パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『Nスペ』〈21世紀の潮流・ラテンアメリカの挑戦〉「脱アメリカ宣言〜ベネズエラ・7年目のチャベス革命」

2006/7/21初回放送、50分、撮影:竹内秀一、リサーチャー:三松佳代子、コーディネーター:六本木栄二/杠将、ディレクター:日置一太、制作統括:桜井均
昨年放送された『Nスペ』「アフリカゼロ年」とスタイルが一緒。ディレクターと制作統括が同じだから当然か。
1989年のカラカス暴動の史料映像は初めて見た。70年代のオイルショックによる好景気から都市部への人口流入、スラム化ときて暴動と、歴史的な経緯をちゃんと説明する演出は良し。ただ、『マイアミバイス』や『トラフィック』好きとしては、コロンビア民兵組織の取材が一番面白かったから、散々話題になっているチャベスよりもそっち中心の番組にして欲しかった。
番組の導入部で、

世界第4位の産油国ベネズエラ。20世紀の初めからアメリカなどの石油資本が集中し、南米でもっとも豊かな国として知られてきました。石油の富を求める移民も多く、多様な人種・民族がともに暮らしています。豊かな人々の暮らしぶりは欧米と変わりません。しかし長い間その富は一握りの人々に独占されてきました。

といったその3分後に、

100年前、ベネズエラの石油を最初に開発したのはアメリカ企業でした。その権益をほとんど外国資本に握られてきたため、富はベネズエラ人の前を素通りしていきました。

言葉尻を捉えた揚げ足取りと言われそうだけど、「その富は一握りの人々に独占されてきました」→「富はベネズエラ人の前を素通りしていきました」だと、普通に働いてそれなりの生活をしている中産階級ベネズエラ人は存在しないのだろうかと思う。グロリア・エステファンアンディ・ガルシアのような亡命キューバ人2世の経歴をみても、その両親が革命政府に全てを奪われるに値する「富を独占した一握りの人々」という感じではない。もちろん、カストロ政権が旧政府を倒したことで救われた貧しい人々も数多くいるのだろうが、貧困層に対する想像力に欠ける自分にとって気になるのは、倒されるべき悪徳政府と救われるべき貧困層の狭間に置かれた中間層、「無自覚の加害者」「善良な加害者」として扱われる人々のこと。数年前に放送されたベネズエラのドキュメンタリーに出てきた民間石油企業の技術者は、若い時分に一生懸命勉強して手に職を付け、それなりの生活を手に入れたのだろうに、ある日から石油関連企業が国の傘下に置かれ、技術者も「お前は悪魔アメリカの手先だ」って解雇され、それまで恵まれなかった貧困層出身者に入れ替えられてた(記憶違いも多々あるだろうが、大体そんなストーリーだった)。革命とか不平等の是正というのは大方どこでもそんなものなのだろうが。