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パロップのブログ

主にTVドキュメンタリーを記録します

BS-hi「証言記録 兵士たちの戦争」第4シーズン

ドキュメンタリー

公式サイトの証言アーカイブス(http://www.nhk.or.jp/shogenarchives/)の充実振りがものすごいことになっている。放送した番組全てどころか、収録された証言の未放送分も視聴出来るようになっている。そのうえ、戦時中のニュース映画も見ることが出来る。マニア大喜び。私が「WGBH(アメリカの公共放送)を見習え」と言ってきたことのほとんどが実現していて、これなら文句のつけようがない。本気を出したときのNHKはやはり別格。その割にスタッフクレジットは相変わらず書いてないので、ここへ寸評とともに記録しておこう。

ガダルカナル島 最後の部隊 繰り返された失敗 〜名古屋・歩兵第228連隊」
2009/10/23再放送(9/26初回放送)、45分、制作協力:一ノ瀬俊也、撮影:田嶋文雄、ディレクター:猪瀬美樹、制作統括:黒川敬、制作・著作:NHK名古屋
放送前の仮題は「ガダルカナル 伝わらなかった撤退命令〜名古屋歩兵第228連隊」。
変なものを食った話はみな楽しそうに思い出して語る。
逆に証言者が話しながら感情を高ぶらせたのは、上官から部隊を離れて後方へ隊の最後を伝えるように告げられたシーン、餓死した戦友の家族に「立派な最期だった」と嘘を付いたシーン。

「“ベニヤボート”の特攻兵器〜震洋特別攻撃隊
2009/10/31初回放送、45分、制作協力:戸高一成/林えいだい/秋吉美也子/霜鳥耕司、撮影:北川原茂、ディレクター:梅内庸平、制作統括:青木伸之、制作・著作:NHK長崎
放送前の仮題は「ベニヤで作った特攻艇〜震洋特別攻撃隊」。
知られざる秘史の発掘という点では今シーズン屈指か。
震洋は世界に一台しか現存していない(オーストラリアの博物館)。
学徒→予科練は当時のエリート。自分の体験を理路整然とまとめられる人が多かった。そして証言の端々に「飛行機乗りの厳しい訓練を受けた俺ほどのエリートがベニヤ板のボートに乗って自爆するなんて…」という自負を感じた。戦後は出世したのだろう。証言者は皆良い家に住んでいる。 証言者が全国に散らばっているから制作も本局かと思いきや、地方局だった。

「偽装病院船 捕虜となった精鋭部隊〜広島県・歩兵第11連隊」
2009/11/28初回放送、45分、制作協力:一ノ瀬俊也/御田重宝、撮影:天野修作、ディレクター:谷花菜子、取材:亀山暁、制作統括:行成博巳、制作・著作:NHK広島
放送前の仮題は「南太平洋 失敗した偽装病院船作戦〜広島県・歩兵第11連隊」。確かに「南太平洋」はアバウト過ぎるというかイメージを喚起しない単語だから削除して正解。
南方軍‐第2軍‐第5師団‐第11連隊という組織。1連隊に3700名。
連戦連勝からこの世の地獄に行き着くまでの展開が早い。というか、偽装病院船という特異な事件(兵士は巻き込まれただけで、当事者とは言い難い)と“兵士に証言させる”という番組のスタイルとの間に齟齬があり、長期スパンで見た第11連隊の物語が薄いので見る側にリズムが出にくい構成だった。
ウィキペディアの「橘丸事件」の項をみると、戦後の裁判記録は載っているけど、第5師団の師団長が自決したことは書いてない。

「飢餓の島 味方同士の戦場〜金沢 歩兵第107連隊」
2009/12/26初回放送、45分、制作協力:坂本俊文/一ノ瀬俊也、撮影:菊池太、ディレクター:三柴忠宏、制作統括:崎谷潤、制作・著作:NHK金沢
放送前の仮題は「マーシャル諸島ミレー環礁 見捨てられた前線部隊〜金沢 歩兵第107連隊」。確かにこれは長い。
歩兵第107連隊第3大隊:およそ1000人。
陸軍が物資豊な海軍の食糧を奪いにいって交戦するといった悲惨な話を筆頭に、物語に抑揚なくひたすら悲惨な証言の連なりという構成も、証言記録シリーズとしてはありだろう。
戦友の家族に「餓死した」とは告げられず「米軍の銃弾に〜」と説明するのは、戦友が犬死だったと思わせたくないのと同時に、「あんただけ生きて帰って。私の父ちゃんの食いもん取ったでしょ」と責められたくないからもあったらしい。悲し過ぎる。

ポートモレスビー作戦「絶対ニ成功ノ希望ナシ」陸軍 南海支隊」
2010/1/30初回放送、45分、撮影:後藤一平、取材:内山直樹、ディレクター:小柳ちひろ、制作統括:伊藤純/松居径/矢島良彰、共同制作:NHKエンタープライズ、制作・著作:NHK/テムジン
第55師団の下に歩兵第144連隊を基幹とした南海支隊(高知を中心)約9000人。
米豪軍のポートモレスビーと日本軍のブナの間に2000m級のスタンレー山脈があるのに、お互いに補給線を延ばして悲惨な陣地取り。

「フィリピン・エンガノ岬沖 囮とされた空母 瑞鶴
2010/2/27初回放送、45分、取材協力:戸高一成/一ノ瀬俊也、撮影:宮川公一郎、取材:仙洞田真也、ディレクター:佐々木伸之、制作統括:藤田英世/高瀬雅之/田嶋敦、制作:NHKエデュケーショナル、制作・著作:NHK/東京ビデオセンター
放送前の仮題は「フィリピン・エンガノ岬沖 オトリとなった空母 瑞鶴」。1月30日放送予定だったが、何故か一か月ずれる。

朝鮮人皇軍兵士 遥かなる祖国」
2010/3/27初回放送、45分、撮影:中野大輔/太田信明、ディレクター:渡辺考、制作統括:増田秀樹、制作・著作:NHK
放送前の仮題も「朝鮮人皇軍兵士 遥かなる祖国」。「関東軍」をタイトルに入れた方が良かった。
「福岡県の筑豊でセメント工場の労働者の家に育った」という証言者が出てきたので、撮影班はNHK福岡組だと予測、見事に当たった。

「王道楽土を信じた少年たち〜満蒙開拓青少年義勇軍
2010/4/24初回放送、45分、撮影:福居正治、取材:高倉天地、ディレクター:米本直樹、制作統括:伊藤純/松居径/矢島良彰、共同制作:NHKエンタープライズ、制作・著作:テムジン
仮題も同じく。
長野県第七次斉藤中隊、217名中121名死亡。

「昭和二十年八月十五日 玉音放送を阻止せよ〜陸軍・近衞師団」
2010/5/29初回放送、45分、撮影:岩永裕二、ディレクター:舟迫将信、制作統括:伊藤純、制作・著作:NHK
近衛第一師団・歩兵第二連隊
2008年8月10日にBS-TBSで放送された「8.15玉音放送を死守せよ〜異なる目的のために 命をかけた2人」と内容が被っているような気がするので、TBS版も見てみたい。

「生き延びてはならなかった最前線部隊〜ニューブリテン島 ズンゲン支隊」
2010/6/26初回放送、45分、撮影:栗田光之、ディレクター:村上裕康、制作統括:増子善久、制作・著作:NHK岐阜
放送前の仮題は「玉砕を生き残った兵士たち〜ニューブリテン島・ズンゲン支隊」。確かに本タイトルの方がイメージを喚起する力を持っている。
ズンゲン支隊は残存兵力の寄せ集め部隊だった。

ルソン島 悲劇のゲリラ討伐作戦〜秋田・歩兵第17連隊」
2010/7/31初回放送、45分、撮影:原田人/伊藤直人、ディレクター:久木元太、制作統括:定道正代、制作・著作:NHK秋田
放送前の仮題は「ルソン決戦 敵は米軍のみにあらず〜秋田・歩兵第17連隊」
「それは絶対に言わねえことがある。あなたになんぼ上手に質問されてもそれは言わねえ。あした死ぬんだけども、そういうことは書いてもおかないし、しゃべらねえでな。なんぼ突っ込んで聞かれても分からないて言う。分からないものは聞かれんべ? 分からなければ」―こういう証言の残ら無さ、うまくいかなかった制作の限界部分も敢えて放送に載せたのは偉い。

『Nスペ』「引き裂かれた歳月〜証言記録 シベリア抑留」
2010/8/8初回放送、50分、撮影:竹内秀一/岩永裕二、ディレクター:小柳ちひろ/栗田和久、プロデューサー:矢島良彰、制作統括:伊藤純/藤田英世、制作協力:テムジン、制作・著作:NHK
中国による「認罪」とセットで考えると興味深い。民主化した者から帰国させる。

ハイビジョン特集』「満蒙開拓青少年義勇軍〜少年と教師 それぞれの戦争」
2010/8/11初回放送、90分、撮影:福居正治/張世君、取材:高倉天地、ディレクター:米本直樹、制作統括:伊藤純/鳥谷部寛巳/矢島良彰、共同制作:NHKエンタープライズ、制作・著作:テムジン
送り出した教師に焦点。地上波ではカットされた赤化教師弾圧事件が伏線にあったというエピソードは面白かった。
義勇軍だった人の「自分が決めたことだ。人のせいじゃないんだ、自分が決めたんだから。そうでしょ? あんた(取材者)、人のせいに決めつけてしまいたいだろうけど、そうじゃないんだ。その当時は俺が『あそこへ行こうか』ただ、思っただけ。それを洗脳っていえば洗脳だしさ」という証言をカットしなかったのはフェアだ。