パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『Nスペ』「復興への行進(マーチ)〜音楽の街・ハリケーンから半年」

2006/3/19初回放送、52分、撮影:東口勝典/上辻裕己、コーディネーター:松田裕子、ディレクター:吉川直樹、制作統括:千本信昭/芦立広
BS1BS-hiで放送されたニューオーリンズ特集とスタッフが同じかどうか確認したかった。取材は2006年2月末頃だし、全くの別物のようだった。

(3/21追記)
多分、無知を晒すことになるけど、見終わった感想を書いておく。
主人公のクリス君の家は、我々が想像するいわゆる黒人貧困層ではないような気がする。父は個人で所有するタクシーの運転手、母は月給20万円の銀行員、ローンで平屋の持ち家に住んでいる、通っている高校からも話している英語からも「教養ある中産階級」という印象を受けた。日本で言えば「ローンでマンション買ったら耐震偽装で住むところがない、新たな家賃と以前のローンを並行して支払う能力はないから政府が何とかしてくれ」クラスの生活水準だと思われた。これで被災から半年間、1泊100ドルのホテルに泊まる住宅補助が出る。うーん、詳しくは知っているわけではないが、新潟の地震や洪水被災者よりも手厚い援助を受けているのではないかという疑問。
被災者に「4カ月以内に再建計画を出せ」という要求への番組の批判的な視点に関して、水浸しになった被災地にまた以前のような平屋群を建てるといった案には投資する人間はいないだろうから行政が必死こいて予算を集めなければならないだろうけど、再開発ビル群を建てるとなったら全米中から土建屋やら不動産屋やらが寄ってくるのではなかろうか。そう考えると、再建計画というのは早ければ早いほど資金も集め易いのだから、急がせるのも無理なからぬことではなかろうか。もちろん、そういう資本主義自体が持つ冷酷さを批判的に取り上げるのもありだろうし、たとえば伝統を重んじる欧州ならば政府が金を出してでも被災前の姿に戻す再建の仕方をするはずだという比較文明論みたいなのもありだろうけど、「急いで再建計画を出させるからダメ政府」みたいな視点の取り方は微妙なんじゃないか。
もう少し続けると、ハリケーン接近前に政府が土手改修の予算をカットしただとか、今回取り上げられた家族よりも貧しい層の被災後はもっと悲惨なことになっているだとか、そういう行政の対応のまずさは確かにあるだろうし、そういう事はドンドン批判的な視点で取り上げていくべきだろうけど、今回の主人公はそういう例として挙げるには、少しピントがずれていたんじゃないのだろうか。つまり「ダメ政府のお陰で被災者はこんなに悲惨だ!」と表現するには、主人公が(あくまで相対的にだが)あまり悲惨ではないのではないか。だから今回のドキュメンタリーは、被災したクリス君が様々な状況に直面することで大人になる成長物語に焦点を絞った方が良かったかなと。ケン・ローチ風に人間へ迫れば、自ずと社会の歪みを描き出せるはず。
上の文を読み返してみると「耐震偽装マンションの被害者って、あまり悲惨ではないよね」と読み取れる事に気付く。文中のどの箇所に関しても正確な被害額や公的援助額を調べているわけではない素人の印象批評なので許して頂きたい。