『第5節・ドルトムント対シャルケ04』(9/22放送分)。ロシツキはマークが厳しかったのもあるが、いつもよりボールが集まっていなかったので、交代は当然か。確かにメッツェルダーはトゥドールに似ているので、リッピが欲しがるのも分かるような気がする。ああいうセンターバックともハーフともつかない選手がいれば4バック、中盤が走り回る人間だけの時はセンターバック3人制というのがリッピ流か。しかし、メッツェルダーにしてもケールにしても「新時代のディフェンダー」的な紹介をされている割に、プレーぶりは人に強くてマイボールを大事にし、たまに攻め上がって、という30年間変わらぬ「ドイツ製」という気がする。
今週の『週刊サッカーマガジン』内ティベール氏のコラムは、今さらのようにカーン。カーンの話のはずだが、氏のフランス東部で行われたドイツ語教育話の方が面白かったりする。いや、そんなことはない。「カーンはあのミスの残像に苦しんでいるだろうが、シューマッハなんぞ2度の決勝でいずれも負けたのだから、苦しみはその半分だ」とか「名手ヤシンもあの大舞台でやっちゃったし」と、えらく長いスパンの歴史観で慰めている。
今月の『CUT』内山形浩生氏の書評はイザベル・アジェンデ著『パウラ、水泡なすもろき命』。文中に「朝日新聞の書評と合わせて読め」とあったので、今読んだ。新聞ではこっちで書いたようながっかり感を書かず、絶賛で終えているのかと思いきや、ほとんど同じ内容だった。氏はクールというか、斜に構えているような印象があるが、こと批判する時は些細な揚げ足取りではなく、作品の根幹に関わるがっかり感をちゃんと主張している。技術的に優れない上に、根幹が認められないと、全否定になってしまうわけだが。
下斗米伸夫著『ソ連=党が所有した国家―1917〜1991』という新刊を立ち読み。氏は『スターリンと都市モスクワ―1931〜34年』(1994年)という恐ろしい本の著者でもある。歴史といえば、スターリンやトロツキの評伝だったり、重大な事件の背景・真相・結果・影響などを通史的に書いてあるものと思っていた愚かな私に、「歴史っていうのは、公文書館にいって一般人の訴え願やら下級官僚のメモ書きを読みあさって、モスクワ州・市という小さな行政単位における、党機関と地方行政機関の関係、党の幹部と政府の官僚の力関係、情報伝達から政策決定の過程を解き明かすことで、ソ連がどのように運営されていたかを研究することなんだよ。党大会の下らない演説やら暗殺事件で党内序列がどうこうなんて個人事は意味ないんだよ」という事を教えてくれた。私はこの本を2〜3ページ読んだだけで「これはあかん」と放り投げ、歴史家になることを諦めさせてくれた。で、最新作はモロトフである。彼は自身が歴史に残る何かをしたわけではないが(独ソ不可侵条約にサインした写真が有名なくらいか)、1910年代から50年代まで党中枢にいて、あらゆる事件・決定に関与した。彼が失脚後、回顧録代わりに書いていた文章やインタビューの起こしを下斗米氏が入手し、この数年、大喜びで分析していたことは容易に想像出来る。本人が深く関わったが故に言い訳じみたバイアスがかかっている箇所は多く出回っている他者の回顧録と合わせれば見抜けるわけで、むしろ例えばスターリンとトロツキが会議の度に論争しているのを、端から「やってるやってる」と眺めていた男が1980年代まで生きて証言を残しているのが素晴らしい。分かり易く言うと、常に党幹部だったにもかかわらず世間的に残る業績は「平成」の看板を挙げただけだった小渕恵三君が、首相にならずに引退して「中曽根は、竹下は…」と自民党のよく分からない意思決定を傍観者のように書き残してくれた、ということだろうか。新書だし、これくらいは読みたい。でも、多分読まない。
タワーレコードで、売れない輸入盤CDが300円で投げ売られていたので眺めていると、『憎しみ』に出てきそうな悪っぽいフレンチ・アフリカンがジャケット写真の、いかにもアネルカやトレゼゲが聴いてそうなラップっぽかったので買った。中身はフレンチ・レゲエだった。欲しい人にプレゼントしたい。Neg' Marronsという奴ら。
あいだ氏情報で知ったディキシー・チックスの新譜を試聴。毎年1枚アルバムを出す慣習のカントリー界で3年も何をやってきたんだと小一時間(略。スティービー・ニックスのカバー『landslide』は思ったより土臭かった。最近の売れ線カントリーはポップス・マーケット用アレンジも出すのだが、これもありそう。しかし、外盤とほぼ同時に日本盤も出ていたが、いい加減にカントリーはどんなにキャッチ・コピーを変えても売れないことに気付け、レコード業界。ボーカルの女の子が結構好きで、小柄ながらパワフルでいつも挑戦的な眼差しをしている。辻ちゃんにもあんな感じになってほしいのだが。その場限りのいい加減な言葉を吐くことで有名なつんく氏が言った「リズム感が良い」というのが本当なら、もう少し期待したい。