パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

BS1『BSプライムタイム』「チャベス政権・クーデターの裏側〜ベネズエラ(Chavez-Inside the Coup)」

2004/2/8再放送分(2003/11/22初回放送)、プロデューサー:デヴィッド・パワー、構成:キム・バートレー/ドナチャ・オブライエン、制作:パワーピクチャーズ(アイルランド・2003年)、制作統括:古川潤
実は番組を見る前に、検索して11月の初回放送の感想や紹介を先に読んだ。

この映画には、チャベスに新生ベネズエラの未来を託する貧しい圧倒的多数のベネズエラ人民の希望を見ることができると同時に、ブッシュのアメリカがどこまで汚い手を使って石油を奪おうとするのかその様が実写を持って告発されている。
http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Bushwar/venezuela_coup.htm

或いは

・CIAが仕組んだ「メディアを利用した国民洗脳」によるクーデター
・僅か2日間だけのアメリカ傀儡政権によるベネズエラ
ベネズエラは市民の力によって、アメリカの作ろうとしたアメリカ傀儡独裁政権から、ベネズエラ市民の民主主義国家を取り戻した。
・2003年 「パンフテレビ祭グランプリ」・「モンテカルロテレビ祭最優秀賞」・「イタリア賞」受賞番組
http://atfox.hp.infoseek.co.jp/xfile/terro/venezuela.htm

なんて書いてあったので「どんなにすごいアメリカ&ブッシュ批判がされるのだろう」と思いつつ、実際に見ている時は頭の中で自然と上記のストーリーをなぞっていた。しかし、見終わってから内容を反芻してみると、実はこの番組の中で露骨なアメリカ批判はなかった気がする。CIAの関与も番組では恐らく明言していなかった。まあ実際にはCIAが関与していたようだけど(http://ha6.seikyou.ne.jp/home/AALA-HOKKAIDO/jousei/2002chavez.htm)。
推測になるが、この番組の主旨は「ベネズエラの民放放送局がどこの紐付きかも確かめずに、彼らのこしらえた作為的な映像をそのまま事実として垂れ流したあんたら西側メディアは、我々が撮ったこの映画をみて少しは反省しろ!」って事だろう。実際、この番組が世界各国で多くの賞を受けているのも「これまで誤って知られていた事実をひっくり返す材料を映像で示した」という優れた報道ジャーナリズムとしての評価に対してであり、別に民衆の勝利を描いたからだとか、ブッシュを批判したからではないだろう(もちろん報道や映像が権力者に有利に、被支配者に対して不利に働く傾向があり、権力を監視する報道或いは被支配者側の視点に立った報道はそれだけで優れた報道であるという点は確かにあるが)。
更にいえば「アイルランドくんだりから7カ月もチャベスに密着取材している時点で、制作者が革命家チャベスに魅力を感じていたのだろうし、彼を悪く描く事はないだろう」とも疑えるし、更にいえば「そもそも賞を与えたドキュメンタリー祭自体、左派系・市民運動系の優れた作品に賞を贈るイベントかもしれない(ちゃんと調べるつもりはないから分からないけれど)」と疑いだせばきりがない(あまり陰謀論に傾くのもなんだけど)。
たとえば上記のサイト群では、チャベスが国民に「憲法を読みなさい」と語りかける部分を賞賛しているが、多分日本人が「憲法」と聞いてイメージするそれとは違う。ここでいう憲法は不磨の大典としての真理が書いてある文章ではなく、チャベスが大統領になった後、憲法制定会議を設置して作られたチャベスの信念が反映された出来合いのものだ(多分書いてある事は民主主義的に良い内容だろうとは思うけど)。
どうやら少なくとも「イタリア賞」はイタリアの放送局RAIが創設したまともな賞のようだ(http://www.prixitalia.rai.it/2003/en/winners.html)。「モンテカルロ国際テレビ映像祭」も立派な賞のようだし。ちなみにRAIのサイトをみると、映画での原題は「THE REVOLUTION WILL NOT BE TELEVISED」だが、ドイツZDFが放送した時のタイトルが「Chavez-Inside the Coup」で、NHKもそれを流用したらしい事が分かる。
まあ、アメリカや日本の大政翼賛的放送局の報道を疑うのと同じくらいの気持ちで、市民の味方も疑おうという事でまとめて終わる。
作品に関する制作者へのインタビューがあったので、やる気のある人は読んで(http://www.themoviechicks.com/mar2003/mctrevolution.html)。