パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『BS特集』「民主主義」4〜6

『我々は見ている』
番組の最初らへんで、野党や反政府指導者、亡命政府に資金援助をするのではなく、公正な選挙が行われるかどうかを監視する民間団体/NGOに米国のシンクタンクが運営費を支援したら、それは内政干渉になるのだろうか、などと思って見ていたら、予想通り、最後にマケイン議員の関係者が出てきた。マケインといえば、ウクライナグルジア民主化運動を伝えるドキュメンタリーにも米国式民主主義を輸出する黒幕として出てきた。

『女の内閣』
西欧の植民地だった発展途上国の多くは、旧宗主国に留学経験がある高級官僚と貧しい一般市民で使用する言語が違うものだが、リベリアは建国の事情により上から下までみんな英語を話す。しかも人口300万人だから、デモのリーダーと大統領の面会も可能という、いろんな意味でアフリカでは特殊な印象。首都の道路整備(露店の排除)なんかは国の仕事ではなく自治体の仕事だと日本だと考えてしまうが、個人的には民主主義を運営するにはこのくらい(人口500万人前後で、そのうち首都に50万人くらい)の規模が適正だと思う。規模としてはクロアチアとかデンマークに似た感覚。
ジョンソン=サーリーフ大統領を始めとする主要な閣僚は内戦中、米国に亡命していて、内戦が終わってから戻ってきたのだろうが、一般的には国内に権力基盤のない外国帰りはあまり好かれないはず。よほど内戦の当事者達が信用失墜していたのだろう。
ジョージ・ソロスがいかにも悪知恵の第一人者的なアドバイスをしていて面白い。中国カードを使って米国を動かせば、結果として世界の流れも変わるという。

愛国者の村』
ドキュメンタリー作家には事象や情報を大事にするジャーナリスト系と人間や感情を大事にするアーティスト系がいて、アーティスト系の方が繰り返しの視聴に耐える深みはあるかもしれないが、個人的にはそういうのは金取って映画館ででも流してくれ、テレビドキュメンタリー界には向いていないと思う。
セルゲイ・バブーリン率いる民族政党と某ヨットスクールみたいな宗教施設の関わりが今一つピンとこない。というか、西欧民主主義者からすれば「ロシアってこんなにおかしいぜ!」と描くために選んだ題材なんだろうけど、日本人からするとそれほど馴染みのない風景というわけでもない。資本主義的成功への無気力とか伝統への回帰とか、その上で今どきの若者らしく家父長制的な団体生活にも違和感があるんだよ、という描写は、今の日本人にはおおむね理解可能。それを大袈裟に「危ない集団」扱いして描いてあるのも、個人的にはマイナス評価。
そもそもこのシリーズはディレクターが自国を取材しながら自国の民主主義について思索を巡らし、どのように外国人に説明するか悪戦苦闘するところが面白いのに、グルジア系の監督が外部からロシア社会を描いても批判的な視点しか出てこないのはある意味当たり前。もちろん自分は監督の背景を知らないから、実はロシア社会で暮らす少数民族グルジア人として、特定宗教が政治権力と結び付く様を鋭く描いているのかも知れないが、それでもやはりこのシリーズはこれまで多数派でのほほんと見ていた自国の民主主義を外国人に説明するためにじっくり見ると「何だか妙な癖を持っているなあ」と気付く部分が魅力のはずなので、やはり企画段階からの失敗作と認定して構わないと思う。