パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『NHKスペシャル』「米兵たちのイラク」

2004/3/12放送(BS-hi)、2004/3/14放送(NHK総合)、50分、取材:青木紀美子/廣田昌也/樺沢一朗、構成:古澤敦、制作統括:千本信昭/原神琢/市瀬卓(NHK
「州兵」繋がりで、先日放送された『BSプライムタイム』「突然の召集令状アーカンソー州イラクへ」(http://d.hatena.ne.jp/palop/20040214#p1)の流用かと思ったら全くの別物。「突然の召集令状」の方はNHKアメリカのスタッフが作っていたが、こちらは取材がNHK国際部ながら制作は外注くさい(構成や制作統括がNHK関連で見たことない人という理由)。その場合、エンドロールに共同制作としてプロダクション会社の名前もあるはずだが、今回は無し。ということは、やはりNHK単独の制作なのだろうか。それだと「突然の召集令状」用に州兵の訓練を取材したのだから、その部分は流用すれば良いのにと思うのだが、外からは分からない内部の縄張りがあるのだろう。
上記のような穿った見方をしてしまうのは、個人的に番組の内容がややしっくりこなかったから。基本的に「派遣される戦争素人の州兵」と「ヘリが撃墜されて戦死した職業軍人」の話は別の情報だろう。もちろん「多角的な視点」という言い方も出来るが、異なった問題をわざと混ぜる事で「普通のサラリーマンが治安の悪化したイラクへ送られ…むにゃむにゃ…死体になって帰ってくる」という印象を与える事を意図しているのではないかと。アメリカも、わざわざ戦死者を増やして批判を受けるような馬鹿な事はしたくないわけで、〈フセイン残党の掃討担当=精鋭部隊、テロ対策担当=職業軍人、一般イラク人を含めた地域の治安警備担当=予備役・州兵〉くらいの適材適所は考えているだろうし(ソースは探していないので話半分で)、日本で「自衛隊を送るな!」と言っている立場でも「地元の治安維持に文民警察官ならばOK」という考え方はあるようだし、公共団体から給料を貰って月1回訓練を受けている人を治安警備に送る事に関して、やや操作を感じた。蛇足ながら、州兵の一人に密着してその心境の変化を追う取材そのものも、兄の戦死に伴って帰国した職業軍人の心境を追う取材そのものも非常に良かった事を付け加えておく。あくまで、そのブレンドに対する疑問だから。アメリカによるイラク占領そのものの是非も問うていない。
おまけ:BS-hiでも『NHKスペシャル』と名乗るくらいだから、地上波の方が本放送だと思うのだが、実際には16:9で撮影しており、地上波だと左右をばっさり切って人物が常にクローズアップ状態になっている。地上波でも16:9で放送してしまうか、左右カットした時に事を予め考えて撮影した方が良いと思う。もちろん、地上波の方が的確な距離感で、ハイビジョン・バージョンは両端に余分なものが映り過ぎと感じる人もいるだろうし、これは個人の感覚に過ぎない。