パロップのブログ

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BS1『BSプライムタイム』「サイード“イラク戦争”を語る〜開戦前夜カイロ」

4/26放送分、取材:土井敏邦、構成:鎌倉英也、制作統括:三雲節/山登義明
開戦前夜(3月19・20日)、エドワード・W・サイードがカイロにあるアメリカ大学で講演した際の記録。同時にサイード氏と氏の友人でガザの人権活動家(弁護士)ラジ・スラーニ氏との対談、それにサイード氏が幼少住んでいたカイロの家やらガザの現状やらの資料カットが挿入。どれも中途半端な取り上げ方をしている構成という印象。『ETV特集』があったら、前後編90分にしただろう内容。そもそも番組内でサイード氏はイラク戦争についてあまり語っていない。講演では語っているが番組内ではそれ程取り上げていない。対談では、もっと大きな民族のアイデンティティ、個人のアイデンティティの話をしていたような。サイード初心者が見たら「偉い先生の有り難いお言葉」でしかなく、著作を読んで氏の思想を読み込んでいる人からすれば「何を今さら」で、私のような氏の存在は知っていても読んだことのない半端物にはもっと微妙。番組で聴いた限りでだが、氏への感想は「民族の記憶・文化・伝統は決して滅びないけど、人間に国境なんて不要だよ」なんて理想を唱えつつ、「私はパレスチナ生まれ、カイロ育ち、アメリカ国籍という(出自的に)特権階級だから、この件に関して発言する権利がある」という当事者でないのに当事者みたいな顔をした奴。でも目がキラキラしている本物の理想主義者でもあるっぽい。スラーニ氏がサイード氏と親友なのは「戦略的に思想的に近いから」というよりは、日々の闘争で精神が疲弊してもサイード氏の「真顔で正論」と接する事で、新たなるファイトが湧いてくるとか、そんな感じではないかと想像してみる。
土井敏邦氏はガザで取材活動をするビデオ・ジャーナリスト。スラーニ氏との信頼関係があったと思われ。
(参考)http://www.geocities.co.jp/WallStreet/1471/konohito/011018.html
鎌倉英也氏はNHK放送総局のディレクター。ノモンハン戦争、アウシュビッツ、在日朝鮮人など人権関係の番組を制作している。NHK左派系制作者として、サイード氏とは既知だったのかもしれない。