パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

BS-hi『ハイビジョン特集』「火の民クルド紀行〜アララト山への1000キロの旅」

2005/10/13初回放送、110分、「シリーズ・アジア知られざる道を行く」第3回、コーディネーター:仁田原康子、撮影:大網康晴、ディレクター:新田義貴、制作統括:山本展也
6月4日にNHK-BS1放送された『BSドキュメンタリー』「クルド人居住地を行く〜トルコ南東部 最新報告」の感想に、

美しいアララト山が見られただけでも充分評価出来るというか、政治的な側面や住民の営みを抜いた『世界の車窓』的な番組を別に制作して欲しいくらいだ。
http://d.hatena.ne.jp/palop/20050613

と書いたが、やはりあれだけ大掛かりな旅をして50分番組1本だけではなかった。但し、今回の放送も「政治的な側面や住民の営み」を伝える方向性は変えておらず、その分エピソードが増えて、厚みも増した。チベットアンデスのような透明感あふれる映像が相変わらず素晴らしく、我が家のようなケーブルテレビクオリティではなく、本物のハイビジョンテレビで見て、録画保存もブルーレイで劣化知らずだったら、何度でも見直してしまうだろう。

ゴールも見えないまま、淡々とTVドキュメンタリーのエンドクレジットを書き残して2年以上経ち、ようやく自分の中で1つだけ成果が出た。新田氏は期待出来るディレクターである。詳しくはこの日記内を「新田義貴」で検索のこと。興味をもったら現場へ飛ぶテレビマンらしいフットワーク、ジャーナリストらしく地理歴史に関心を払う、そして視聴者を退屈させない物語作家としての才能、その全てを備えていると思う。今はまだ検索してもほとんど実績はヒットしないけど、NHKが輩出した偉大な先人達の後に続くのは間違いない。
これまでドキュメンタリーの演出家を「構成」と表記し、「うちのドキュメンタリーは“NHK”という謎の人格が製作した、誰の主観も入っていない公正中立なものですよ〜」という建前を崩さなかったNHKだが、最近は「構成」→「ディレクター」に変わり、「ドキュメンタリーも一個人が主観をもって製作した作品」だと認める方向にあるのではないかと推測される。次は、放送前に公式サイトへ掲載される「番組の見所」みたいなものに、ディレクターの氏名も載せるようになってくれ。たとえばドラマならば「主演:○○」「脚本:××」「演出:△△」を宣伝文句にするのが当然なのだから、早くTVドキュメンタリーの世界も「あのディレクターの製作だから、興味ない分野だけど、ちょっと見てみるか」みたいな風潮になって欲しい。