パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『地球特派員2008』その他

2008/11/3にNHK総合で放送された『テレビの可能性〜吉田直哉が残したもの』を見る。一番面白かったのが1993年に放送された「ドキュメンタリーとは何か〜立花隆の連続討論」(http://archives.nhk.or.jp/chronicle/B10001200999303220130097/)の再録シーンだったことは衆目の一致する所だが、当時のNHKがムスタン王国の件で叩かれまくっていたことを知らないと面白くないかもしれない。
ヒストリーチャンネルで「偵察写真が語る第二次世界大戦 ペリリュー」を途中から見る。日本軍にとっての地獄は米軍にとっても地獄だったという。割と世間的には「日本は圧倒的に物量で優る米国と戦争して馬鹿だ。米軍は楽勝で本土まで迫っているじゃん」みたいな誤解があるような気がする。長期的な戦争遂行能力と単発的な戦闘能力はイコールではないし、どこの国の司令官も判断を間違うし、どこの国にも無能はいる。見終わった後、ウィキペディアの「ペリリューの戦い」の項を読んで、NHKの証言番組に生き残り34人中6人もが出ていたのは戦友会の存在が大きかったのかと推測する。
2008/10/13付『BS特集』「ヒロシマナガサキ」(監督:スティーヴン・オカザキ、撮影:川崎尚文/一之瀬正史/田宮健彦 他、〔日本語版〕制作統括:浜野高宏)を見る。原題の「白い光、黒い雨」の方が詩的で良いタイトルだと個人的には思う。

BS1『地球特派員2008』「食料を確保せよ!〜イギリス・持続可能な農業をめざして」
2008/10/18初回放送、50分、特派員:江川紹子、スタジオゲスト:金子勝/柘植徳雄/武本俊彦、撮影:黒崎智雄、コーディネーター:谷口華子、取材:泰嶺、ディレクター:原田親、制作:堅達京子/田中孔一、制作:NHKエンタープライズ、制作協力:スピリット・プロジェクト、制作・著作:NHK
イギリス式補助金の良い所ばかりでなく、補助金を受けられない小規模家族経営の悲哀なんかも取材していてバランスがとれていた。
EUの農業政策といえば、いつもポーランドポルトガルのような輸出したがり国とフランスのような自国保護したがり国が揉めている印象なのだが、「域内は当然自由貿易だよね」と「自国の農業は大切にしなきゃね」の間にどういう思想があるのか。リアルポリティクスとしての農業政策ももちろん大切だけど、その背後にある理念先行型EU人の自尊心を満足させる思想/哲学/屁理屈を聞いてみたかった。その意味で「イギリスやEUの農業政策を長年研究」しているという柘植氏の話をもっと聞いてみたかったのだが、金子氏がいちいち出しゃばってうるさいったらありゃしない。
実際には(いわゆる「健康の為なら死んでも良いぜ」的な)「公正なルールを遵守するためなら、自国の産業が滅んでも良いぜ」なんて考える馬鹿な国はないはずだが、どうも日本のマスメディアは「公正さや誠実さを全面に出して日本がリーダーシップをとれば、アジア諸国或いは東アジア域内の皆さんは貿易協定を遵守してくれるよ」みたいな事を言っている印象があるので、リアルポリティクスとしての農業政策の説明から始めないといけないのも仕方ない面はある。

BS1『地球特派員2008』「悪夢はいつまで続くのか〜世界金融危機 アメリカからの報告」
2008/11/15初回放送、50分、特派員:伊藤洋一、スタジオゲスト:寺島実郎森永卓郎、撮影:小口修一、コーディネーター:本山竜二、リサーチャー:早崎宏治、ディレクター:増田浩、制作:堅達京子/皆木弘康、制作:NHK情報ネットワーク、制作協力:ウォーク、制作・著作:NHK
森永氏の

アメリカがもしリーマン・ブラザーズを破綻させなければ、もう少し金融資本主義を延命させることができたとは思います。しかしそれは結果的に、信用バブルが崩壊するときの谷を深くするだけで、むしろ、この時期に壊れてよかったのではないかと思います。確かに金融危機はたいへん深刻な事態ですが、もしかして、この危機を先送りにしていたら、かつての世界恐慌と同じレベルのショックが襲ってきたのではないかと思います。(公式サイトより)

「壊れてよかった」というのは、ちょっとやばい清算主義(使い方が合っているかどうかは分からない)の匂いがしないでもない。破綻させないで、ソフトランディングして、恐慌が来ない方が普通に良いと思うのだが。