パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

団塊ジュニアは「マユ族」???

古い新聞の切り抜きを整理中に、面白い記事を見つけたので紹介したい。15年も前の記事だし、無署名記事だし、それほど長くないので、全文引用を許していただきたい。

共通するコクーン現象〜「マユ族」の別名も登場
“オタク”が一番 団塊ジュニア
自分に合った快適空間に閉じこもろうとする“コクーン(マユ)現象”が、団塊ジュニアと呼ばれる19〜22歳の世代に共通することから、この世代を「マユ族」と名付けては、という意見も出始めた。この現象は早くから世代を問わず指摘されていたが、一世代全体の特徴としてとらえたのがユニーク。
生活者の行動分析を手がけている調査・企画会社ジャパンライフデザインシステムズ(東京都目黒区)の「ニューティーンズ・ラボ」では、四年前からこの世代に注目、東京・渋谷と自由が丘で「男女百人アンケート調査」を繰り返し実施している。
生まれた時から大量に〈情報〉というエサと、〈自分の部屋〉という巣を与えられて成長。いまは、自己投資という糸を吐きながら、自らのマユを紡ぎつつある――。こんなイメージから、同社のチーフディレクター大川雅生さんは、「マユ族」なるネーミングを思いついたと言う。
同社のアンケートでは、とにかく安心・安全志向が強いことが分かった。「あなたが他人から言われて最も傷つく言葉」は、「つまらない人」が56%。だが、「変わり者」と言われるのも嫌で、「ほどよい程度に面白くて、しかも個性的」なのが理想的らしい。
「十年後最も重視していること」は、「幸せな家庭」が一番多くて33%。「つぶれてもいい範囲でベンチャー企業を起こす。野心はあるが、失敗した時のことも考えておく」(22歳の社会人男性)というように、自分の人生に保険をかけることも忘れない。
生活の範囲も、わが家へ、自分の部屋へとどんどん縮みつつある。最近の自由時間の過ごし方を尋ねたところ、「家でのんびり」が24%、「公園や川原で遊ぶ」が18%。
「部屋のインテリアに凝っている。自分でカーテンも作りました」(20歳の社会人女性)。「やっぱり“オタク”が一番。ディスコも疲れる。家が一番だと悟ったね」(大学一年、男性)
「彼らは、実質重視、シンプルで自然体が一番といった、今の時代をリードしている。マユは柔軟。時代の気分を察知して、いかようにも変わっていける」と大川さんはみる。
(『読売新聞』1993/6/2付)

バブルの時代にクルマとか高級ホテルとかでステータスを競い、そのための出費を惜しまなかったらしい(←あくまで伝聞のイメージ)前の世代との比較論で、団塊ジュニアは「家でのんびり」志向であるという分析なのだろう。個人的には、ある程度金があった時期でも金を使わずに「公園や川原で遊ぶ」とか、「部屋のインテリアに凝っている」とか「ほどよい程度に面白くて、しかも個性的」とか「つぶれてもいい範囲でベンチャー企業を起こす」とかよーく分かる。ただ「十年後最も重視していること」が「幸せな家庭」というのは意外だし、自分には当てはまらない。それから89年の事件からそれほど経過していない93年時点で、既に“オタク”という用語が肯定的な自己像として使われているのは意外だった。
当時おそらく自分にすごく該当すると思ったからこの記事を切り抜いたのだろうが、だからといって自分の世代全体に当てはまるかどうかは分からない。もう少し言うと、当てはまらない中には、93年当時は確かにマユ族だったけど今は転向した人と、当時からマユ族じゃなかった人がいるはず。89〜92年くらいのフワフワした空気を満喫して育ち、93〜97年くらいに時代の空気が変わったのに相変わらずフワフワした気分を引きずり、気がついたらにっちもさっちもいかなくなっていたという自分と同世代の体験者は相当数いるだろう。けれども、あの当時、一緒にフワフワとダメダメな青春を送っていた奴等、軽四に男5人詰め込んで夜中にラーメン食いに行ってたような連れ達は、いつの間にかちゃんと就職して今や奥さんと子供がいたりしている。当たり前といえば当たり前だが、「21世紀には結婚制度とかその“当たり前”が滅びるんじゃないの」と思っていたのは、実は自分だけだったらしい。だから21世紀の始め頃は同年代の友人達に梯子を外されたような気でいたが、よく考えてみれば、実際の自分は他人の忠告も聞かないで分不相応に高い木へ登った挙句降りられなくて心細く鳴いているネコみたいなものだ。結局、バブルが終わったら、下の世代(ギャル)の時代が来て、マユ族は時代をリードしないまま存在感が無くなった。景気の良さが飛んだら自己投資への意欲も飛んだ。意外と柔軟性はなく、時代の気分も読めず、勇気をもって変われぬまま安心・安全志向だけが残ってしまった。そんな団塊ジュニアでありました。
こういう世代論が胡散臭いことも、マユ族なんて造語が全く流行らなかったことも重々承知の上で、当時の自分も今の自分もこういう話が大好きなのは変わっていない。まあ自分がこういう新聞記事で初めて知って「へぇー」とか思っていたことも、実は『ヤングアダルト情報源』みたいな本や『ダカーポ』みたいな若者向け雑誌で結構語られていた世代分析だったりするかもしれない。昔から世相に疎い人間だったので許して頂きたい。「今頃何言ってんの、何分析した気になってんの、こいつwww」と思った人は、どうかスルーして頂きたい。