パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

ヴェルディ対サンフレッチェ

2002/8/10
広島の試合を観に行くのは、トムソン時代の最終戦だから2年前の秋。ヴァレリの時は見ていない。あれからメンバーも入れ替わった。今日の注目は最近定着し始めて21才以下代表にも選ばれた松下の初見。それからヴェルディの監督は飾りで、エジムンドが実際はメンバーを決めている(気に入っている若手や飲みに行く仲間たち)という噂が本当か確かめるのも目的の一つ。
と思ったが、試合が始まるとエジムンドタンに釘付け。2トップ(平本・マルキーニョス)の後ろが定位置だが、とにかく周りの人間がエジムンドにボールを預ける。もらったボールを完璧にコントロールして2秒くらいはキープ出来、それから周りの若いのをスペースに走らせる。エジムンドには守備的ハーフの沢田が付いているはずなんだが、エジムンドはマークを離してフリーになるような動きもあまりしない。しなくてもボールを取られない。というか、沢田はエジムンドだけをマークし続ければ良いのに、妙に底の動きを意識しているのか、スペースを埋めにいったり、エジムンドをフリーにする自殺行為を続けていた。お前がスペース埋めたってボールがエジムンドに渡ったら、結局次のスペースを使われるんだから、大人しくエジムンドが自由にプレー出来ないように付いてやがれ!と思った。で、エジムンドは自分の出したサイドへのパスがつながって左の相馬や右の田中が良いクロスをあげそうな時だけ、全力でゴール前に走り込み、ストライカーと化す。自分の労力が全て有効に使いたいから、走り込んだ時に良いクロスがあがらないと、猛烈に怒っている。自分がフリーで走り込んでいるのに、バカがふかしたシュートなんて打とうものなら、大変な怒りようだった。
エジムンドは5分もボールが回ってこないと、どんどん下がる。センターバックの前まで戻ってボールを左右に散らす、いわゆるガスコインやハジと同じような動きをしていた。ディフェンスをしないように思われていたが、それは間違いで無駄なディフェンスをしないのが正しい。広島のボールホルダーがグズだと見抜くと、単独でボール奪取に励んでいた(1、2度だが)。沢田とか松下とかボール扱いが下手そうな奴は明らかに狙われていた。また、駒野と森崎兄との間でのパス交換も狙っていた。漠然とボール回しているのをかっさらい、そうした高目の位置で奪ったら、フォワード2人を走らせて一気に手薄なゴール前へカウンターというのがエジムンド様の頭の中にあって、だから石塚とか永井秀樹は邪魔なんだろう。逆に前半の半ばにビロングがボール持っている所に突っ掛ける場面があったが、相手のボール・コントロールが巧みなことを察すると、二度と無駄に距離を詰めたりしていなかった。
エジムンドは無駄走りをしてくれないわけで、例えばエジムンドが右サイドハーフラインあたりでボールを持つ。右ウィング(田中?)が前のスペースに飛び出す。エジムンドは一旦ボールを中に送り、自分が少し前に移動した処でもう一度もらい、前にいる田中に出し、最後は自分がゴール前に走り込んでいる処までイメージしている。ところが、中央の米山だかが沢田のプレスにボールを失いやがる。今度は広島の対面(左サイドバック)服部が前を向いてスペースへ飛び出す。ところが、エジムンド様はこれについていかない。真ん中でボールを失って俺様のプランをぶち壊したのは米山のアホ野郎なんだから、自分のケツくらい自分で拭け、と言わんばかり。フリーの服部にボールが渡り、深く入り込んでからセンタリング、なかで久保がヘッド! これで失点すれば、明らかにエジムンドのサボりが戦犯ものだろうが、個人的には、そこで守備に戻らないエジムンドであって貰いたい。多分、そういう全員で守備して全員で攻撃するようなことが出来ないと現代サッカーでは使ってもらえないし、ブラジル代表から声がかからないのも道理なわけだが、自分がプレス掛けられて失ったボールでない限りは、戻って守備をせず、「お前ら、ボール奪って俺様によこせ!」というのも許されるほどの才能だと思う。まあ、どんなにエジムンド様の天才によってビューティフルな得点を挙げても、下らないパスミスとサボりから失点すれば同じなわけで、観客は喜んでも、勝てないだろうとは思うが。
そんなこんなで前半はエジムンド・ショー。松下は全然見せ場がなかった。それで、後半は松下に代えて森崎弟を投入。彼が左MFに入り、兄が一つ下がる。沢田はより右サイド寄りの傾向。フォワードも大木に代えて高橋。
後半、エジムンドは2トップと同じ高さまで上がり、ストライカーに変身。中盤はとばして俺様に放り込め作戦か。ところが、エジムンドにマッチ・アップしたのが、生まれ変わったビロング。彼は以前テレビで見た腰高にダルダルとディフェンスして一発で抜かれるあのビロングではなかった。自分を連れてきたガジエフ監督がクビになって危機感が出てきたのか、世界的なプレーヤーを目の前にして本気になったのか、次の移籍先を探すためのアピールなのか、とにかくエジムンドの突破を完封した。伊達ではなく、ゼロ封だった。もつれて、ビロング側のファール→フリーキックになった微妙な判定はあったが、ほとんどはファールのないボールへのタックルで、しかも奪った後、再度敵に渡るでもなく、そのままボールをキープし、前へ運ぶ鮮やかなプレーっぷりだった。元々、カメルーン選手特有の、無理な体勢からでもボールを失わない圧倒的なテクニックを持っているが故にポジションの修正を細かくしないとか、身体能力ありすぎてノンビリ構えているとか、本気でやれば凄いのだろうが、明らかにやる気なしだっただけで、伊達にカメルーン代表に選ばれているわけではなかった。と同時に、エジムンドのストライカーとしてのピークが終わっているというか、プレッシャーのない中盤でなら、まだまだ通用する超絶テクニックと戦術眼も、最終局面での1対1勝負では流石に峠を越しているのかもしれない。どちらにしても、前半観て「東京に住んでいたら、ヴェルディのホームゲームは全部見に来ても損はない」と思ったことは否定しないし、ピクシー持ってた頃の名古屋とか、ジョルジーニョ居た頃の鹿島とかの人たちも、そんな気分だったのだろうな、と思ったりもする。
90分間が終了した所で0対0。次の約束も有ったので延長戦を見ずに帰った。80分前に久保、後半終了前にはエジムンドが下がったので充分だった。おそらく試合を伝えるメディアは「真夏の夜に繰り広げられる凡戦、ゴール前に迫力なし、暑さで運動量なし、スタジアムに眠気を誘う」と書くだろう。それは間違っていない。しかしテレビで見るスピード感と、ピッチ全体を見渡せるスタンド上部からのスピード感は比べられないし、せいぜい年に1回くらいしか生で見ない人間が、見たこともない『磐田対横浜M』なんかの試合と比較してどうこう言うつもりはない。個人的にはスタンドでロマンツェフ並みに爆笑しながら「うわー、ビロングが本気!、ビロングが本気!」(マジと書いてホンキと読む)くらい楽しいだった。
追伸:久保に代わって入った茂木は1プレーだけ関与した。ゴール正面のペナルティ枠外で足元に受けて、右のスペースに出して、センタリングを中央で受けていた。受ける時の体の入れ方はちゃんとしていたし、出したパスの速度もその日のなかでは誰よりも速かった。まあ、入ったばかりで疲れた周りの選手よりは動きが良くて当然だが、いかにもユース年代から世界標準で訓練されてきた能力高い感じはした。