パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

BS1『地球特派員2007』他

最近はこういうマイナーなドキュメンタリーも丸ごとニコニコ動画辺りに上がり、後追いで見られるらしい。便利な時代になったし、ネットに基本情報を書き残す甲斐もある気がしてきた。

BS1『地球特派員2007』「スウェーデン・安心して老いる社会〜介護先進国からの報告」
2007/10/14初回放送、50分、特派員:江川紹子(ジャーナリスト)、スタジオ進行:金子勝慶應義塾大学教授)、撮影:小口修一、コーディネーター:大橋紀子、取材:土屋哲志、ディレクター:原田親、制作統括:堅達京子/佐藤謙治、共同制作:NHKエンタープライズ、制作協力:スピリッツ・プロジェクト、制作・著作:NHK
スウェーデンの現状とか日本との比較とか興味深い話ではあるけれど、そもそも「人間らしい豊かな暮らし」のイメージが人それぞれなのだから、どんなにスウェーデンが充実しているかのレポートを見ても「へえ、そうなんだ。羨ましいね」くらいの感想しか出てこない。満足度を計るとすれば、自分の願いがどれだけ現行制度に反映されているか、だと思う。だから重要なのは、スウェーデンでは一般住民の希望・要求を政治的に実現するための制度設計がなされているのに、日本ではお上が素晴らしい制度を構築してくれるのを口を開けて待っているだけなの? そして官僚の設計図に文句だけ言っているの? そこの部分が改善されないと、たとえ世界最高レベルの介護制度が誕生しても、誰かが勝手に作った制度だから何らかの不満が出るに決まってやん。その辺りの「どうやって市民が声を上げていくのか」という話は、エンディングで江川氏が触れていたので「流石、分かっていらっしゃる」と思ったが、それならそっちをメインでやれば良いのに。「どんな素晴らしい制度を作るか」ではなく「制度を作るためにどう主体性をもって関わるか」が問われている昨今ではなかろうかと。
やたら金子氏が議論の流れを遮るように「地方の自治がどうたら」と発言するので、訝しく思って「金子勝+地方分権」で検索した。番組の中にこっそり自分の主張を混ぜて誘導するのではなく、正々堂々「これが俺の主張だ! 文句あるか」と言って欲しかった。
今から30年経つまでに、結婚もしてないし子供もいない月8万円くらい支給される年金手帳を握りしめた団塊ジュニア男を収容する施設を作って欲しい。6畳1間の個室に布団と高速LAN付PCモニターだけあれば充分満足するのが大多数では。食事だって毎日同じ菓子パンにシチューでも文句を言う人は少ないだろう。団塊世代が死に絶えたら廃虚になるだろう多摩辺りに、1万人くらい押し込める建物を建てる。食事も下水もセントラルヒーティングも世話する職員数も人間を集める程にスケールメリットを望めるだろうし、こうした家畜的な生活設計をさせたら日本は優れているはず。大方の人間は次の世代を生み出さなかった負い目を感じているし、そもそも我々は郊外の一軒家も快適な自動車も欲しがっていない。そんなことを言えば「上昇志向がない」→「下流」のレッテルを貼られてしまうけど、何が「素晴らしい生活の質」なのか「自分らしい暮らし」なのかの定義をそっちで勝手に決めないでくれ。素晴らしい福祉施設を求めているのではなく、たとえ家畜のような環境でも自分達が制度設計へ関わった主体的な家畜施設で自己満足したいだけなのに、これがなかなか他の世代には伝わらない。もちろん「60歳になって視力が落ちたら? 腕力が落ちたら? 認知症になったら? お前は老いを何にも分かってない。甘過ぎる」と言われればその通りで、その辺りの想像力の貧困さ、机上の空論ぶりは批判されても文句は言えない。

BS1『地球特派員2007』「サブプライムショック〜米・住宅バブル崩壊の現場」
2007/11/11初回放送、50分、特派員:斎藤貴男(ジャーナリスト)、スタジオ進行:森永卓郎(経済アナリスト)、撮影:藤井浩二、コーディネーター:小林麗、取材:服部隆志、ディレクター:山根幸太郎、制作統括:堅達京子/池田和明、共同制作:NHK情報ネットワーク、制作協力:パオネットワーク/藤枝融、制作・著作:NHK
(事例1)74歳の夫が月収46万円の夫婦、2000万円で家を購入、住宅ローンが月15万円→22万円に上がる。(事例2)月収18万円の53歳男性、ローン月11万円の固定金利だと思っていたら15万円に上がって「騙された」。(事例3)月収9万円の63歳女性、5000万円で家を購入、業者の指示で月収100万円と嘘を申告し、月20万円の返済。ということで、最後のひどい例は別として「サブプライムローン低所得者向け住宅融資」と聞いて、今まではスパイク・リー映画に出てくるような低所得者をイメージしていた。番組だと、どちらかといえば一生懸命働いて中産階級へ這い上がろうとしていた真面目な人々を直撃している印象。その意味では勉強になった。現場を伝える素晴らしいレポートだった。だが、上のスウェーデン編で書いたように、自分は「一軒家を持つのがジャパニーズドリーム」と考えていないので、家への執着はなかなか理解するのが難しい。「家族と過ごした思い出が詰まっている聖域」とか言われても、我々団塊ジュニア男は将来も家族なんて持てないし、ただの家畜用ねぐらで充分。
番組内では、金融商品としてのCDO(債務担保證券)がマネーゲームの象徴のように叩かれていたが、リスクが異なる様々な債務をコンピュータで適当に混ぜて抱合せ販売するプログラムを最初に開発した人に話を聞いてみたい。本来はポートフォリオみたいにリスクを避けるためのものだったとか、売れ残ったゲームソフト3本980円みたいに単独では売れない物を抱合せて安く販売するためのものだったとか、意外な発端があるかもしれない。それをウォール街の人間が「絶対儲かりますから」と嘘付いて売ったのかもしれない。

『Nスペ』「ファンドマネーが食を操る〜穀物高騰の裏で」(2007/11/19初回放送、50分、撮影:坪内敏治/川村玲、取材:徳永晶子/有馬嘉男、ディレクター:堀まゆみ/佐藤網人/矢島敦視、制作統括:井上恭介/今村啓一、制作・著作:NHK)は、昨年放送していた「同時3点ドキュメント」みたいな構成。米国農家とファンド屋と日本商社。投資対象になって昔の商慣行が壊れたのはサブプライムローンと一緒。数年前にバイオエタノールが知られるようになった頃は、メディアも「石油マフィアめ、お前等の世界支配も終わりだ。ざまあみろ」みたいな論調だったのに、最近はバイオエタノールが手のひら返しで悪者にされているようで何だかなあと思う。
現役大学生時代、愚かなにも真面目に就職活動をしなかったが、たまたま行った地元信金の就職説明会で「地元の中小企業に金貸すだけが信金の仕事じゃありません。これからはデリバティブの時代です。皆さんは世界を相手にするのです」みたいなことを言われて「へえ」と思ったのを思い出す。そこは悪夢のような90年代後半を経て破綻寸前に吸収合併された記憶がある。何もかもが懐かしい。

『Nスペ』「ヤクザマネー〜社会を蝕む闇の資金」(2007/11/11初回放送、50分、取材:石山健吉/板倉弘政/木村真也/小林和樹/藤井孝充/渡邊和明/伊藤竜也、撮影:宮本淳、ディレクター:横井秀信、制作統括:中嶋太一/春原雄策、制作・著作:NHK)は、番組の部分だけだと、ちゃんと技術を持ってて、投資をすれば利益の出るベンチャー企業の価値を銀行が見抜けない無能だから、ヤクザマネーも潤滑油として役立っているという話にしか見えない。ヤクザマネーの恐ろしさを説明したいなら、穴だらけの事業計画を持って銀行へ行ったけど当然ながら融資を断られ、仕方なくヤクザに頼ったが当然ながら事業に失敗し、娘と腎臓を売った元ベンチャー企業社長とか失敗例を出さないと片手落ちでは。エンディングに説教臭いナレーションがあったけど、ヤクザマネーに頼るベンチャー経営者や暴力団と手を結んだ元証券マンを拝金主義と非難するより、長時間労働させて残業代を払わなかったり、従業員の非正規雇用を増やしている世間的に“立派な”大企業様の拝金主義を非難するのが先じゃないのか。