パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

TVドキュメンタリー・ウォッチング終了のお知らせ

そもそもお前の言う「TVドキュメンタリー・ウォッチング」ってなんだという話だけど、要するに2012年頃からNHKで放送していた『ETVスペシャル』『地方発ドキュメンタリー』『NEXT』『BS1スペシャル』『明日へ』辺りのドキュメンタリーをほぼ全て録画してスタッフクレジットをメモする作業をしていましたが、それを年度末の2019年3月31日で止めますという話。

ゼロ年代の間は「インターネットは徹頭徹尾何の得にもならない好きな事をやるところだから、絶対に義務感から毎週チェックしたりはしないぞ。興味のあるテーマのドキュメンタリーしか見ないし語らないぞ」と心に誓っていたわけだが、2011年2月にゼロ年代のドキュメンタリーについてまとめた記事を書いた後、そこでいくつかの提案をしたこともあって多少なりとも義務感もわき、網羅性にチャレンジしてみることにした。

これまでメモったまま放置してきたのは反省している。リアルタイムでちゃんと表に出していけば誰かの参照元になれたかもしれないのに、サボってしまった。「誰も話題にしてないけど、このディレクターのこの作品、すごく良いよ」みたいな話をちゃんとリアルタイムでやるべきだったのだろう。まあ自分のパソコンの中で眠らせておいても仕方ないので、今更だけど順次ネットに上げていきたい。これは本当に申し訳なかった。

そんでまあ「何で止めるの?」ということをつらつらと書いてみよう。

前述したように、2011年2月にゼロ年代のまとめとしてこんな記事を書いた。

http://palop13a.hatenablog.com/entry/20110213/p1

上の記事で望みとして上げたこと。放送前にスタッフクレジットをウェブに上げて、視聴するか判断する材料を出してくれよ。放送後は視聴者とティーチインとかやってくれよ。ついでに番組制作で使用した参考文献なんかもクレジットするかウェブに載せてくれよ。その辺り。そんなに大した要求をしたつもりはなかったんだけどね。

まあ、全然実現しなかったね。業界内では放送前にメーリングリストみたいなものが出回っている風なツイートは見かけたりしたけど、一般向けに情報が出ている感じもなかったよね。それで「ドキュメンタリーは見てもらえない!」とかよく言えたもんよね。

そういえば以前にも書いたかもしれないが、ツイッターでTVドキュメンタリーの感想を書いたら「いいね」がつくので、つけた人の本拠地を見に行ったらどうやらそのドキュメンタリーの制作者なんよね、匿名だけど。それで放送前には相互フォローしている友人なんかには「今度放送する番組見てね」とかツイートしているんだけど、でも匿名だからいろいろぼやかして書いてて、宣伝にはなってない、みたいな。ネットに面倒ごとに巻き込まれたくない気持ちは分かるけど、でもまあ何かモヤモヤするよね。一般人に自分の番組を見て欲しいの、欲しくないの、どっちなの。

NHKディレクターは視聴者と研究者のハブになれ」みたいなことも書いたけど、逆に研究者やジャーナリストに「アイデアや取材協力者を盗むな」と告発された山口放送「奥底の悲しみ」「記憶の澱」や『ETV特集』「告発〜満州開拓村の女たち」が高い評価を受けて賞とか獲っちゃう業界だもんね。ドキュメンタリー業界は先行研究への敬意とか全然払う気もないんだなと痛感しちゃった。個人的には、文字表現と映像表現は全然違うから、文字の後追いで取材して映像に残すことも立派な創作だと思っているし、告発者の方々とは立場を同じにはしてないんだけど、それにしても番組の最後に参考文献1行上げるだけでも全然違うと思うんだけど、しないよね、やらないよね、できないよね。俺は歴史に関しては素人な映像作家の歴史観なんか知りたくないんだよ。「この歴史観歴史学会で主流の学説です。○○史の第一人者である××先生もこう書いてます」と残しておくことは、ディレクターの身を守ることにもなるんだよ、みたいなことも書いてきたけど、まあ何の意味もなかったね。やっぱ映像ディレクター志望者って、ハブじゃなくてクリエイターになりたい人達の集まりなんだろうね。当たり前か。

ゼロ年代から「ドキュメンタリーの内容ではなくスタイルを論じたい」という目標は掲げていたんだけれど、2011年以降は政治の季節過ぎてなんかやりづらいよね。ネット上での敵味方思考が強過ぎるというか。「一生懸命取材して頑張っているのは分かるけど、ドキュメンタリーとしての出来はあまり良くないよね」みたいなことを言うと、すぐシニシズム野郎ニヒリズム野郎とか自称中立という非難がきそうな雰囲気の昨今よね。内容についても白黒言わないと許してもらえない感じ。

震災関連のドキュメンタリーについて触れておこう。ゼロ年代のマイルールとして、基本的にはドキュメンタリーは録画保存しないぞという方針の人間だが、震災関連については2011年5月頃に「エンドクレジットがあるNHKドキュメンタリーはとりあえず軒並み録画して保存する」という例外規定を作った。ちゃんと全部見て、各地方局単位、個人ディレクター単位で素晴らしい仕事を評価したいと思ったので。要するに3年4年をまたいで「あの番組とこの番組、スゴイ出来が良いと思ったら同じディレクターじゃん」みたいなことがしたかった。けど、全然取り組めてない。これは本当に申し訳ない。NHKでは震災ドキュメンタリーを『明日へ』枠でずっと放送していたけど、熊本地震の発生辺りから東北地方にこだわらず且つ当時の証言集めにこだわらずといった感じになり、2018年は内容を見た上で保存もしなくなった。年度末でメモ終了する理由の一部には、もう震災関連の好TVドキュメンタリーは生まれないだろうという見切りもある(民放で毎年定点観測ドキュメンタリーを頑張って制作しているのは知っていますが、見ていません。ごめんなさい)。

NHK地方局制作のドキュメンタリーについて触れておこう。『地方発ドキュメンタリー』『目撃!にっぽん』辺りを毎週チェックしていると、番組を作っている地方局が偏っていることに気づいた。そしてその地方局にはかつて中央でディレクターとして活躍した人が管理職(制作統括)として赴任していることにも気づいた。たとえば、大阪の三村忠史/佐藤網人とか名古屋の板垣淑子とか福島の宮本康宏とか沖縄の松木秀文とか札幌の玉村徹とか広島の高倉基也とか。夕方のローカルニュース用に5〜6分のミニリポートを制作する若手を見て「おい、もう少し追加取材したら30分くらいのドキュメンタリーになるテーマじゃないか。東京に企画書出してみろ」とかつてのスタープレーヤーが声を掛ける文化がある地方局とそうでない地方局とでは若手の経験値格差がものすごいことになるのではないか。

全然内容に興味が持てなくて、ぼーっとながら見しながら最後にエンドクレジットだけメモした番組がなかったとは言わない。でも全然内容に興味が持てそうもないタイトルだなと思いつつ見始めたら「うわー、作品としてめっちゃ出来が良いやん。面白いやん」みたいな番組に出会えると、全録してて良かったな、ウォッチングも悪くないな、という気持ちになれた。でももうそれもおしまい。8年ほど頑張った。人生は有限。

余談だが、こういうエンドロールを作っている奴は、内容がどんなに良くてもマイナス3000点したくなるよね。まあ今どきの平たいデジタルテレビだと鮮明に表示されているのかもしれないけど、まだブラウン管で見ている貧乏人もいるんですよ。ちゃんとしてください。

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ああ、昔は良かった。

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