パロップのブログ

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BS1『ワールドドキュメンタリー』「EUの光と影〜第3回・揺れる農業政策」

2001/5/27放送、2000年、デンマークDR制作
まずはNHKのホームページより転載

第3回目のきょうはEU統合で苦境に陥っている農家の実態に迫る。EU統合で得られた政治的な安定や平和と引き替えに、域内の農家が次第に減少し、農業の形態が変わろうとしている。EUはこれまで、農産物の価格下落防止のために一定の金額で農産物を買い取る価格保証制度や、所得の低い農家に援助金を出す制度で農家を支援してきた。しかし、こうした経費が一時はEUの年間経費の半分を占めるまでに膨らみ、財政を圧迫していた。これまで農家に支払われてきた農業助成金が削減されたことで小規模農家は厳しい経営を迫られている。20世紀、数々の戦争や紛争を経たヨーロッパ諸国が恒久的な平和と安定を目指して作られたEU。そのメリットを教授しきれない競争の弱い農家が経済的に苦しめられ、離農を余儀なくされている実態を伝える。

番組の前半はEU加盟を控えるポーランドの農業状況をレポートし、後半はスペインやポルトガルの現在補助金を得て生計を立てている農家をレポートする。その中で重要なことはEU拡大の基本的な理念は「二度と欧州で国家間の対立から戦争を起こさない」ということで、正直農業なんてどうでもいい些細なことだと大国の首脳が思っている事と、補助金制度が出来たのは、1950年代に食料不足を補うためとにかく生産を奨励するためで、その後過剰生産になっても補助金を出し続けているのは明らかにおかしい事である。ポーランドにおける1989年以後の資本主義化に目を着け、大金・最新機械とともに乗り込んできたスウェーデンデンマークの農業実業家と貧乏ポーランド人農民の比較が面白い。1992年に生産量の割り当てと休耕田の制度が導入され、1999年には補助金の上限が設けられた。EUが拡大すると減っている補助金を新加盟国とイベリア半島の貧乏国が奪い合う。会計委員会のボスは「生産性の向上でなんとかしろ」という。「EUはポーランド農民に何の責任もありません」ともいう。しかし「先進国と比べて日本は…」というよくある議論とは裏腹にヨーロッパでも今後食料自給率は落ちるのだろう。100%あればいいのかもしれないが、やたらと生産性とか利益とかにこだわって金をケチると結局異常気象なんかの時に泣きをみるのだろうが。ドイツ・ポーランド国境がスイスイになった代わりに、ポーランドベラルーシ国境は物々しくなった(警備員はポーランド人だが、設備はEUの投資)。番組の最後はデンマーク人農民の言葉「小規模農家は半分潰れる」で終わる。「ポーランドの田舎では失業率40%を超えるだろう」ともいう。やはりこのシリーズはデンマークのアンチEUキャンペーンなんだろうか。