パロップのブログ

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BS1『BSドキュメンタリー』「フランスの母になりたい〜マダム・ロワイヤルの6か月」

2007/5/26初回放送、50分、取材:鴨志田郷/長尾香里/山本陽一郎/渡辺謙一、撮影:栗本一紀/今野修一、リサーチャー:中平美紀/岩橋恵美、制作統括:土岐健/伊藤良司

5月6日に決戦投票が行われたフランスの大統領選挙は、投票率が84%となり1965年以来の高さとなった。国民の関心をここまで高めたのは、フランス史上初めての女性大統領を目指して、与党候補のニコラ・サルコジ氏に挑んだ社会党候補のセゴレーヌ・ロワイヤル女史の戦いだった。エレガントさでフランス国民を魅了したロワイヤル女史は、同時に4人の子供を持つ母親としてヨーロッパ伝統の社会的平等の重要性を国民に訴えた。そしてアメリカ型の自由競争を唱える右派のサルコジ氏に対して、まっこうから対決した。決戦投票でサルコジ氏に敗れたものの、ヨーロッパの大国フランスの大統領選挙に“旋風”を巻き起こしたロワイヤル女史。彼女の訴えを、国民はどのように受け止め、そして、どのようにして決断を下したのか。世界が注目したマダム・ロワイヤルの戦いを振り返る。(NHKサイトの予告より)

放送前の仮タイトルは「マダム・ロワイヤルかく戦えり〜仏大統領選・国民の選択」。泡沫候補から大躍進したのならばともかく、左派を代表する政党の正式な指名を受けた立候補者に“旋風”という言葉を使うのはかえって失礼ではないかと思う(むしろ旋風ならバイル候補だろう)が、もしかすると社会党の正式候補だったのに第1回投票でルペンに負けちゃった前回のジョスパンを笑いものにする高度な文章表現なのかもしれない。この予告を読む限り、ここまで善玉と悪玉を決め打ちしてドキュメンタリーを作る勇気に乾杯、と思ったが、実際には、候補者個人にスポットを当てるのではなく、市民がかかわる選挙運動の実際を伝えたもの。「6か月」とは、ロワイヤル氏が社会党の候補者に選出された2006年11月17日から決戦投票日の2007年5月6日までを示す。その間、ロワイヤル氏に密着取材をしたというよりは、選挙綱領の発表会や地方遊説など折々のニュース素材を時系列でまとめた『BSきょうの世界』や『クローズアップ現代』の拡大バージョンといった趣き。クレジットにディレクター(構成)の名前がなかったのも、取材記者が持ち寄った材料をまとめただけで、何か制作者の意図が前面に出てくるような番組ではないからだろう。ただ、意図がなさそうな割に、

ロワイヤル氏はこの日、母親が子供に語りかけるように優しい口調で、若者一人ひとりに励ましのメッセージを伝えました。

と、NHKドキュメンタリーとは思えない叙情的なナレーションを聞く限り、ロワイヤル氏への思い入れを隠せなかった人が制作者の中にいる気配も感じられる不思議な番組。