パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

BS-hi『ハイビジョンスペシャル』「ニューヨーク〜9.11を撮影した7人の物語」

2003/10/29初回放送、110分、構成:窪田啓一郎/マイク・ニコソン、制作統括:小島伸夫/千本信昭
エバン・フェアバンクス(ビデオカメラマン)…WTCの真下、トリニティ教会で仕事をしていた。死んだ消防士ブライアン・スウィーニーの最後の姿を撮影していたため、その後彼の家族と接するようになった。それと同時に生活するための腐れ仕事をする気力がなくなって、貧乏生活しながら、好きなものを撮影して暮らしている。
パーク・フォアマン(ITエンジニア)…マンハッタンの自宅から、2機目が横からビルに突っ込む画面をおさえた。大きく火を噴いているあの映像を見ると「そりゃあ崩れるわ」と思う。当時出回っていた「真下から見上げてちっこい飛行機がビルに小さな穴をあける」映像は記憶のミスリードを大量に生み出しているはず。
デレク・ジョンソン(写真家)…カメラを持って地下鉄に乗っていた。高架して地上に出ると2機目がぶつかった処。恐らくブルックリン/クイーンズ方面からマンハッタンへ入ってくるサブウェイだと思う。そのままマンハッタンを撮影しまくり。自分の撮した映像をDVDに焼き、友人集めてプレステをプレーヤーに上映会、という妙に生活へ密着したリアリティが記憶に残る。ニューヨークに見切りをつけてシアトルへ移る、
ジェイミー・ゴン(当時ブティック勤務)…妹に起こされた時は既に2機目衝突の後、それから撮影に向かった(チャイナタウンからWTCまで歩いて約5分)。「自転車に乗ってアップタウンへ」という表現が耳慣れなくてひっかかった。ニューヨークが舞台の映画で南から都心に出る話って意外ときかない(というか、私が知らないだけ)。
カレン・ヒュイ(チャイナタウン在住の女優)…ジェイミーの映像を借用して映像祭へ出品。テロ後、チャイナタウンの幹線道路「パーク・ロウ」が封鎖されたままなので、観光客激減、失業者激増らしい。初耳。
マイケル・コバレンコ(CGデザイナー)…テロ後、ドキュメンタリー編集へ仕事を変える。ノンポリだった人が被害者になった途端、政府に不満をぶつけるようになる。かぶれやすくて極端から極端へ走る典型な若者。
スコット・マイヤーズ(ソフトウェア会社経営)…WTCから歩いて5分のアパートから撮影。会社が倒産しそう。理系らしく理路整然と進まない文系的お役所仕事に切れそうな御様子。マジで倒産したら、役所で銃を乱射しそうなタイプ。というか、最初から保険に入っておけよ。
「7人の物語」と言いつつ、実際に撮影したのは6人。それぞれの人物に(あれから2周年なので)2003年9月11日を迎えた感想を聞いているので、恐らくその少し前にニューヨークで開かれた「9.11映像展」みたいなのに出品した人をハンティングしてきたものと思われ。ある種の定点観測みたいなものだから、内容については、証言の史料価値があれば充分か。正直、実際の9.11映像をもっと多く放送して欲しかったが、それはまた別の趣旨。
この番組からは離れるが、9.11の素人映像は分かっているだけで100点くらいあるらしい(NHKのサイトより)。写真となれば、それどころではないだろう。これだけの事件ならば、そのうち資料館などが建設され、素人にも映像の提供・寄贈なんかを呼びかける事になるのだろう。では、事件性のない、それこそ家族のスナップ写真が容易にビデオカメラへグレードアップしている時代に、どの程度まで「史料的価値」として公的に保存する価値があるものだろうかと考えてみる。「全部ゴミ」というのがほぼ正解だろうが、民間人の日記50年分なんてものであっても、例えば明治時代のものならば、希少価値が出る史料だろうし、数百年後の社会学者には、ハリウッド映画に映る作為的な民間人ではなく、素の民間人が映っている映像を数限りなく収集・研究する人もいるだろうし。