パロップのブログ

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BS1『BS特集』〈未来への提言〉シリーズ「元PKO部隊司令官ロメオ・ダレール〜戦禍なき時代を築く」

2006/10/15初回放送、50分、 聞き手:伊勢崎賢治、撮影:今井巧、リサーチャー:柳原緑/中里雅子、ディレクター:小越久美子、制作統括:堅達京子/河津信三、共同制作:NHK情報ネットワーク、制作・著作:NHK
ダレール氏の「一人ひとりの命が大切にされる世界をつくろう」という理念は、2001年12月、カナダ政府の作った委員会により、「それぞれの国家が命や人権を守ることが出来ない場合、国際社会が積極的に人々を保護する責任がある。…状況次第では、武力行使も辞さない」という新しい概念「保護する責任」に結実するわけだが、これを実効力があるものにするためにダレール氏が頼りにしているのは「中堅国家(ミドルパワー)の連携」。中堅国家とは日本、ドイツ、カナダ、北欧諸国、オランダ、後はオーストラリアとインドなどのことで、「戦略的に機能させるための指標がないと、アメリカのイラク侵攻みたいに使われちゃうのは困る」「かといって人口50万人の独裁国家なんかに1票の権利を与えている国連総会なんかに期待しても無駄」辺りの狭間から生まれた、ものすごく現実的な発想だと思った。崇高な理念に泥臭い実効、流石に地獄を見た人。
途中でダレール氏からダルフールの例も挙げられていたが、「ダルフール問題に関するスーダンへの制裁は、中国が拒否権の発動をちらつかせたせいで前に進みませんでした」という具体的な話を盛り込めば、中堅国家の連携の必要性を説明するのにもってこいだと思うのだが、中国に気を遣ったのだろうか、口に出して言えないところがNHKの限界か。