パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

サカヲタのプラハ旅行記:若い選手の登竜門になっている2部リーグなんて存在するの?

スパルタ・プラハボヘミアンズ・プラハ、2012/4/28、10時15分開始、50コルナ、観客数408人
〜以下自分語りなので本題まで飛ばし読み推奨〜
チェコの2部リーグでも観に行こうか」、そう思い立ったあなたがもし旅慣れたサッカーライターなら、スマホでクラブに電話して試合会場を聞き出し、空港でタクシーの運転手に地名を告げるかスマホの地図を見せ、さくっと会場に到着し、時間を無駄にすることもないだろう。もしあなたがガラケーしか持っていない情弱で、ホテルのフロントにもチェコ語で「こんにちは」「ありがとう」しか言えないコミュ障なら…、日本でしっかり下調べしてから出掛けよう。
スパルタ公式サイトでBチームの試合予定を見つけ、Xaverovという会場名を発見、地図をググると、おー、少し郊外だがプラハ市内じゃん、地図をプリントアウトして準備OK。
地図上で見るといざとなったら歩いていけそうな距離に見えるけど、それがなかなかどうして歩道のない3車線基幹道路だったりすると…
と思ったが、プラハに来てから地図周辺までどうやって行けばいいか分からない事に気付いた。しまった。仕方ないので、本屋で普通のプラハ観光マップではなく、巻末の総索引でどんなに細かい通りの名前でも検索できる地図を日本円350円位で買う(ホテルの共有スペースに置いてあるPCかネットカフェで調べれば早いけど、そこはコミュ障だから)。
帰国してからも索引で妄想旅行出来るよ!
なるほど、地下鉄B線の終点チェルニーモストから更に郊外バスか。なかなか僻地だが、地下鉄の終点とか普段の観光だとなかなか行かないし、ちょっとした小旅行を楽しもう。距離的には1時間位かかりそうだが、迷ったり接続に失敗したりを考えて2時間をみておこう。試合開始が朝の9時15分だからホテルを7時過ぎに出るか。何で今のホテルは朝食バイキングの開始が8時なんだ。遅過ぎじゃね? 1食損するけど仕方ない。
当日朝、ホテルを出てトラム停で待っていたら、ガラガラの道路で出前ピザのCM撮影やってた。バイクで通りの角を曲がるシーンを撮ってた。トラムから地下鉄C線に、フロレンス駅でB線へ乗り換え、その前に地上へ出て朝食と新聞を買う。フロレンス駅にはバスターミナルが隣接してて、一日中チェコ各地から集まってきたおのぼりさんがたむろしてて、異邦人には居心地がよい。ターミナルに併設されているコンビニも欧州によくある“雑貨屋”ではなく日本的な意味でのコンビニなので、少し並ぶが客さばきも西側風でコミュ障には居心地がよい。ちなみにフロレンス駅から徒歩30秒のところにあるマクドナルドも貧乏おのぼりさんに占拠されてて居心地がよい。フロレンス駅マジお勧め。
終点チェルニーモスト駅で降り、郊外へ向かうバスターミナルへ。詳しい地図には222、261の2線載っているが、廃線とかあるので油断できない。実際ターミナルをウロウロした結果、予想通りどうやらXaverovという地名に向かうのは261の1本しかない。だが1時間に2本のそれがすぐに来る。接続には成功。おまけに乗ったバスには先頭に路線を示したモニターが付いている。次、次の次、次の次の次辺りまでの停留所名が表示される。なんという最新式。3停留所ほど行ったリボショビツカの外にビクトリア・ジシュコフBと書かれた看板を発見。「おー、この辺にはスパルタBの他にジシュコフBのグラウンドもあるのか。時間に余裕があったら、ここも寄ってみようか」なんて浮かれていると、バスはどんどん郊外を進む。心は焦りつつ、Xaverovという停留所の次で降りる。はい、田園地帯の中です。間違えてました。

Xaverovという地名とXaverovというグラウンドは離れてます。先ほどのジシュコフBの看板ある所がXaverovというグラウンドでした。反対車線に渡り、停留所でバスを待つ。おっ、折り返しも程なく来る。試合には間に合うそうだ。

よしよし。というわけでリボショビツカで降りる。試合開始1時間ほど前だが、試合の始まる気配すらない。いや、スパルタのレプユニ着て設営スタッフとだべっているのが10人位いるので、ここで試合があるのは確か。結論からいえば、開始は10時15分になっていた。開場は9時30分頃。これといった合図もなく、ゾロゾロ三々五々客が入って行き始めたので、開場と分かった。入場料金はオール50コルナ。もぎりのおばちゃんは「あんた、英語は話せる?」みたいに話しかけてきて陽気な空気を醸し出していた。普通のトレーニング用ピッチにメインスタンド付けて、入場口側のゴール裏にアウェイサポを隔離できる感じ。例によって座席番号は無視。というか、昨日レトナで見たトップチームの試合のチケットを流用しているので、そもそもこの会場にはない番号が印字してある。はい、好きな所に座りましょう。

〜ここからが本題〜
既にスパルタBがアップを開始、スタメン組は遠くで走っている。目の前ではGKを除くサブ5人組が楽しそうに蹴鞠をやっている。みんな金髪でハンサムな感じ。優男系ではなく、ミハル・カトレツとかクリロナみたいなムキムキ系。女性人気出そうな顔で選んでいるんじゃないか。ネットで試合会場を調べている時、Bチーム名鑑にベトナム人選手とベトナムチェコ人選手がいたのでちょっと見てみたかった。パパが華僑系富豪で息子をねじ込んだ的なあれかもしれないという想像。スパルタのオフィシャルショップで見た選手個人のTシャツ(レプユニではなく選手の絵が描かれている)はマテジョとジェプカとカメルーン人クウェウケだったので、人種差別があからさまという国でもないだろうが、ベトナム人はチームメイトとして馴染めなさそうな雰囲気。

背番号は固定ではなく当日の選手で1〜16番まで埋める感じだったので、誰が誰だか名鑑を見ても分からなかった。翌日の新聞で確認すると、クレイチと同級生軍団のうちトップで出られない奴ら多数出場していた。カドジャーベク、フリデク、ヤーノシュ、クルチ、ポロム。前半はボヘミアンズのおっさんどものフィジカルゴリ押しにアップアップで先制されるけど、テクニックでは優るエリート若手勢らしく当たりに慣れてパスが回り始めるとずっと主導権を持って、3点取って逆転勝ち。この時のスパルタBは2部リーグ最下位で、結局降格するんだけど、地域リーグ(実質3部)に落ちたら若手育成にも支障が出るだろうし、どうするんだろうねえ。事実、2012-13シーズンはサブクラス数人をスロバキアのクラブにレンタルで送っている。この試合のGK、腕と足が長くていかにもチェコ人GKで、トップチームの小柄な奴よりオーラ出してて、「下部には良いGKいるじゃん」と思ったら、トップでも活躍した経験のあるミラン・シュベンゲルだった。そんな代表クラスの実力者をBチームにぶっこめるなら、もっと以前からやって降格防げば良かったのに…と思わなくもない。
翌日の新聞。若者達は頑張っていた。
ボヘミアンズの選手は見た目おっさんばかり。試合巧者で若造にガツンと一発やったる作法は心得ているが、技術は無い。スタミナも微妙。そんなおっさんだって2部に残留したいし、残留出来たら来シーズンもクラブから首を切られたくないし、必死なのは当たり前。“若い選手を育成し、売ってクラブの財政を維持しているクラブが多数の2部リーグ”なんて加部未蘭選手のお父様の頭の中だけにしかないんじゃないの? フットボールが国民的スポーツの旧東欧でも実際はこんな感じじゃないの? ボヘミアンズの監督さんは、戦略がどうとかよりもモチベーションを上げる技術が高い社会主義時代の体育教師的気質を受け継いでいる感じのお爺さんだった。
前日のスポーツ紙、半面使って2部中堅クラブの監督特集。サッカーが文化として根付いてなんちゃら…
ボヘミアンズのサポーターはアウェイとはいえ同じプラハ市内なのに20人程。元々ボヘミアンズ・プラハプラハ市街地(10区)にある老舗クラブだったけど、21世紀に入って不正だか借金だかで一度潰れ、「ボヘミアンズ」という名称の後継使用権をプラハ郊外の地域リーグレベルのクラブオーナーが買い取り、「よっしゃ、ボヘミアンズと名乗ればサポーターも引き連れてくれるぜ」と思ったら旧クラブのサポだか経営陣がボヘミアンズ1905と名乗って新クラブを立ち上げ、全然お客が流れなかった…という経緯だったはず、あまり詳しくはないが。会場では1人だけボロボロのフラッグ持って朝の8時半から駆け付けていた60歳位に見える歴戦の勇者サポがいた。恐らく新旧ボヘミアンズが並び立った時、サポ仲間から「おいおい、本物のボヘミアンズはこっち(1905)だろ。今まで通り一緒に応援しようぜ」とか言われながら、「今まで電車で1時間以上掛けてスタジアムまで通っていたけど、ついに夢にまでみたボヘミアンズが俺の家の近所に来たんだ。こっちを本物だと思って応援する事にしたんだ。みんな、じゃあな」みたいなドラマがあったと勝手に想像した。そんなこんなでボヘミアンズサポにはアイデンティティ確立の苦労がある。というか歴史がないので、サポも自由度が高いというか、この日はアウェイサポ席にブラス隊が5人程いて、高校野球の応援みたいなノリだった。思わず「かっとばせー」と言いそうになった。私の隣席はスパルタユースどもの知り合いなのか試合前後にスタンド最前まで行ってユースどもと会話を交わしていたが、その20歳位の青年はブラバンが吹く度に「おいおい、止めてくれよ、これはサッカーだぜ」みたいな苦り切った侮蔑混じりの半笑いをしていた。流石にチェコでもあれは異端だろう。まあ歴史無き故の遊び心もありなのかもしれないが、試合終盤1-2から味方がPKをとられるファールを犯すと、すかさず『葬送行進曲』を吹き出したのは、おふざけが過ぎるというかネタに走り過ぎだと思った。
画面右に見えるのがブラスバンド
客入場口の前に立っていたビラ掲示板に「子供サッカー教室」の案内が貼ってあった。「GKを目指す少年よ、来たれ、スラビアの伝説的GKマルティン・バニアクが教えにくるよ」みたいなやつ。バニアクレベルで伝説かよと思いつつ、川口&楢崎がいたため出場歴は少ないけど、ベルマーレの小島とかクラブレベルでは充分レジェンドだろう。Xaverov、地図の表記だとSK XaverovもジシュコフBやスパルタBへの貸しピッチ屋を止め、小中学生レベルを教えつつ、才能ある選手を提携先のスラビアへ供給する地域クラブになる予定なのかもしれない。
(追記)スパルタ・プラハ公式サイトをみると、ボヘミアンズ・プラハのことを旧名のFC Střížkovで表記している。実際はどういうつもりか分からないが、「お金でボヘミアンズを買ったけど、本当はお前Střížkovだよね」と小馬鹿にしているみたいで、プラハ同士の当てこすりなら微笑ましい。