パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『戦後60年・歴史を変えた戦場』「ベトナム戦争〜サイゴン陥落・最後の58日」

2005/4/30放送、50分×2、取材:田中陽介、構成:松本武顕/広瀬凉二、制作統括:山崎秋一郎/塩田純、共同制作:NHKエデュケーショナル、制作協力:ホームルーム、制作・著作:NHK

スタッフのクレジットをみる限り、2004年7月17日にNHK-BS1で放送された『BSドキュメンタリー』「世界を変えた56日間の戦い〜ボー・グエン・ザップ 93歳の証言」(http://d.hatena.ne.jp/palop/20040727参照)の続編。
NHK公式サイトには、

(前略)番組では2回にわたり、ベトナム戦争最後の闘いとなった『75年春季大攻勢』にスポットを当て、作戦の中枢にいたボー・グエン・ザップ将軍ら当事者の証言を軸に、ベトナム戦争の知られざる真実に迫る。

とあるのだが、南北の当事者は数多く出てくるし、北側の軍司令官によるザップ将軍の秘話も出てくるが、ザップ将軍本人のインタビューは出てこない。正直JAROに訴えられても仕方ないレベルの誇大広告。「アポはとれていたが、ご高齢だし体調を崩したのかも」と思いたいところだが、今年4月30日に行われた戦勝式典にも出席しているようだし、1年前にはインタビューに答えてくれた将軍が出てこなかった理由を邪推するのも一興。もちろんインタビューしたけど、使えるカットがなかっただけという可能性もある。

番組最後のナレーション、

1975年5月、勝利の祝賀式典が開かれました。そこには、15年に及ぶ戦いをくぐり抜けてきた兵士達の姿がありました。
サイゴン陥落への58日間。それは祖国統一を目指して戦ってきたベトナムの人々の、強い意志と戦略が実を結んだ時でした。

というのが、恐らく制作者の歴史観。「ディエンビエンフーでフランスを破った後、米国が介入しなければ南北で争うこともなかったのに」と言い、米国がベトナムを去れば北が南を飲み込むのは必然だという立場を取りつつ、米国が南側との口約束を破って援助しなかったら、しなかったで「南ベトナム人を見捨てるなよ」とも言いたげのがよく分からない。多分あの時代をリアルタイムで体験していないと分からない感覚なんだろう。その他、この番組だけの知識だと、パリ和平協定を破って軍事侵攻したのは北側だとか、サイゴン侵攻が解放目的ではなく政治決着の取り引き材料だったとする見方に当時は信憑性があったとか、バンメトートの戦いの5日後に生まれた私の付け焼き刃知識とは違うベトナム戦争がある。
ちなみに番組内では「まだまだ意気盛んだった」という扱いだった南ベトナム軍も、日本共産党にかかると、

バンメトートでは、戦闘に敗れたサイゴンかいらい政権軍が雪崩現象を起こし、中部高原、フエ、ダナンから次々に敗走し、ホーチミン作戦でサイゴンと南部全体が解放されました。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-03-12/07_01.html

ということになる。まあ世界観は人それぞれだ。