夫/川田紀一郎、取材:佐藤理幸、ディレクター:丸山拓也、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「063山手線一周徒歩の旅」

2014/11/7初回放送、25分、撮影:三澤寿光/上田裕照、取材:橋本淳志、ディレクター:佐藤理幸、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

「064木更津湾岸大盛り弁当屋ブルース」

2014/11/21初回放送、25分、撮影:永井隆光/小口修一、取材:中島聡、ディレクター:安住洋之、プロデューサー:西島昌子、制作統括:行武哲三/相沢孝義、制作・著作NHK・千葉

「065さすらいのシャケバイ

2014/11/28初回放送、25分、撮影:仲野良/渡瀬竜介、取材:横田大樹、ディレクター:小田貴志、プロデューサー:西島昌子、制作統括:高橋司/相沢孝義、制作・著作NHK・釧路

「066大阪ミナミ真夜中のアングラ長屋」

2014/12/12初回放送、25分、撮影:小迫裕之/松本剛、取材:小幡桂一、ディレクター:橋本真帆、プロデューサー:西島昌子、制作統括:伊藤雄介/相沢孝義、制作・著作NHK・大阪

「067新宿二丁目深夜のおふくろの味」

2014/12/19初回放送、撮影:鈴木和欣/小川清市、取材:丸山拓也、ディレクター:石谷岳寛、プロデューサー:西島昌子、制作統括:相沢孝義、制作・著作NHK

☆☆☆

テレビ暦的な考えだと4~3月が一区切り(番組枠とか人事異動とか)だと思うので、12月で〆るのは違和感あるけど、そういう年末企画だから仕方ない。

昼班と夜班に分担して取材しているわけで、取材/ディレクターの肩書は名目上だけで実際はコーエン兄弟ウォシャウスキー姉弟のような関係と推測されるが、片一方が最終責任者と推測する。

ほぼ番組専属のディレクター制作、地方局が見様見真似で制作、専属ディレクター×地方局制作、の3パターンがある。

ベスト9の取材&ディレクター数を数えると、複数受賞が清水聡4、佐藤理幸2、大隅亮2、中村洋三2、中島聡2。専属ディレクターの制作本数とほぼ比例した感じ。強烈な作家性とか作風の違いはほぼ見られないし、自分も見ていて好みのディレクターは今のところいない。

結局のところ、テレビドキュメンタリーは魅力的な人物を見つける、あるいは人物の魅力を引き出すのが成功の条件9割だといえるだろう。

ディープ浅草だとか新宿2丁目だとか、初めから変人を期待しているのが見え見えなのは番組の趣旨としてちょっと違うだろう。

043、撮影&ディレクターが各1名しかメモってなくて、書き逃したかなと思ったが、ハロワの取材なら日中だけの可能性もあり得る。内容は全然覚えていないが、それは72時間として成立していたのか?

ドキュメント72時間』だけじゃなく『地方発ドキュメンタリー』なんかも含めてだけど、このところNHK札幌NHK釧路辺りが頑張っている。勢いを感じる。

本田由紀『社会を結びなおす』

 

社会を結びなおす――教育・仕事・家族の連携へ (岩波ブックレット)
 

本田先生の肩書「教育社会学者」というのは、その活動からして“教育”に力点があると思っていたが、p.9の表1「社会学者による戦後日本の主な時代区分」をみると、ああ社会学者だったんだなと思った。当然のことながら統計やデータを読むプロだし、経済学に理解があろうに、それでもやはりリフレ派は嫌いなんだろうか。本書でも、本田先生が唱える新たな社会モデルへ移行するに際しての財源の問題に触れ、一つは「富裕な者から困窮する者に対して資源を分配」、もう一つは新たな社会モデルの方が「結局は経済的な活力やその結果としての税収が得られやすい」と書き、リフレ派的な経済成長については賛否を明らかにしていない。明らかにしていないが、広井良典『定常型社会』を好意的に引いているし、内心は「定常型社会」派と、「持続的な成長」派の対立において前者を支持しているのだろう。ただ、公に表明すると教えたがりのうざいリフレオヤジが寄ってくるので、そこはわざと曖昧にしている可能性がある。

というのが前振りで、39歳独身底辺介護労働者の立場で読めば、新たな社会モデルに何の異論もないし御説ごもっともなんだけど、“現在の社会状況の閉塞について、多くの人々が「このままではだめだ」という感覚を生々しく抱く度合いが高まっているように思える”(p.52)―ここは楽観的過ぎるような気がする。私の周囲の市井の人々は景気が悪いとか給料が安いとかは言っても、社会システムへの閉塞感は感じていない気がする。

政治家や官僚や有識者が集まって景気を良くしたり給料を上げたりするための法制度の改正は出来る。それが出来れば、市井の人々はまあまあ納得する。でも、私や本田先生が望んでいるのは、その手の豊かさを取り戻すための法制度弄りじゃなくて、規範をひっくり返す事なのではないの? しかし既存の規範を壊すのってどうやればいいのだろう。一般に政治家の公約だと「女性の働きやすい社会の実現」「非正規雇用の廃止」とか具体的な方が称賛されるのだろうけど、何か違う。もっと「隣人に対してギスギスすんなよ」とか「常識の押し付け合いを止めようよ」とかそういうふわふわした言葉が聞きたいんよね。

話は逸れるけど、ちょっと思ったのが、オバマって、このままいくと無能な大統領として歴史に名を刻みそうじゃん。シリアの人を見捨て、でもパキスタンでは無人機で市民を殺し、国内の分断は解消出来ず、格差は拡大し、演説だけだったなと。しかし、人権関係の格調高い演説って、目先の豊かさには繋がらないけど、それを聞いた10代20代の人が30年後とかに世の中の規範を変えてくれる引き金にはなりそうな気がする。でもそれって現役の政治家の仕事なのか…なところで悩む。

本書のレビューを書いた有名なブログ(http://d.hatena.ne.jp/yositeru/20140808/p1)のはてぶコメントに「パッチもいいけどハックもね」ていうのがあって、なかなか言い得て妙だなと。貧困や格差を是正する法制度改正(パッチ)もいいけど規範を乗っ取ろうよ(ハック)と。回らなくなったシステムにペタペタ何か貼ったり油差しても仕方ないじゃんと。政府の審議会に出席できるようなお偉いさんである本田先生には「経済界に利をもたらしますよ~」「経済成長に繋がりますよ~」と既得権益者を騙しながら、規範をハックする手を考えてくださいよと。「教育」側から一手させば、ドミノのように「家族」「仕事」の規範もパタパタと倒せるようなハックを。私は私で底辺から、妊娠して夜勤も入浴介助も出来なくなって産休とって育休とっている20代女性に対して「同じ給料貰ってるのに同じ仕事をしないなんて非常識よ」とか言ってる50代60代女性に「今はそういうのがちゃんと権利として守られているんですよ。自分たちの頃は無くて苦労したからといって、下に下に足を引っ張るのは止めましょうよ」と啓蒙する仕事をしますから。

しかしそう考えてくると、本田先生が以前から若者に言ってた専門性を身につけさせることに加え、最近は労働法を学ばせて企業側の不法や不条理に対して戦える知識とハートを身につけさせようとしているのも、本田先生なりのハックだったのかと腑に落ちた。ぶっちゃけ2006年頃とは書いている事が少し変わってきているよね。「抵抗」の方を強調するようになった。

高校生以上の仕事に対する意義のある教育を考える際に、私は2つの重要な側面があることを忘れてはいけないと考えています。一つは、仕事への「適応」です。適応とは、仕事にかかわる知識や技能を身につけ、仕事の現場で求められているような柔軟な振る舞いができることですね。しかしもう一つ大切なことは、仕事への「抵抗」です。職場にうまく適応する方向だけでなく、間違ったことを「それは違う」と発言できる若者になってほしい。言い換えれば、労働法や労働者の権利に関する知識と、それを実践する方法や建設的批判とノウハウを身につけてほしいということです。

http://www.wakuwaku-catch.com/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E6%95%99%E8%82%B2/%E3%81%8B%E3%81%AA%E3%81%8C%E3%82%8F%E4%BA%BA%E3%81%A5%E3%81%8F%E3%82%8A%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%9C2013/%E6%9C%AC%E7%94%B0%E7%94%B1%E7%B4%80%E5%85%88%E7%94%9F-%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%A4%A7%E5%AD%A6/

「教育」からのドミノによって「仕事」を倒す実践ハックだ。と同時に、本田先生が団塊ジュニア世代の特に男性に対して冷たいのも納得。相対的には恵まれていたはずの団塊ジュニア男性が何も身につかないまま40歳なっちゃったら、これはもう手遅れねと。

あ、あの女の目、養豚場のブタでもみるかのように冷たい目だ。冷徹な目だ。「かわいそうだけどあしたの朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね」って感じの!

byジョセフ・ジョースター

うん、確かに本田先生はリサリサ先生感がある。さて、本田先生のハックへの努力に対する我ら底辺団塊ジュニア男性のアンサーは「我々の事はもう見捨てていいですから、未来ある若者を助けてあげて下さい!」かな、やっぱり。

 

(参考)

派遣労働をめぐる教育社会学者と経済学者のやりとり

http://togetter.com/li/739514

 

横手慎二『スターリン』

 

スターリン - 「非道の独裁者」の実像 (中公新書)

スターリン - 「非道の独裁者」の実像 (中公新書)

 

 感想を書こうと思ったけど、紙屋高雪氏の書評http://d.hatena.ne.jp/kamiyakenkyujo/20140925/1411613748 が私の考えていた方向性(ベンチャー起業家スターリン)で且つはるかに内容があるので、まずはこっちを読んでもらえれば事足りる。そこに無さそうな事を脈絡もなく書こう。

副題に「「非道の独裁者」の実像」とあるように、著者がしたいのは通説を疑う事。なので、そもそも(私のように)あまり通説を知らないと読んでもあまりインパクトはない。通説とは「スターリンソ連の最高指導者として数多の非人道的な行いをしたのは、彼が生まれつき冷酷な人間だからだ。平凡な才能のくせに猜疑心や劣等感が強いという彼個人のパーソナリティによるものだ」みたいな事。著者はこれを二重に否定する。(1)彼の前半生を追って、生まれつき冷酷でもなければ、頭が悪かったわけでもない。(2)最高指導者になってから行った非人道的行為を細かくみれば、時代の要請だったり彼じゃなくても同じ事になっていただろう事が多い。

(2)は一般的によく知られた事件や政策を細かく吟味していく作業だから、正直あまり面白くない。(1)はよく知らない若き革命家の冒険譚だから読み物として面白い。通説を覆そうとする著者の試みが成功しているかどうかは、まあ通説をよく知らないから正直分からない。

スターリンがどんな奴として描かれているか、というか私にはどんな風に読めたか。具体的な問題や困難が発生するとそれを解決するために抜群の処理能力をみせるけど、権力を手にしてフリーハンドで政策を描けるシーンになると大間違いをやらかす。って書くと、豊臣秀吉ぽいな。

細かい事。

p.57に載っている若き日の肖像写真をみると「ああ、ツベイバやカハ・カラーゼのようなグルジア顔だな」って思うんだけど、偉くなってからの肖像をみるとグルジアぽさがあまり感じられない。流刑生活で顔つきが変わったとか、モスクワ暮らしが顔つきを変えたとかじゃなくて、単に偉くなってからの写真には何らかの修整を加えたものしか公式に出回ってないだけかもしれない。

昭和初期に駐日全権代表(大使)として活躍するトロヤノフスキー

p.88

知らない人その1。ロシア語版Wikipediaはあった。Трояновский, Александр Антонович。後はドイツ語版しかない。寺山恭輔「駐日ソ連全権代表トロヤノフスキーと1932年の日ソ関係」という論文にはウィーンのエピソードが書いてあった。

内部人民委員部極東地方本部長リュシコフ…満洲国に逃亡した。…その後リュシコフは、1945年に非業の死を遂げるまで日本の対ソ情報戦に関与した。

p.209

知らない人その2。ゲンリフ・リュシコフは日本語版Wikipediaがあった。それを読むと、満洲国で行方不明になった後の事はよく分かっていないみたいだが「非業の死を遂げる」と言い切る新史料が見つかったのだろうか。

当時ソ連随一の経済学者とみなされていたユーゲン・ヴァルガ(1903~57。ハンガリー人の共産主義者)

p.250

知らない人その3。日本語版Wikipediaだとハンガリー語由来のイェネー・ヴァルガ。マルクス主義経済学翻訳業界での通り名はロシア語読みのエヴゲニー・ヴァルガみたい。確かに英語版WikipediaをみるとEugen Vargaなんだけど、この場合英語読みを採用したのはよく分からない。

蛇足。

ロシア革命史に出てくるなかで、レーニン、スターリントロツキーのようなインパクトあるメンバーと比較して、ジノビエフカーメネフブハーリンの陰の薄さというか雑魚キャラ感はなんなんだろうと思う。本当に雑魚なら仕方ないけど、一応ソ連や党のナンバー2とかナンバー3とかだった人じゃん。と思ったところで、でもこの人達、革命前は精々100人とか500人のレベルで集まる非合法党大会で議論したりアジ文練ったりした事があるだけで、何万人の官僚組織とか何千万人の国民を率いた経験なんてないのに、いきなり帝政システムの一番上(皇帝一家)だけ取り換えて、トップに座ったからして、本当に雑魚メンだったような気がしてきた。

というかね、何万何十万の官僚・軍隊を相手に数百人単位で革命運動していた頃、「帝政を倒すぞ!」なんてのはどのくらい本気で信じていたのかなあと。皇帝1人くらいは暗殺出来ても帝政システム自体は揺らぎもしないじゃん。うーん、でも「よーし、帝政を倒して社会主義革命に向けて頑張るぞ!」と「どうせ帝政なんて倒せっこないよ」は矛盾するようだけど、1人の人間のなかで両立するのも理解できる。無理なのは分かっているけど、それはそれとして全力を出して努力は怠らない感じ。

どうせ倒れっこないと思っていたものを倒す事が出来てしまって、「あれ?これから俺達は何千万人の命を預かる事になっちゃったの?えー!」ってなったそれなりに頭の良い凡人だったろうジノビエフカーメネフの心情に寄り添いながら、この辺りの関係書籍をまた読み進めていきたい。他を読んだらまた印象も変わるだろうし。